9月入学導入の是非
ここ数日、学校の9月入学化がかなり話題になり始めた。
私の周りも私自身もわりと楽観的で、まあええんちゃう?という受け止めが多い。
だが、テレビニュースである私立学校の校長の言葉を聞いて、自らの考えが浅いことを突き付けられた。
学校側で対応できる行事等については、我々でなんとかします。
ただ、学校側だけでは調整できない部活動の大会や各種行事は、今から会場を押さえる等の急な調整はできるのか。さらにずれた5か月分の学費は誰が負担するのか。
その辺りを民間に丸投げするような形で導入するなら反対です。
影響をきちんと考慮し、子どもたちに負担や支障がないような形にできるのであれば、賛成です。
私は基本的に、柔軟性を持ってフットワーク軽く、9月入学を選択肢として検討していく点には賛成だ。
ただ今回、過去に一斉にうるう秒を入れる時に、「たかが1秒」という素人の感覚と「どれだけ大変なことか」というシステム屋の感覚のズレがあったように、私たち素人には見えていない大きなリスクが潜んでいる気がする。
① 既に指摘されているように、小学校入学前の保育園、大学卒業後の就職活動、各種部活動の大会等、社会の広範囲に影響が及ぶ。
本当に一体となって変更できるのか、子どもたちにしわ寄せがどれくらいいくのか、現場は耐えられるのか。
(休校要請が出た際、現場で教師として働いていた友人が、とにかく今はニュースを見て是非を唱える余裕すらなく大変だ、とSNS投稿していたことが頭をよぎる。)
② 9月にこの感染症騒ぎが収まっている保証はない。国民の大半が感染して抗体を持っていることはないだろうし、ワクチン接種が始まっている可能性も高くない。
仮にオーバーシュートが回避できても、小さな感染の山が繰り返しくるという予測もある。
内田良氏が指摘していたが、オンライン授業がまんべんなく行える体制作りは想定しておく必要がある。
③ 新型コロナウイルスの対応だけでもてんやわんやな中、文部科学省、教育現場、その他ステークホルダーが準備を行う体力があるのか。準備期間は十分か。
④ 5月~8月の期間、子どもたちの面倒を看る親への影響も大きい。引き続き仕事を休まざるを得ない人もいるだろう。
生活が厳しい家庭では、月々4,000~5,000円で食べられる給食がないことは、家計に大きなダメージを与える。
⑤ 来年2021年は、7月下旬にオリンピック、8月下旬にパラリンピックが予定されている。そのため、9月入学を導入した場合は、入試や就活の時期の調整が必要となる可能性がある。
今思い浮かぶだけでも、たくさんの懸念事項がある。
もちろん、休校の影響による教育格差の是正や、外国との間での留学や学生リクルーティングが活発化するといったメリットもたくさんある。
何が重要かを見極め、懸念事項は1つずつつぶしていくしかない。
その際、1つだけ忘れてはいけないことがある。
「子どもたちにとって何がベストか」を常に考え続けること。ないがしろにしないこと。
だ。
新型コロナウイルスによって、今、社会は大混乱のさなかにある。
乗り切るには、みんながちょっとずつ我慢していくことも必要になる。
ただこの話は、下手をするとノリと大人の都合だけで進められてしまうような気がする。
日本は、子どもの人権を最大限尊重できている国かというと、NOだ。
これは色々な人が指摘しているし、私自身の肌感でも「日本は子どもを必要以上に子ども扱いしすぎていて、権利の侵害や成長の阻害が起きている」と感じる。
特に今のような非常事態では、弱者にしわ寄せがいくことが問題視されている。
子どものためと言いながら子どもに必要以上の負担を強いるような、卑怯な大人にはなってはならない。
もちろん、国の施策としてはバランスが大切なのは言うまでもないが、いつの間にか子どもたちが犠牲者になっていないか、私たち1人1人は目を光らせていく必要があるだろう。
'20/05/01 最終更新
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