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佐々木朗希旋風から忘れ去られているマリーンズファンの祈り

2022年4月10日、28年ぶりとなるプロ野球完全試合を史上最年少での達成から始まり、綺麗に中6日で4月17日には2試合連続での完全試合未遂、そして翌週24日には白井球審との印象的なやり取りと、ニュースやワイドショーにはこと書かないマリンーンズの若き背番号17だが、マリーンズファンである僕のような人間の気持ちは少し複雑だ。

佐々木朗希投手の完全試合達成はスーパー嬉しい。

そして、普段からスポーツニュースで真っ先に飛ばされてしまう超冷遇ロッテ戦の枠が広がったり、佐々木朗希特集が組まれたりするのもとても嬉しい。

しかしそのどれもが、マリーンズファンの最大の祈りである「今年こそは」という想いが無かったことにされているように感じて、それが悲しいのかもしれない。



この先はプロ野球を普段あまり見ない方にも向けて、少し丁寧めに書いてみる。


千葉ロッテマリーンズと聞いて、常勝、強豪、優勝をイメージするという人はほとんどいないと思う。

逆に、優勝しているシーンがパッと頭に思い浮かぶのはやはり読売ジャイアンツ、巨人軍であろうか。長嶋茂雄監督や原辰徳監督が胴上げされる映像というのはTVでも何度でも何十年でも擦り倒されている。


直近の2021年、バファローズとヤクルトスワローズの優勝はチラリとニュースで見た覚えがあるだろうか?

阪神が優勝した年はとても盛り上がる。
道頓堀に人が飛び込むぐらいだ。

あ、ダイエーがセールしてたな、西武百貨店がセールしてたな、という記憶があればそれはホークスやライオンズが優勝した年である。

現BIG BOSSこと新庄剛志が北海道に誕生した新生日本ハムファイターズを優勝に導いたり、カープ女子という言葉が流行り広島カープが強豪球団の仲間入りをした年もあった。

長年低迷していた横浜ベイスターズの優勝は少し遡る。
あの頃、中日ドラゴンズは本当に強かった。落合博満監督のオレ流で4度もリーグチャンピオンに輝いた。

阪神淡路大震災の後に「がんばろう神戸」のスローガンと共にイチロー要するオリックスブルーウェーブが、東日本大震災の後に楽天イーグルスが東北の地に優勝ペナントを持ち帰ったことを覚えている人は多いかもしれない。


さて、千葉ロッテマリーンズが優勝した姿を見たことはありますか?
実は、長年マリーンズファンの僕でさえ見たことは無い。

「あれ?なんか胴上げされてなかったっけ?」という人もいるかもしれないが、これは色々と説明が必要で、優勝の定義が特例だった年なんかもあったり、日本一という別の形の優勝的なやつがあったり、複雑なのでここでは省くが、乱暴に言ってしまえば最後にリーグ優勝した1970年から52年、現存する12球団で最も優勝から遠ざかっている球団、と思って頂ければ、そんなに間違いではない。

僕がマリーンズファンになったのは球団の本拠地が千葉に移転(1992年)して以降なので、もう全然、全然優勝経験がない。



推しのチームが優勝するって、どんな景色なんだろう。


スポーツニュースで飛ばされない、井口監督の胴上げの姿。
幕張の海には人が飛び込み、ロッテ製菓はチョコパイ一箱110円の特大セール、久我山シーサー我らがBOSS井口監督の胴上げからマリン女子の流行、まだ痛々しくブルーシートが残る南房総の地には誇り高き優勝ペナントがもたらされる。

そんな妄想を膨らませながら、毎年毎年、この愛しくもか弱きチームを応援し続けているのだ。



さて、か弱き、と書いてしまったが、佐々木朗希からプロ野球を知った人たちにも、ここ数年のマリーンズファンの中にある文脈をお伝えしたい。

ペナントレースの優勝は、全試合を終えた時点での勝率の高さによって決定されるのだが、近年のマリーンズは

(wikipediaより抜粋)
左から順位、勝ち数、負け数、引き分け数、勝率


意外に思うかもしれないがご覧のように、実は井口監督就任以降、勝率は右肩上がりになっている。

大型の補強が可能な常勝チームとは違い、長年優勝から遠ざかっている弱小零細チームを優勝が狙える位置まで持ち上げるというのは、それこそ数年単位での地道な変革が必要となる。

阪神の優勝や、楽天優勝の陰に、前年まで監督を務めていた故・野村克也氏の数年に渡る尽力があったというのはプロ野球ファンの間では有名な話だが、種を蒔き、水を蒔き、それが花開くまでは何年も何年もかかるし、花が開かないこともある。

か弱きチームにとって、ペナント優勝というのはそれだけの大事業なのだ。

それが2020年は2位、2021年も終盤でオリックスとの熾烈な優勝争いに敗れまたもや2位、と、すぐそこまで見えていた52年ぶりの優勝を逃したとなれば、その悔しさが少しは伝わるだろうか。


さてここで、マリーンズファンとしてだけでは無く、一歩引いていちプロ野球ファンでもある僕目線お話もしたい。

マリーンズのように弱いチームが力をつけてくると、ペナントレースは大いに盛り上がる。
セ・リーグでは似たようにDeNAベイスターズが低迷していたが、ラミレス監督就任以降、Aクラス入り(最終順位が上位3チームに入ること)が目立つようになり、接戦のペナントレースはより面白くなった。

そして昨年2021、オリックスと東京ヤクルトがそれぞれ両リーグで「前年最下位からの優勝」という離れ業をやってのけ、マリーンズファンの自分としては悔し涙を飲んだ一方で、プロ野球ファンとしての僕は大変に興奮し喜んだ。

ディス・イズ・プロフェッショナル・ベイスボール!と。


かなり長文になってきた。
ここまで読んでくれた方、本当にありがとう。
さて、これだけの文脈を携えたあなたなら、冒頭の佐々木朗希旋風の見え方もだいぶ変わってくると思う。

完全試合達成。
素直にとても嬉しい。なんせプロ野球界28年ぶりの偉業だ。
しかし、こちとら52年も優勝していない、ダブルスコアクラスの偉業を求めてしまっていて、それは完全試合以上に喉から手が出るほど求めていることで、佐々木投手自身も似たような想いがあるのではないだろうか。

そして2試合連続の完全試合未遂。
8回パーフェクトピッチングながらの交代に「賛否両論!」と煽るワイドショーなんかもあったが、自分的には結構納得で、実際に球場でのスタンドのファンの雰囲気もそんな感じだったと伝え聞く。
これは井口監督就任以降、徹底した投手の管理法でここまで成績をあげてきたのもあって、同じようにやっただけ、佐々木だけ特別とかは無い、と皆が感じたからではないだろうか。
2試合連続での完全試合よりも佐々木投手にとってはある意味もっと難しいだろう「年間25登板」を達成して欲しい、その先にチームの優勝も!と思えば、これはとてもいい判断だと思った。

最後に白井球審とのやり取り。
この試合も最初から最後まで見ていたが、正直、試合を見てる時はそこまで取り上げられるとは思わなかった。
そんなことよりも、前年から引き続きバファローズ×マリーンズは毎回痺れるような展開が多く大好きな対戦カードの一つで、この試合もギリギリのジャッジ、からのリクエスト(ビデオ判定)が連発した超絶面白いゲームだったのに、全然違うところが大きく取り上げられて、切り取られて、なんだか不憫だとさえ思ってしまった。ナイスゲームだったのに勿体無い。



長々と書いてしまったが、要するに「弱小球団だって毎年毎年懲りずに優勝を本気で信じている」ってことを、その祈りを無いことにしないで欲しい、ということをお伝えしたかった。

これを書いてる今(5/8現在)チームは絶不調だけど、弱い時でも応援する、信じる、祈る、それがファンってものでしょうよ!

「え?マリーンズファン?なんで?(笑)」

と聞かれることは最近でこそ少なくはなってきたが、たとえ優勝の可能性が限りなく低いチームだとしても、明日も明後日も、本気で優勝を願う。

それは僕の勝手でしょ。

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