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#9 りりちゃんの電話

昨日、2年ぶりくらいの友だちから突然LINEが来た。

その友だちは元々仕事の同僚だった子で、
以前noteでも少し登場した『リリー』である。

仕事では割りと勘が鋭くて頼もしい子なのだけど、時々メンタルが弱くなる時があったりして、年下らしいというか、妹みたいな顔を見せる時もあった。

アーティスティックな一面もあって、ビジュアルデザインや空間演出などもフリーでやっていて、今日のカバー写真とこの後出てくる写真も、リリーの作品である。

そんな彼女とは、今は頻繁に会ったりはしていないけど、
SNSでお互い様子を見ているのもあって、今でもつながっている。

彼女は時々ひょいっとLINEを送ってくる時があった。

何を送ってくるでもないけど、ただ一言

『どんちゃん』

と私の名前を送ってくる時もあった。

そんなリリーから、今回はこんなメッセージが送られてきた。

「最近街でどんちゃん(私)に似た背格好の人を見つけて
 追いかけてみるけど、みんなどんちゃんじゃない。」

「どんちゃんは秋服のイメージだったから、
 寒い季節ほどどんちゃんを思い出すよ。」

ああ、りりちゃん。

私と似た背格好の人なんて、世の中ごまんといるよ。

メッセージを見てそんなことを思ったりもしたけど、
そのあとに溢れてきたのは『私を思い出してくれてありがとう』という気持ちだった。

人に覚えていてもらえるって、こんなにうれしいことだったんだな。

今の今まで、あの頃のことが遠い遠い昔のことのようだったのに、
りりちゃんと話してたら、私のそばにぐんと近づいてきて、ほわっと温かくなった。

少しの間メッセージのやり取りをしていたら、
「よかったら10分だけ電話しよ」と言ってきた。

私はもちろん電話を取った。

久しぶりに聴いたリリーの声は、とても寒そうだった。
仕事終わりの帰り道に電話してきたみたいで、寒い寒いと言いながら、コンビニのおにぎりを食べながら電話をしていた。

お互い「最後に話したのはいつだっけ?」と思い出し合いながら、
いろんなことを話した。
またちゃんと思い出せるように、今日はリリーとの電話の思い出を書き残そうと思う。

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りりちゃんの電話

最後に話したのは2年前、その時もりりちゃんから連絡が来たのだ。

その時、私はおそらく前々職(リリーと同じだった職場)を退職して、休職期間中だったと思う。

りりちゃんは、私よりも早く職場を去り、その後はデザイン事務所に転職していて、電話が来た時もその事務所で働いていた。

その時リリーは、泣きながら電話をしてきた。

「こんなにこんなに頑張ったのに、誰も認めてくれない。」

当時りりちゃんは泣きじゃくりながら、そう言った。

私は何度かそこの事務所のお手伝いをさせてもらったことがあるので、
事務所やスタッフの雰囲気を知っていたのもあって、りりちゃんの置かれている状況が手に取るようにわかった。

うんうん、りりちゃんよく頑張ってるよ、お疲れ様。

大丈夫だよ、何か温かいものでも飲んでね。
休みながら、そいつらと戦っていこう。

人並の励ましと話を聴くことしかできなかったけど、
その時私は、なんだか恩返しができたような気持だった。



実は前にも、こんな出来事があったのだ。

でも、その時泣いていたのは、りりちゃんではなく私だった。


同じ職場をリリーが先に去り、リリー以外にもいたチームメンバーも最初は5人いたのに、みんないろんな理由で辞めてしまい、残されたのは私と、入れ替わりで入ってきた新人の後輩1人だけだった。

私たちがしていた仕事は、毎日5件、毎月100件のアポイントを取らなければならないテレアポの派遣仕事だった。

想像に容易いと思うが、とにかく精神的にかなりしんどい仕事だった。

リリーという支えがいなくなってしまった後は、とにかく仕事がつらかった。

ある日、私はストレスで胃痛と頭痛の中業務をしていた。

その日は1件もアポが取れなくて、仕事の時間も残り1時間に迫っていた時だった。

息が苦しい。 涙が出そう。 これはまずい。

私はスマホとハンカチを持って、急いでトイレに駆け込んだ。
止まらない涙を必死で止めようとして、息がどんどん苦しくなった。

その時、LINEが来た。

りりちゃんだった。

「どんちゃん」

その時も、特に用事があったわけでもなく、ただ名前を送ってきただけだった。

そのすごすぎるタイミングに、止めかけてた涙がまたあふれてしまった。

私はリリーに今の状況を説明し、仕事が終わったら電話をしたいと伝えた。


何とか仕事を終え、帰り道を歩いていた時、
りりちゃんから着信がきた。

私は歩きながらわんわん泣いて、りりちゃんにいろんなことをぶちまけた。

その時のりりちゃんも「うんうん」とひたすら話を聴いてくれた。

「どんちゃんは頑張りすぎちゃうんだよね、
 その頑張りに周りの人は甘えるんだよ。その人は当たり前にできると
 思い込んでさ。時々は頑張れないところ見せないとだよ。」

その時の私が欲しかった言葉を、リリーはたくさんくれた。

家族や友だちに話すと、実際の仕事の雰囲気とかを思うように伝えられなかったけれど、リリーは何もかも知ってる唯一の人だったから、私はその時びっくりするほど心地よく話せた。

こうやって考えてみると、私たちはお互いの弱いところを見せあってここまで来たんだ。

りりちゃんは一人っ子だったから、両親とケンカしたときも私の膝で(しかも会社で)泣いたことがあった。

その時は、末っ子として育った私もなんだかお姉さん気分で、人としても強いつもりでいた。

でも、りりちゃんと出会ってから、自分ってこんなに弱かったんだなぁってちゃんと認められるようになった気がする。

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なんだかんだしゃべっていたら、10分どころか1時間半近く電話をしていた。

「でもまだまだしゃべり足りないね、会いたいね、会おうよ」と最後に話しながら、電話を切った。

こうやって時間が経っても、その時間がまるでなかったみたいになんでも話せる人って、大人になってからそうそう出会えるものではない。


きっとりりちゃんが寒い季節に私を思い出すように、私もこの先ずっと、お花屋さんで花を見るたび、りりちゃんのことを思い出し続けると思う。

こちらのnoteにも、りりちゃんとの思い出を書き残しているので
併せて読んでみてくださいね:)




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