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「何を」買うかより、「誰から」買うか

あらゆる商品は、顧客のニーズにあわせて、進化を遂げてきた。

最初の需要は、機能である。
生活の中で顧客が感じる不便を解消するため、商品は開発され、世の中にリリースされる。その商品を取り入れることで、顧客の生活は豊かになった。

商品が行き渡ると、次に需要が発生するのは、デザインについてである。
機能面で課題が克服された商品の差別化は、デザインによってなされる。
企業は市場調査をし、より明確になったターゲットのライフスタイルにあうように、デザインをブラッシュアップする。

そして今、機能面での充実は天井に達し、デザインでの差別化も限界を迎えている。

そこで重要になるのが、思想である。
あるいは、ストーリーと言い換えることもできる。
思想、ストーリー、コンセプトなど様々な呼び方があるが、そこに共通にするのが、人の思いがあることである。
人の介在しない思想は存在しない。

これから価値を持つのは、思想のある商品、思想のある店舗だ。

情報はどんどん透明になっている。
これまで顧客は、作り手がどんな思いを持って商品を生み出しているか、なかなか知る術がなかった。
今は、あらゆるものが可視化される時代になった。
ビジブルな世界では顧客はモノではなく、思想を買う。
思想を買うのは、つまり共感である。

差別化はモノではなく思想でなされる。
モノはどこでも手に入る。
だからこそ、どこで買うか、誰から買うかが重要になる。
これからは、作り手あるいは売り手が、顧客との接点を持ち、コミュニケーションをとることが、新しい小売の形になるだろう。

これまで顧客のニーズは、機能、デザイン、そして思想の順に移り変わってきた。
一方で作り手、売り手が心掛けなくてはならないのは、思想は重要だが、機能・デザインが優れているのは最低条件であるということだ。
言い換えれば、機能・デザインが優れている商品でも、そこに思想がなくては、顧客の需要に応えることはできない、ということである。

ファストファッションの衰退には、エコ的な観点からの大量生産、大量商品に対するアンチテーゼに加え、ブランドの思想を顧客が感じ取ることができなかったからではないかと考える。
もし、どういう思いでモノづくりをしているか、どんなコンセプトがあって店舗展開をしているかの、ファストファッションならではの思想が、顧客にもっと伝わっていれば、違った結末があったように思う。

思想は、作り手や売り手からの顧客に対するメッセージである。メッセージなき提案は顧客への誠実さを欠く。顧客の生活を豊かにするために、商品だけでなく、思想を提供することが重要になる。

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