売上は顧客の支持率なのか?

小売の世界ではよく「売上は顧客の支持率である」と言われる。顧客に承認され、お買い上げいただいたからこそ、それが売上となっているというわけである。

これは本当だろうか?

私は、ある意味では真実だが、必ずしもすべてではない、と思っている。

小売店において、顧客が来店し、売上が成立しているということは、ある一定の納得があったから購入に至ったと考えられる。

しかしそれは、店が気に入ったのか、商品が気に入ったのか、それともたまたま買ったのか、一概にわからない。売上は必ずしも店だけの支持率ではない。

私は、顧客満足度こそが顧客の支持率、と考えている。ただ残念ながら、数値化はできない。顧客満足には、感情などの数値化できない要素が含まれているからだ。

しかし、方程式によって、顧客満足を高めるこはできる。顧客満足はすなわち体験の充実度であり、体験の充実度=商品+サービス+空間である。それぞれの要素をレベルアップさせることにより、体験の充実度=顧客満足=顧客支持率を向上させることができる。

商品は小売にとって生命線である。顧客は小売店に商品を期待する。ここで大事なのは、商品の魅力を顧客目線で伝えることである。どれだけ商品のスペックを説明しても、それが顧客にとって無価値なものであれば、商品の魅力を伝えたことにはならない。あくまで、顧客にとって価値のある情報を伝えなくてはならない。

小売にとって、商品は大事であることは間違いないが、一方で、顧客満足における商品が占めるウエイトは、だんだん下がっている。かわりにウエイトが高くなってきているのは、サービス空間である。

サービスについては、体験の満足度に直結する。特にリアル店舗においては、一番力を入れるべきはサービスである。ここで大事になるのは、いかに顧客の買い物をアシストするかにある。接客においても、顧客は説明を求めているのか、後押しを求めているのかを瞬時に判断しアドバイスすることや、速やかに会計オペレーションを行うこともサービスに含まれる。特にサービスは、顧客満足につながりやすい反面、手際が悪いと不満足につながりやすい。また、従来型の売り手都合の接客や、過剰なサービスはますます敬遠されるようになってきている。小売側も顧客満足を念頭におき、サービスのあり方変えるべきである。

空間においては、買い物のしやすさ顧客へのメッセージの2つが重要になる。通路や什器設定などの店舗にとって基本的な要素は、前提としておさえておく。その上で、空間は体験の印象を大きく左右する。なぜその内装にしたのか、なぜその什器の商品を陳列するのかは、顧客に対するメッセージとなる。顧客へ曖昧なメッセージを伝えてはならない

売上だけが顧客の支持率ではない。顧客の心に何かを残し、顧客の満足度を高める体験を提供することが、顧客の支持獲得につながっていくのである。


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