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決断疲れを取り除く

小売の世界では有名なジャムの実験がある。
 
スーパーの試食コーナーで、片方のテーブルには6種類のジャム、もう片方のテーブルには24種類のジャムを並べ、どちらの販売効率が優れているかを検証するというものだ。
 
結果は、6種類のジャムのテーブルでは、試食した人のうち30%が購入したのに対し、24種類のジャムのテーブルでは、3%しか購入に到らなかった。
 
これはあくまで購入した割合の話で、試食の人数によって売上は大きく変動する。
100人の30%と1000人の3%は、どちらも購入人数は30人であり、売上は同じになる。
 
しかし、6種類のジャムよりも、24種類のジャムから選択する方がストレスになるのは想像に難くない。
 
決断疲れという言葉もあるように、現代人は日常生活の中で多くの決断に迫られている。
 
顧客の買物の判断ストレスをいかに減らせるかが、これからの小売のテーマのひとつとなる。
 
顧客の判断ストレスを減らすポイントは、3つある。
 

①選択肢の数

上の実験では、5~9種類が、人が判断できる最適な選択肢の数と結論付けている。
 
これは、業態や商品によっても異なるが、選択肢の数は多すぎても少なすぎてもいけない。
 
特にバイヤーが行いがちなのは、選択肢を減らしてしまうことである。
 
商品の人気、不人気は一律ではなく、データで売れた数がわかってしまうために、売れていない商品をどうしても削ってしまいたくなる。
 
しかし、今売れている商品も、現在の選択肢の中での比較で生まれた結果であるということを忘れてはならない。
 
売れていない商品をただカットするのではなく、別の種類に差し替えるなどして、適正な選択肢の数を維持することが重要である。


②データによるレコメンド

簡単に言えば、一番売れているもの(場合によってはベスト3まで)を顧客に開示することである。
 
人が何かを判断するときは、手持ちの情報を基準にする。
 
しかし、頼まれ物や贈り物などの場合、買い物に来た顧客がその商品にあまり詳しくないことが往々にしてある。
 
そのようなときは、すでに支持されている商品の情報を顧客にオープンにすることで、顧客への判断材料を与えることができる。
 
特に迷ったときは、すでに売れている商品を選ぶことで、顧客も安心感を得やすい。
 
情報を開示することが、顧客の選択のアシストになるである。


③人間によるレコメンド

これは店舗のスタッフによるおすすめで、個人的な意見でも構わない。
 
人の温度が感じられる紹介は、ときに一般論や多数派よりも説得力を持ち、安心感にもつながる。
 
ここでは、なぜこの商品が気に入っているのか、好きの理由をわかりやすいストーリーにしておくと、より顧客に伝わりやすい。
 
具体的な視点の提示も、顧客の判断の手助けになる。
 
 
これからは、ますますモノや情報が溢れるようになる。
 
顧客の判断ストレスを軽減させることも、店舗の役割になるのである。

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