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こんな時だからこそ、小売がするべきこと

先日、ある郊外のショッピングモールに行った。例の騒動以降、あらゆる業界が影響を受ける中で、消費も大きなダメージを受け続けている。その日行った施設も、人がまばらで閑散としたモール内を想像していたが、意外なことに、結構集客があった。通常を10とすれば8くらいの入りだった。顧客も従業員も、皆マスクこそしているが、そこには不思議な活気があった。行ったのは平日だったが、本来ならば集客のある春休みの季節である。

なぜ意外と集客があったのか。食料品や日用品などの生活必需品の買い出し等の理由もあるかもしれないが、ひとつは人々が買い物という行為に娯楽性を求めているから、ではないかと考えられる。

買い物をするだけなら、オンラインでも事足りる。実際にEC売上は騒動後、大幅に伸びている。しかし、それでもわざわざ店頭に足を運ぶのは、買い物が、物理的に禁じられたエンタメの代替になっているからではないかと考えられる。家族や友人とのショッピング、顧客と店舗のコミュニケーションも、充分なエンタメになり得る。そしてこのことは、今後の小売が進むべき道の大きなヒントなる。

ECの普及による買い物環境の変化、人件費などの経費の高騰、娯楽の分散化など、従来の店頭で利益を上げる小売のビジネスモデルは、すでに大きな変化を迫られている。顧客が、時間と費用のコストかけてそこに足を運ぶ理由を、店舗に携わる人間は考えなくてはならない。そのために、店舗においても、ただモノを売るだけではなく、顧客を楽しませるための、エンターテイメント性は必須である。今回の騒動で、顧客は店舗に何を求めているかの本質が浮き彫りになった。

そして一方で、顧客が買い物に足を運んでいるのは、非日常から日常に戻りたいという、顧客の欲求の表れであるとも考えられる。毎日の生活において、様々な制限がかかる中で、今不足しているのは日常である。様々な制限が非日常を生んでいるからこそ、日常の最たるものである買い物をすることで、日常を少しでも感じたい、という消費者心理の表れなのではないか考える。

こんな時だからこそ、小売がするべきことは、顧客・従業員双方の安全に充分配慮しながら、いつも通りに顧客を迎え、いつも通りに商品を提供することである。なるべく日常と近い買い物環境を用意することが、今求められていることである。

さらに小売業者としてやるべきことは、需要の変化への対応である。社会の変化は需要の変化を生む。通常であれば需要のあるものが、社会の変化によって、需要がなくなることがある。しかしその一方で新しい需要が生まれる。例えば、テレワークが普及することで、人々の生活はどう変わるか、その変化で生まれるニーズは何かを考え、それを顧客のために提案することが、小売業者がやるべきことである。

こんな時にも関わらず、わざわざ店舗に足を運んでくれる顧客が多かったことは、小売に携わる者にとっては救いである。小売業者は顧客の期待に誠意をもって応えなくてはならない。

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