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ストーリーに必要なのは、「何」を「どのように」語るか

小売の世界では、モノからコトへと言われるようになって久しい。市場には製品が溢れ、顧客はモノに価値を見出すのではなく、モノに付随するコトに価値を見出すようになっている。コトの価値として、モノにまつわるストーリーが重要になっている。小売におけるストーリーの重要性は、各所で触れられている。

ストーリーを語る上で重要になるのが、「何」「どのように」語るかである。言い換えれば、語る内容語り方の2つが大事になる。

「何=what」は、顧客に伝えたい内容であり、すなわち顧客へのメッセージである。ポイントは、顧客に伝えたいメッセージを明確にすることである。このメッセージは、できればシンプルなほうがいい。あれもこれもと詰め込むと、メッセージの濃度が薄まり、伝えたいことがぼやけてしまう場合がある。もっとも伝えたいメッセージ、伝えたいことの本質を明確にし、できるだけシンプルに伝えることが望ましい。

「どのように=how」は、どうやって顧客に伝えるかであり、伝える技術のことである。例えば落語において、同じ演目でも、噺す落語家によって受ける印象が異なるのは、その演者の情報の切り取り方、伝える技術の差によるものである。様々な伝える方法、テクニックがある中で、伝えたいメッセージにとって、もっとも有効な手段を選択することが重要である。メッセージはシンプルに、表現は多彩に、がストーリーを語る上での鉄則である。

そして、ストーリーを語る上で心がけなくてはならないのが、その物語は顧客の共感を生むか、である。顧客がストーリーを求めているのは、共感を求めているからである。共感のないストーリーでは、残念ながら、顧客の心に何かを残すことはできないだろう。

共感を得るためには、どうすればいいか?答えは顧客の頭の中を言語化することである。

人の思考は、心象や印象などの、あらゆる感情の断片が渦巻いている。その感情のかけらを的確に言語化し、表出させることで、顧客は快感と同時に共感を覚えるのである。自分が潜在的に思っていたことを、誰かが口に出してくれたとき、そこには快感と共感が生まれるのである。

感情の言語化でポイントになるのは、本質と流行の掛けあわせである。

本質は、人間の普遍的な感情である。時を経ても変わらない、人間の本質的な部分への説得力が何よりも大事である。

対して、流行は、時代の気分である。社会情勢や流行が時代のムードを作り出し、時代の気分を作り出す。言葉にならない気分を言語化することで共感を生むのである。

顧客の思考を言語化し、共感を生むストーリーを提供することが、これからの小売に求められることである。


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