人間はセイウチだった…!?Mr.タスク感想
全然投稿していないうちに1周年バッヂをもらってしまった悲しみ……。
映画あまり観なくなってしまったのと、観ても感想湧かなかったり、140字程度で収まってしまってツイートに流したりで久しぶりの感想文となっております。
久しぶりの投稿がこれで良いのかとも思いますが、
いやまさかこの映画で感想湧くとは思わんやん。
ムカデ人間みたいな感じでこの映画はヤバイぞ~っていう前評判で聞いてての視聴だったので、こんなにも人間性に切り込んだ映画だとは思ってなかったよ…。
サブスク、なかなかどこもやってなかったんですよね。レンタルはやってたのかな?
X(じじばば無双)がもう見放題切れるで~っていうのをチラッと聞きまして見ないと勿体ない!と久しぶりにサブスク開いたらおすすめに『Mr.タスク』が出てきたんですよね。
よく分かってるじゃんAIくん。
映画的技法、手法には全然気づけなかったので、内容サクッと書いて、セイウチという生き物についても触れながら感想述べていこうと思います。
さて、今回も素敵な画像お借りしました。
もっとひょうきんでかわいいイラストあるかなと思ったら殆ど水族館で撮ったような写真だった。そりゃそうか…セイウチなんてニッチだよな。
そんなセイウチをこんなにも美しく描き上げたのは愛を感じますね。
ここから先ネタバレ注意。
この映画簡単に言うと「クズ野郎がトラウマ拗らせジジイによってセイウチに魔改造される映画」なんですけども、
これだけ聞いても
「は?」
ってなると思うんですが、これにはちゃーんと理由があるのですよ…。
それに至るまでがまあ長いので、時系列で感想は述べず、言いたいところだけ、かいつまんで言います。
まずクズ野郎くんなんですが、
ガールフレンドの話を聞いていると昔はコメディアンを目指していたのかなと察し。面白くないし、売れてなかったし、軟弱なオタクだったけど、プーさんで泣いちゃうほど繊細な一面が彼女はとっても好きでした。
でも今やポッドキャスト(ネットラジオ)のパーソナリティーとなりて、人の不幸で飯を食い、あまつさえ馬鹿にし、下劣な下ネタを大連発。
クズ野郎はある日、日本刀でキル・ビルの真似をする小僧の動画を発見。小僧はうっかり片足を切り落としちゃうんですが、これも放送内で馬鹿にします。
内容は明かされませんが、小僧からクズ野郎に会いたいという連絡が来ます(どういうニュアンスかは不明)
「面白くなりそう」という理由で、飛行機恐怖症の相方(一緒にやってるラジオパーソナリティー)を置いて単身、アメリカからカナダへ行くことに。
クズ「ま、その前に彼女の家に行って一発かますぜ~」
相方「彼女はホットな女の子だよ」(たぶん大切にしなってことを言っている)
クズ「いい女だけど結婚する気はない」
というやり取りもありつつ…。
もう書ききれないほどクズな言動が多い。いかに人間が醜いかということをまざまざと見せつけてきます。
しかもこれ、上手なことにしっかり時系列順で流しているわけではなく、後出しなんですよね。
野郎がセイウチにされる頃には視聴者も「もうアカンわこいつ~」って気持ちに見事なってる。
…と、ここまでクズ野郎のクズっぷりを書いたけど、彼だけじゃないんですよね。
しっかり彼女と相方もクズ。クズ野郎を浮気者呼ばわりしておいて、ちゃっかり彼女と相方も浮気してます。
最近のラジオの内容や、今回の被害者訪問に彼女は苦言を呈します。
セックス中に。
それにキレるクズ。筆者は女性ですが、正直引いた。どっちにも。いや終わってからで良くね??
それで傷心した彼女は相方と浮気の流れに。相方くんの優しい気遣い…とも思えるかもしれませんが、いや君クズ野郎の浮気批難してたよね??どの口が言うとんの??しかも慰めるのに性行為は必須ではないからね??
と、このように「人間は愚かですね…特にお前」をめっちゃ見せつけてきます。
こういう性の話だけではなく、アメリカ人からカナダ人に対する人種差別、そしてカナダ人からアメリカ人に対する人種差別も描かれていて、す、すげー!ってなった。
全然その辺の事情が分からない人にも分かりやすく構成してくれているし、これも愚かな人間の一面ですね。
さて、カナダに着いたクズくん。キル・ビル小僧の家に行くとお葬式の真っ最中。なんと少年は自殺していた。理由は明かされていない。いや、分かるよね。わざわざ自分を中傷した人間を呼び寄せておいて、自死してるんですよ。見せつけているんですよ。
そんな少年の意図(※わたくしの考察)もクズは読み取れません…。「あと2日死ぬの待ってくれりゃあ良かったのに」と相方に電話で愚痴ります。
すごいねークズだねー。
その後、偶然チラシが目に入ります。
興味を引かれたクズは「取材はこいつで穴埋めできるかもしれない」という期待を抱き、そのチラシを掲載した主へ会いに行きます。
それが拗らせジジイだとは知らずに……。
まあその後はセイウチにされちゃうわけですが、ジジイがなぜ人間をセイウチに改造するのか、気になりますよね?
それにはジジイの過去が関わっています。
ジジイは船のコックさんでした。
その日の航海の目的は、デケェホホジロザメを捕る。というものでした。(確か、ちょっと曖昧ですが…)別に人食いでもなんでない、ただデカいから危険かもっていう理由で。ハンティングみたいなものでしょうか。
人間らしい愚行の船旅で、船はトラブルにより沈没してしまいます。
ジジイ(当時は若いけど)は必死に泳ぎ、小さな孤島に辿り着きます(映像を見る限り、ほんとに小さな岩場のような感じなのだが、低予算故かはわかりません。でもこの後の考察にこの「小さな孤島」が重要になってくるので、実際そういう島だったと仮定して話を進めていきます。)
孤島にはセイウチがいました。
セイウチはジジイの身体を温めてくれたようです。
ジジイは過去に孤児院にいましたがありとあらゆる大人から様々な虐待を受けました。セイウチから分け与えられた体温は、自分が初めて人として認められたような心地になったと言います。
はい、もうわかるよね?
って感じでセイウチ魔改造が始まっていくわけなんですが、終盤で「セイウチを求める理由は、親友を取り戻したいから、だけじゃなかった!!」ということが分かります。
ここで読者のあなたに問います。
人は体温だけで生きられると思いますか?
はい、もう分かるよね?(120%の笑顔)
ジジイ、命の恩人を食いました。
しかもその1時間後に救助が来たのでした…。
人間はなんて愚かなんでしょう~!
そして最後の最後、ジジイがセイウチ人間を作ろうとしていた理由がわかります。
ジジイ「あの時は不意打ちだった、あの時の戦いをやり直そう」
ジジイは簡易的なセイウチスーツに身を纏い、自ら魔改造したセイウチ人間(クズ野郎)と戦います。
ジジイのすげえ個人的な罪悪感と後悔への懺悔だったわけですね。
なんて愚かなんでしょう!!
よく他人を巻き込めるよなとも思ったんですが、ジジイは幼少期に受けた虐待を「自分は道具として消費された、人間として見られなかった」と評しているので、その辺の感覚がバグっちゃったんでしょうね。
「俺を殺さなければ死ぬのはお前だぞ」とクズを焚きつけるジジイ。しまいにスーツを脱ぎ捨て、凶器を振り下ろそうとしたところでクズが決心し、牙(タスク)をジジイに何度も突き刺し、殺します。
お気づきかもしれませんが、セイウチになった人間は、人間には戻れません。整復手術は困難で、何よりクズくんは心までセイウチになってしまったのか、おきにのコンビニジュースか生サバがご馳走になっていました。
クズくんが暮らす動物保護施設の檻の中へ彼女は魚を投げ入れます。
彼女の涙を見て、クズくんは彼女の言葉を思い出すのでした。
「祖父が言ってた…。泣きたい時は泣いていい。それが人間の特権だ」
彼女が去った後を見つめながら、セイウチ人間は一人涙するのでした……。
この映画をコメディー寄りのホラーと評している記事がありましたが、個人的にコメディー要素は1つも無かったと感じています。
コメディーって、聞いている人が笑えるから成り立つものであって、そうじゃなかったらそれは〝皮肉〟なんですよね。
この映画に出てくるやり取りっていうのは、すべて皮肉のように私には見えました。
グロホラー観たいな~っていう人には不向きじゃないかな。
どうしてもホラーという文言を入れたいなら、強いて言うなら「風刺ホラー」といったところ。
さて、観終わってからふと思ったんですけど、
不意打ちごときで、人間はセイウチに勝てるのか?
銃だろうがナイフだろうが、あの分厚い皮をぶち抜くのはなかなか難しい。
そのセイウチ、すでに弱っていたのでは?という一つの仮説が立つ。
それは「小さな孤島」にも由来する。
どのくらいの小ささかは分からないが、そもそもセイウチは身体がでかいのでハーレム(群れ)を作った状態だと広いスペースが必要になる。
ちょっとした小島(ほぼ岩)で犇めき合って休んでいる様子は野生のセイウチでよく見られる行動だ。
その頭数が少なければ少ないほど、狭いスペースで事足りる。
小さな島の岸(←って日本語字幕ついてたけど、映像だと岸というか岩礁)
不意打ちで勝てちゃった
どうもこの2点が気になって、そもそもセイウチ衰弱していた説が自分の中で拭えない。
だからなんだって話なんですが。
もう弱っていた個体なら、ジジイの後悔も幾分か和らいだのでは…と思ったけど、ジジイにとっては恩人で一生涯で唯一の友達だもんな。
失礼なこと思ってごめんジジイ……。
あと、おたる水族館で見たセイウチのことをふと思い出しました。
2頭か3頭いたと思うんですが、トレーナーさんの指示でたくさん芸を見せてくれました。
その時、めちゃびっくりしたのが、なんと指符(身振り手振りによる指示)だけではなく声符(発声で行う指示)でも言うことを聞いていたんですよね。同時じゃなくて、声符だけでも!!
これめちゃすごいことなんです。
人間の「言葉(コマンド)」を理解してるってことなんですよね。
しかも水中でも聞き取れる。すごい。
ちら~っとネットを調べたら「好奇心旺盛」とか「人間臭いところがある」とか書かれていました。
散々、人間愚か愚かと罵ってきたこの映画ですが、最後の最後で
「セイウチは人間並みに賢い、でも人間みたいに心は醜くない」
という感想に集結し、
「人間はほんとうはセイウチだったのでは」というジジイのセリフが最大の風刺、逆説だったということでオチになったかなと思います。
おわり。
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