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「好き」と「売れる」はべつもの

バイヤーに必要な資質として、自分の「好きなもの」と「売れるもの」をわけて考えられる能力が挙げられる。

売れる=顧客の需要がある商品であり、顧客の望む商品を調達することはバイヤーの務めである。事業活動を続けていく上では、顧客の求める商品を提供し、組織に利益をもたらす必要がある。

何か商品を見て、いいなと思ったとき、それは組織のバイヤーとして良いと思ったのか、個人の自分として良いと思ったのか、自分で自分のことを理解する必要がある。特に新人バイヤーは無意識に「好き」と「売れる」を混同してしまいやすい。自社のお店が好きで仕事に携わっている以上、売れるものと好きなものがすっぱり線引きできることは少なく、重なっている場合も往々にしてあるからだ。

またキャリアを積んだバイヤーでも、過去の経験や成功体験から、「自分が好き」→「だから売れるはずだ」という発想になってしまうときがある。特に実績を上げているバイヤーほどこの傾向が強い。このあたりがバイヤー業の難しいところだ。

「売れるもの」が自分も好きだった場合は、こんなに素晴らしいことはない。しかし自分が好きでも顧客が望んでいない商品を提供すれば、それは顧客に対しても、組織に対しても裏切りとなってしまう。

「好き」と「売れる」を混同しないための対処法は、自社に期待されているのは何かを自分に問いかけること、である。品質、価格、付加価値、サービスなど、市場での自社のポジションを正しく定義し、それにマッチした商品を提供することが、顧客の期待に応えることになる。経験上、このことはかなり自覚的に行動しないとすぐに忘れてしまう。意識し過ぎてし過ぎることはない。

もうひとつカジュアルな対処法としては、自社の顧客の誰かひとりを想定し、心からその商品をおすすめできるか、である。経験上、商品の選定理由に自分の趣味思考が含まれている場合、顧客におすすめする際に紹介のトーンが鈍ることが多い。顧客に勧める際に言葉につまり、初めて自分の好みでセレクトしていたことに気づく。あくまで自分は顧客の買物代行者に徹し、顧客にとってのメリットを商品の選定基準にすることで、ミスマッチを防ぐことができる。バイヤーにとって必要な資質は公私の使いわけである。


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