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売れ筋は、さらに売れ筋になる

パレートの法則という言葉がある。別名ニハチの法則とも呼ばれ、全体の多くは一部分が占めている、という理論である。例えば、品揃えの20%の商品が、売上全体の80%を占めている、といった使われ方をする。小売の現場では、商品を重要度で分類するABC分析とともに、参考材料としてよく用いられる。

そして最近は、このパレートの法則がより顕著になっている。つまり、商品の売れ方が、特定の単品に集中する傾向がある、ということだ。これは小売全体にいえる傾向だろう。上位単品と下位単品の差が広がってきている。言い換えれば、売れている商品はさらによく売れ、売れていない商品がより売れなくなっている、ということである。売れる商品と売れない商品の格差が、今まで以上に拡がってきている。

最所さんが指摘する現象が、小売の現場で実際に起きている。これは、いわゆる単品買いが増えていることを表している。

売れ筋が特定の単品に集中する理由は2つある。オンラインショッピングの普及情報の飽和である。

オンラインショッピングは、基本的に単品買いが多い。サイトを開くときには、すでに購入する商品のカテゴリーはある程度決まっている場合が多く、目的の商品まで真っ直ぐにに向かい、カートに入れる。ECでは、店頭における衝動買いやウインドウショッピングにあたる余白が生まれにくい。オンラインでの買い物が普及してきたことで、EC的買い方が店頭にも表れてきていると考えられる。つまり、始めから特定の商品を目的に来店する顧客が増えている、ということである。

単品買い増加のもうひとつの理由は、情報の飽和である。モノが溢れたこの時代において、どの商品がいいか自分で一から情報収集をするのは、情報が多すぎるがゆえに、それなりに労力を伴う。顧客の心理としては、結局どれを選べばいいのか、ということである。したがって、代わりに情報を集めてくれる、メディアやインフルエンサーがオススメしてくれるモノが売れやすくなり、口コミが口コミを生むことで、特定の商品に購入が集中するのである。

そして、この特定の商品に購買が集中する現象受けて、実店舗が取るべき方法は2つ、単品を絞り込むこと関連提案をすることである。

実店舗の商品展開スペースは有限である。限られたスペースを有効活用するためにも、いたずらにSKUを増やすのではなく、商品を絞り込んで、その商品が顧客にどんなメリットをもたらすかを、わかりやすく伝えるほうが効果的である。現代は顧客に直接伝える手段は、オンラインも含めればいくらでもある。上の記事にあるように、バリエーションの頭数のためだけのラインナップは、サスティナブルトレンドと相まって、今後有効ではなくなる。数撃ちゃ当たるの品揃えから、少数精鋭構成へのシフトが必要になるだろう。

そしてもうひとつは、関連販売を徹底的に提案する、ということである。特に、販売員などを配置するような、顧客との間に人を介する業態には効果的である。今のところコンピュータにできなくて、人間にできるのは、顧客のニーズを想像できることである。喉を痛めた顧客に効くのは、風邪薬ではなく、すりおろした生姜スープかもしれない。いずれ技術の進歩によって、コンピュータでも提案することは可能になるかもしれないが、今はまだ、人間の力が必要である。

単品集中の流れは今後も続くだろう。新しい需要動向にあわせて、実店舗も顧客への提案を見直すときが来ている。

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