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口コミの影響力

前回の記事で、特定の商品に購買が集中する傾向があることに触れた。


特定の単品に売れ数が集中する背景には、口コミの影響力が増したことがある。これまでも口コミの重要性については語られてきたが、それでも伝統的な小売では、メディアやチラシ広告、または店頭でのプロモーションが有効であるとされてきた。もちろん、それらは今でも効果を発揮する場面はある。ただここにきて、口コミの存在が無視できないほど大きくなってきた。特定のヒット商品の多くは口コミが関係し、マスメディア発のビッグヒットは生まれにくくなっている。

口コミが影響を持ち始めているのは、口コミの拡散スピードにある。TwitterやInstagramをはじめとした各種SNSで、日夜自然発生的に起きる口コミは、拡散されるのも早い。SNSは個人をメディアに変えてしまった。LINEなどの日常的に使うコミュニケーションツールからも、口コミは発生する。

その中で最も影響力のある口コミは、信用している人からの口コミである。それは友達かもしれないし、好きなインフルエンサーかもしれない。友達がその商品と利害関係がないことも知っているし、賢明なインフルエンサーは、ステルスマーケティングのリスクは理解しているだろう。日常のあらゆるところにプロモーションが入り込んでいるからこそ、露骨なセールスは現代では敬遠されてしまう。やはり広告のないメッセージは強い。

では作り手、売り手はどうすればいいか。それは、商品を口コミしやすくする仕掛けを作ることである。もっとも口コミが生まれやすくなるのは、作り手のメッセージに、顧客が共感したときである。共感マーケティングについては、あちこちで語られているが、口コミもまた、共感マーケティングであり、あらためてその重要さが増している。共感したとき、人は誰かに話したくなる。それが新たな共感を生み、共感の連鎖が拡がるのである。

そして大事なのは、メッセージを明確にし、顧客と共有することである。言い換えると、顧客が口コミするときのメッセージまで、こちらで用意することである。顧客が口コミしやすくなるような、シンプルでわかりやすいメッセージを顧客に伝えることが重要である。特にキャッチーなフレーズはTwitter、訴求力のあるビジュアルはInstagramと相性がいい。口コミをコントロールすることは難しいが、口コミが生まれやすくする土壌を整えることは可能である。

モノが溢れる時代だからこそ、顧客はシンプルなメッセージを求めている。明確なメッセージを伝えることは小売業の務めである。

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