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マーケットの開拓者

バイヤーの仕事は大別すれば、2つに分類できる。
 
既存商品の調整と、新商品の開拓である。
 
既存商品の調整は、すでに店舗で販売している商品の販売実績、季節指数、現在の在庫状況から、不足する分を補うために、追加で発注を行うか、あるいはこのまま売り減らして行くかの判断をすることである。
 
例えば、先週あるアイスを50個仕入れて、30個売れた場合、店の在庫は20個残っていることになる。

今週はさらに気温が上がって需要が高まり、45個売れると予測する。

この場合、今週は不足する25個を追加発注しておく必要がある。
 
またこの時に、バニラ・チョコレート・ストロベリーが3:2:1の割合で売れていれば、発注数もそれに応じて調整する必要がある。
 
逆に、今週売れていても、販売シーズンの終盤であれば、追加の発注はせずに、そのまま売り減らしをしていくこともある。

これは、完売予定日から逆算し、現在の在庫数とこれからの予測販売数を照らし合わせて、適正な在庫着地の判断を行う。
 
これが既存商品のコントロールである。
 
対して、新商品の開拓は、新しく発売される商品や、まだ自店で取り扱ったことのない商品を見つけ出し、店舗に導入することである。
 
取引先や業界関係者など自身が持っているあらゆるネットワークを駆使し、また大小さまざまな展示会や市場調査に足を運ぶことによって、顧客の需要にマッチした商品の情報を集めることができる。
 
新商品の開拓は、バイヤーの仕事の要である。
 
そして、これからのバイヤーにより求められるのは、開拓の能力である。
 
今後はデジタル化が進み、調整はAIに代替される。

蓄積されるビッグデータの活用によって、すでに店舗に並んでいる商品の売上は、人間よりも正確に予測可能になる。
 
すでにレールを敷いたルーティン業務はAIが担うようになり、人間は最終の判断をするだけになる。
 
一方で、まだ市場に導入したことのない新商品については、予測の材料となるデータがないため、仮説を立てる能力が必要になる。
 
例えば、トレンド性の強い商品では、同じ商品でも去年の売れ数は50個、今年は50000個というようなことが多々ある。
 
この場合、過去のデータがあてにならないことも多い。
 
未知のものに対して、仮説を立てる力は、現段階ではまだ人間の方が精度が高く、これこそがバイヤーのやるべき仕事となる。
 
また、モノが溢れかえることで、顧客は意味やストーリーを求めるようになる。
 
プロダクトに意味やストーリーを付与するのも、今はまだ人間でなければ難しい。
 
モノのストーリーを付与するのは、エピソードのどこを切り取るかの編集の力も必要になる。
 
顧客の共感を得るのは、どのようなエピソードなのか。
 
編集力も次代のバイヤーに求められる能力である。
 
ゆくゆくは、未知の商品に関する予測も、AIができるようになるかもしれない。
 
今はまだ、AIにはできない開拓をこなすことが、人間であるバイヤーのやるべきことである。

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