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VR即興演劇『カミのみぞ知る Vol.2』 cluster R6.04.28 20時

ネタバレ注意





VR空間上での演劇。メタバースプラットフォーム「cluster」においての公演であり、以前に書いたVRcとは異なる。スマホなどでも利用ができ、アクセスがし易い。

即興演劇、とはあるのだけど中々に驚くようなこだわり、そして体験におけるリッチさがある。特に劇場に関しては宇宙船をモチーフにしたであろう、既に待機場所のロビーから豪華なSF映画セットのような、宇宙船内部の様子が描かれる。ステージ・ホールそのものも、広い空間に存分にこの「世界」を体験させるための力を強く感じられ、劇場そのものが芝居の構成にあって非常に重要な位置を占めている。

上記の様から、期待が導入部分より高まるのと同時に、これから始まるのが本当に即興演劇なのかと若干の困惑と驚きを持ちつつ劇を観ていくのだが、この導入部分の芝居によって劇空間・劇世界へと観劇者を丁寧にゆっくりと誘う。いわば観劇客へのウォームアップとでも言おうか。壊れゆく宇宙船内部、そして深刻な状況を作り出していき、劇本編へと繋がっていく。この時点で緊張感があり、ヘビーな感じの話が始まるのではないかと固唾を飲みながら観るのだが・・・。

導入部分と劇序盤は確かにそのような空気はある。だが、登場人物のページの音がめくられるとモニターに映し出される文字、何が一体書かれてるのかと思うと・・・

「次、いってみよー!(いかりや長介)」。

目が覚める。ここで、初めて。これが即興演劇であることを強く思い起こされる。いや、最初から即興劇と書いてある。しばし呆然と。

ただ、それだけに導入や序盤での演技や劇場の世界観への誘いへの力が強かったという事に他ならない。急に思考がストップする中で映し出される(いかりや長介)の文字に思考が引っ張られるのだが、落ち着いて状況を観ていると、この映し出された文をセリフとして使用するのが見えてきた。なるほど、事前告知にてセリフ募集をしていたのは見かけたが、このようなシチュエーションでの利用は斬新というのか、状況によってはアンバランスさが目立つような気も「した」。

というのも、こちらには即興でお芝居するお役者二人と共に即興で劇伴を奏でる。この劇伴の効果が大変大きく、状況を作り出すのに劇伴がいかに心に働きかけるかを自覚的に認識できる経験。音の力って不思議だよなぁとつくづくと。

出てくるセリフは確かに状況によっては「おふざけ」に見えるのだけど。それでも、音楽の力、そしてお役者二人の演技の調和で、冷静になってストーリーがちょっと無理があるんじゃないのかと思ってしまう場合でも、劇世界に再び引っ張られて見入ってしまう。、展開が角度鋭く急に変わることがあるのだけれど、雰囲気を大きく崩すこともなく。説得力を持たせるのかという演技・劇伴、そして劇場の作り出す雰囲気の調和は実に見事。

ただ、ストーリー関連は即興と選ばれるメッセージによって変わるため、お話にフォーカスして観るとちょっと肩透かしを食らうかもしれない。どちらかといったら、ストーリーよりも、演劇における説得力、「魔法」を楽しむものかなと思う。それが凄く浮き上がる舞台だった。面白かったのですよ。


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