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宣伝しない宣伝

これからの小売において、大きく役割が変わるもののひとつは、プロモーション(宣伝)である。
 
従来の小売のプロモーションは、①機能や効果などの商品のプロモーション、②セールやポイントアップなどの販促プロモーション。③理念やビジョンなどのブランドのプロモーションの3種類にわけられる。
 
これまで小売業は、①の商品プロモーションと、②の販促プロモーションに注力してきた。
 
その結果、大量の単品、あるいは単企画のプロモーションが溢れ、宣伝が宣伝としての効果を果たさなくなった。
 
また①、②の多くの広告の直接の目的は売上をアップさせること、であった。
 
企業から自身が売上増の対象と捉えられていることも、顧客はとうに気づいている。
 
そして、そのことに嫌気がさしている。
 
顧客が宣伝を敬遠するのは、多くの広告が企業の理屈で発信されているからであり、そこにウソが含まれているかもしれない、と考えるからだ。
 
これは実際に、企業が広告で真実を告げているかどうか、とは別の問題である。
 
広告にウソが含まれているかもしれないと、顧客が感じる時点で、プロモーションそのものの有効性が薄れている。
 
これまでのようなプロモーションでは、もはや顧客の共感を得ることは難しくなっている。
 
従って、これから価値を持つのは、③のブランドプロモーションである。
 
しかし、このブランドプロモーションも、従来型のブランドプロモーションではなく、現代の顧客のマインドにあわせて、アップデートをする必要がある。
 
新しいブランドプロモーションの目的は、顧客の信頼を獲得することである。
 
売上をKPIにしてはならない。
 
顧客の信頼を得るためのプロモーションのキーワードは、オネスティ(正直さ)である。
 
従来型の宣伝が敬遠されてしまうのは、そこにウソや企業の論理が含まれているかもしれない、と感じさせてしまうことにある。
 
ならば、正直に運営していることを、顧客に理解してもらう必要がある。
 
そのために有効なのは、店舗にとって不利益なことも、顧客の利益になるのであれば、あえて開示することである。
 
例えば、インフルエンサーマーケティングの場合、提携したインフルエンサーに商品を宣伝してもらうのではなく、店舗体験をしてもらい、良いところも悪いところも、忖度なしに発信してもらう。
 
このとき、店舗はインフルエンサーの発信に、いっさい手を加えない。
 
本当に不具合があれば改め、その改善をストーリーとして顧客に公開する。
 
人はリスクを考慮する生き物であり、あらかじめ不利益がわかる方を好み、不利益を開示する企業を信用する。
 
また不利益を開示することを前提とすれば、必然的にそれを克服するためのサービスレベルも向上するということでもある。
 
そして、このような取り組みの積み重ねによって、ブランドの信頼を高めるのである。
 
これからは、宣伝しない宣伝こそが、新たな店舗のプロモーションの方法になるのである。

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