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品揃えはバランスが命

バイヤーの仕事の中で、もっとも難しく、またもっともやりがいがあるのが、品揃えを組むことである。

世の中にある無数の商品の中から、自店の顧客にあわせて商品選定することを、品揃えを組む、という。

この時、ただ商品を選択するだけではなく、どの商品をどのくらい購入するのかも、決めなくてはならない。
購入原価や取引形態などの諸条件も、あわせて仕入先と交渉する。

さらに実店舗の場合は、限られた陳列スペースの中で、どのように販売するのかも、あらかじめ考えておく必要がある。

店舗スタッフがバイイングも兼任している場合は問題がないが、店舗スタッフとバイヤーが分業の場合は、その商品が店舗でどのように展開されるのかも、バイヤーは考えておかなくてはならない。

店舗にどの商品をどのくらい並べるかは、バイヤーの裁量次第であり、バイヤーの決断が、店舗の印象も売上も大きく左右することになる。それだけ、品揃えに対する責任は大きい。

品揃えを組むときに大事なのは、バランスをとることである。
具体的には、①品種のバランスと②クオリティのバランス、の2種類のバランスをとることである。

品種のバランスは、商品の種類のバランスである。
商品の種類とは、例えば野菜で言えば、トマトやナスなどの品種毎の分類のことである。
カテゴリーや店舗規模によって異なるが、どの業態にも適正な品種のバリエーションの内訳がある。

よくあるのが、売れ筋を追いかけ過ぎるあまり、品種のバランスを崩してまうということである。

売れ筋を中心に品揃え進めていくと、アパレルの場合では、気がつくと売場がカットソーだらけになっていた、なんてことがある。トップスやボトムス、雑貨などが、顧客にとって心地良いバランスで陳列されるのが好ましい。

オンラインショップであれば、もう少しバランスの基準は緩くても良いが、実店舗の場合は、視覚情報が大きいので、特に見た目のバランスが重要になる。
カテゴリーバランスの悪い品揃えは、顧客に対して、無意識の違和感を与えてしまう。

木を見て森を見ずは、品揃えにも当てはまる。バイヤーは単品だけで判断せずに、全体のバランスを見ながら全体設計をする必要がある。ホームランバッターばかり揃えても試合に勝てないのである。

クオリティのバランスは、同じ商品でも、商品グレードに幅を持たせることがポイントになる。

特に店舗の主力となる商品には、商品グレードに応じた複数のラインナップを展開することが望ましい。

オーソドックスなパターンは、コアとなる商品を中心に、エントリーしやすいタイプのお試し商品と、コア商品より1ランク上の商品を展開することである。いわゆる松竹梅の品揃えである。

よく知られた実験で、安い商品と高い商品とその中間の商品の3つがあるとき、人は真ん中を選びやすくなる、という傾向があるように、コア商品とその上下のクオリティの商品を持つことは重要である。

幅を持たせることは、顧客に選択肢を持ってもらうことである。
これからの小売のキーワードになる買い物体験にとって、顧客が自分の意志で選ぶということが、経験の一部になるのである。

バランスのとれた品揃えを組むために必要なのは、顧客に提案したいもののゴールから逆算して組み立てることである。

提案したい商品があって、それを顧客に届けるためにはどうすればいいかを考えると、自ずと取るべき手段や道筋が決まってくる。

また、適正な品種やクオリティのバランスの青写真を描いておくことも大事である。料理で言えば、作りながら味を足していくよりも、事前に分量を測っていた方が失敗が少ないのに似ている。

日々変化する営業活動において、最適なバランスをとり続けることが、顧客に支持される店づくりにつながるのである。


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