愛される店舗になるために
社会情勢やトレンドの変化により、小売には厳しい環境が待っている。
向かい風の中で店舗が生き残っていくためには、顧客に愛される店舗になる必要がある。
商品は飽和し、物流やITなど店舗を取り巻くインフラも、ハイレベルな同質化が進んでいく。
その中で、店舗に携わる人だけは、その店舗特有の資産になる。
愛される店舗になるには、愛されるスタッフが何より大事であり、愛されるスタッフになるためには、2つのステップを踏む必要がある。
まず1つ目は、マニュアルを徹底的に身につけることである。
大手の小売をはじめ、明文化はされていなくても、大なり小なりその店のルールや作法、すなわちマニュアルは存在する。
マニュアルは、その店舗の顧客に対する姿勢や奉仕の心構えの表明である。
そのブランドが積み上げてきた実用的な知識の蓄積が、マニュアルには凝縮されている。
スタッフは、ブランドの理念や姿勢を体現する存在である。
多くの小売では、マニュアルは入社直後に読み合わせをする程度で、勤務が始まると、業務に忙殺されて、じっくりと顧みられる機会は少ない。
定期的にマニュアルを棚から取り出して、体にしみ込ませることが重要である。
そして、ここでポイントになるのが、マニュアルはあくまで最低限の知識である、ということである。
よく小売では、マニュアルオペレーションの弊害が取り沙汰されることがあるが、それは運用する側が、マニュアル通り行動していれば良い、と考えているからだ。
そこには、残念ながら顧客への奉仕の精神も、店舗の向上心もない。
何々しさえすれば良いというシチュエーションは、小売の現場に存在しない。
マニュアルはゴールではない。
マニュアルを徹底的に身につけたところから、すべてがスタートする。
マニュアル通りの人間は、早晩AIに取って代わられることになる。
一方で、マニュアルを定期的にアップデートする仕組みも必要である。
顧客のために実践する取り組みでも、世の中が変化することで、顧客の不利益に変わることがある。
その中で、スタッフがジレンマに陥らないためにも、定期的にマニュアルがアップデートできる仕組みも必要である。
そのことを踏まえた上で、ステップの2つ目は、マニュアル以上のことを積極的にする、ということである。
マニュアル以上のことをするための判断基準は、その行動が顧客と店舗どちらの利益にもなっているか、ということである。
顧客との関係や事業を継続するためには、どちらかが損をしている状態では長続きしない。
顧客、店舗のどちらにもメリットがあるような解決策を提案することが求められる。
また、接客は基本的にすべて個別である、と認識しておくことも重要である。
人間関係に一律が当てはまらないように、接客にも一律は当てはまらない。
顧客の求めるものに柔軟に、誠心誠意をもって応えることが、顧客に愛される店舗になることにつながるのである。
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