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ラストワンマイルが、店舗の役目

ラストワンマイルという言葉がある。直訳すれば「最後の1マイル」という意味であり、もともとは通信業界で、最寄の基地局から加入者の建物までの区間を指す。物流の世界でも、同様の意味で使われ、最寄の配送センターから届け先までのことを指している。

近年は小売・物流各社が、このラストワンマイルに力を入れている。なぜなら、このラストワンマイルこそが、顧客との最終接点になるからだ。最終接点が、顧客のその企業に対する印象となり、その対応如何では、次回以降のリピートにつながる場合もあり、他社への切り替えのきっかけとなる場合もある。

実店舗においては、メーカーで作られた商品が、顧客の手元に渡るまでを、ひとつの物流経路ととらえたとき、ラストワンマイルにあたるのは店舗である。顧客との最終接点は店舗であり、最後の印象が顧客の買物体験に大きな影響を及ぼす。終わりよければすべてよし、という言葉があるように、顧客の買物体験にとって、最後のクロージングが大きな役割を果たす。作り手や、購買担当者や、その他流通に携わった人たちの思いを経て、商品は顧客の手に渡るのである。店舗は関わった人すべての代弁者でもある。

店舗を顧客とのラストワンマイルと捉える場合、何をすべきか?心がけるポイントは2つある。

ひとつめは、店舗が顧客とのラストワンマイルであることに、自覚的になることである。自分たちの立ち振る舞いが、顧客との次の接点を生み出すかどうかを決めるのである。SNSの登場によって、店舗と顧客との距離が圧倒的に近くなった。オンラインとオフラインを行き来することで、継続的な関係を築くことが容易になった。顧客との距離が近くなったことで、店舗が特に大事すべきなのが、顧客への感謝である。このときポイントになるのが、感謝するのは、買った顧客にではなく、来店した顧客に対してである。購入してくれた顧客への感謝が大事なのは言うまでもないが、来店した顧客も、時間と費用のコストを払って来店している。そのことを理解していれば、おのずと顧客への感謝の気持ちは湧いてくるはずである。

もうひとつのポイントは、TBPPに徹することである。TBPPとは、ファッションコンサルタントの小島健輔氏が提唱する概念で、Try Buy Pickup  Pointの略である。すなわち、商品の確認や試着ができる、ECの受け取り拠点のことである。TBPPの強味は、事前に試してから購入や返品が決定できることや、お直しなどのサービスが受けられることで、オンラインでの購入よりも付加価値をつけられることにある。ECのない店舗も、擬似TBPPとしての機能を徹底することで、体験できる場としての店舗のメリットを最大限に活し、顧客にとって、有益かつ足を運ぶ価値のある場としての役割が生まれるのである。

ECにおいても、店頭においても、顧客との最後の接点が重要になる。店舗はラストワンマイルの体験の価値を高めることで、顧客と継続的な関係を築くことができるのである。


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