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大衆品と実用品

日本のチェーンストア理論の祖、渥美俊一氏の提唱する品揃えの概念に「大衆品」と「実用品」という考え方がある。

大衆品は、Everybody Goodsであり、多数の人が共通して使用するポピュラーな商品のことである。これは言い換えれば、客層を広く取れる商品のことである。

一方、実用品は、Everyday Goodsであり、継続して使われる、何回も繰り返し使われる商品であり、消費支出の大半を占めているという。言い換えれば、リピートが発生する商品のことである。

渥美氏は、品揃えを計画する際に、大衆品と実用品を重視することを強調している。

大衆品と実用品を品揃えの核とすることで、売上が安定する。

売上の安定は経営の安定につながり、顧客への付加価値の提供や事業の継続につながるのである。

そしてこの考え方は、小売以外の業種にも応用できる方法でもある。

つまり、商品を提供する際は、「多くの人に当てはまるか」、あるいは「継続して利用するか」が、価値提供のポイントになるのである。

また、「ドライ商法」と「ウェット商法」の概念も紹介されている。

ドライ商法とは、本当に影響力の大きいものに注力し、徹底的に追求する態度のことである。
対してウェット商法は、あれもこれもと手を出して、扱いの範囲を広げていく態度のことで、渥美氏は避けなければならない方法としている。

なぜなら、ウェット商法のように複数の課題があると、クリアしやすい課題から取り組むことになり、やさしい課題は得てして全体に与える影響力が小さい。

反対にドライ商法では、難しいが影響力の大きい課題から取り組むことで、成功に最短距離で到達しやすい、とされている。

この考え方も、他の業種においても応用可能である。


先日、最所あさみさん主催のコミュニティ、消費文化総研の「商業経営の精神と技術」読書会に参加した。

「商業経営の精神と技術」は、チェーンストアの理論を実現するための具体的手段について、書かれた書籍である。

経営戦略や商品仕入、店舗のオペレーションや人材教育など、小売を構成する様々な要素が具体数値やグラフを用いて、わかりやすく解説されている。

1988年に初版が出版され、今も読み継がれる、現代小売の古典である。

読書会では、書籍の内容だけにとどまらず、ECにおけるチェーンストア理論の応用の可能性や、敷地拡張性の現代における有効性、小売業界の構造的な問題点など、古典をベースにしながら、未来へつながる議論が展開された。

特に書籍出版時には存在しなかった、ECが普及する現代において、チェーンストア理論は有効なのか、あるいはECそのものにチェーンストア理論は応用できるのかなど、興味は尽きない。

これからの時代にマッチした「チェーンストア理論2.0」をどのように作り出すかが、小売に携わる者の役割になる。

それでも普遍的な原理原則は古典の中にあり、賢者の知識を時代にあわせて応用し、アップデートさせていくことが、小売の発展につながるのである。

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