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ワイン好きに捧げるレシピ#学び編 part2《渋くないワインと出会いたい》

前回の学び編 part1では酸味についてお伝えさせていただきましたが、今回は酸味同様に苦手な方が多い渋味について解説いたします。

渋いワインがお好きな方も、そうではない方も、渋味の秘密を理解することで、より一層ワインを楽しめるようになりますよ!


学び編 part2《渋くないワインと出会いたい》

「今週もお疲れ様ー!乾杯!!」

現在、金曜日の20時。シャル子(ワインオタク・OL)とピノ太郎(シャル子の夫・関西人)は、行きつけのワインバーでお互いの1週間の労をねぎらっている。

「明日からお休みだし、今夜はゆっくり赤ワインを飲みたい気分。」

あっという間にスパークリングワインを飲み干したシャル子が、目を輝かせながら提案した。

「ええやん!しっぶい赤ワインは飲まれへんから、僕でもいけそうなやつ選んでや。」

ワインの渋味とは

シャル子はいつものピノ太郎の無茶ぶりにも動じることなく、ワインバーのリストの中から1つの銘柄をマスターに伝えた。

マスターは美しい所作で注ぎ入れたキラキラと輝くルビーの液体を、ピノ太郎の前にスッと差し出す。

「有難うございます。それじゃピノ太郎、早速この赤ワインを飲んでみて。」

生産者:ドメーヌ・アルロー・ペール・エ・フィス 銘柄:ブルゴーニュ ロンスィヴィ

「・・・んん?これはゴクゴク飲めるわ!確かに渋さはあるんやけど、口中がギュッと引っ張られるような嫌な感じがなくてうまいなぁ。」

「ワインに渋味を感じる理由は、ブドウに含まれているタンニンという化合物が原因なの。ちなみに、ブドウ以外にも渋柿栗の皮、紅茶に含まれているわ。」

「ふーん。そのブドウに含まれるタンニンが渋さの原因なら、何で最初に飲んだスパークリングワインや白ワインは渋く感じへんの?」

「それは醸造工程による違いね。タンニンはブドウの果皮や果梗、種子に多く含まれていて、赤ワインの場合はその果皮・果梗・種子を漬け込む醸し(※)(Maceration)という工程中にタンニンがワインへ溶出するの。この醸しの時間が長いほどタンニンの溶出は多く、短いほどタンニンの溶出は少なくなるわ。」

「それやったら、渋くない赤ワインを飲みたいときは、その醸しの時間が短いもんを選べばええんやな。」

「そうだね。でも、実はもっと簡単にタンニンが少ない赤ワインを選ぶ方法があるの。」

「えっ!?正直、醸しとか言われてもようわからんし、その虎の巻を知りたいんやけど!」

「ポイントは2つで、種子の成熟度と果皮の厚みよ。種子の成熟度によってタンニンの質が変化することがわかっていて、冷涼で日照量が少ないエリアは種子が未熟のため青く尖ったタンニンに、温暖で日照量が多いエリアは種子が成熟するためやわらかいタンニンになるわ。」

「ふむふむ。酸味と同じパターンやね。」

「2つ目の果皮の厚みは単純で、果皮が厚ければタンニンは多く、薄ければ少なくなるの。ブドウ品種によって厚みに差があって、今飲んでもらったピノ・ノワールは果皮の薄い品種の代表格ね!同様に渋味が少ないワインを選びたいなら、ガメイマスカット・ベーリーA辺りの品種もオススメよ。」

「なるほどな・・・。僕みたいな初心者には、そっちのほうがわかりやすいわ!」

「渋味についてしっかり学んだことだし、明日はワインショップで同じピノ・ノワールを買いに行って渋味の少ない赤ワインに合う料理を作っちゃおうか!」


✅タンニンのまとめ

  • ワインの渋味の正体は、ブドウの果皮・果梗・種子に多く含まれるタンニン

  • 赤ワインに渋味を感じる理由は、ブドウの果皮・果梗・種子を漬け込む醸しの工程中にタンニンがワインへ溶出するため。醸しの時間が長いとタンニンの溶出は多く短いとタンニンの溶出は少なくなる。

  • 冷涼で日照量が少ないエリアは種子が未熟のため青く尖ったタンニンに、温暖で日照量が多いエリアは種子が成熟するためやわらかいタンニンになる。

  • ブドウ品種によって果皮の厚みは異なり、厚いとタンニンは多く薄いとタンニンは少なくなる。


✅もっと詳しく知りたい方へ

醸しは、基本的に赤ワインと白ブドウを原料とするオレンジワインに対して行われますが、一部の白ワインロゼワインでも行うケースがあります。
 醸しには発酵前浸漬(Prefermentation cold maceration)と発酵後浸漬(Post Fermentation Maceration)があり、それぞれ目的が異なります。
 発酵前浸漬は果皮に含まれる風味成分の抽出が目的のため、果汁の温度を低温に保ち、数日から数週間発酵を意図的に止めることで果皮の風味成分と色素をやさしく抽出することができます。
 一方、発酵後浸漬はタンニンやアントシアニンなどのポリフェノール類の抽出が目的であり、主に長期熟成タイプのワインに活用されています。発酵後もブドウの果皮・果梗・種子の浸漬を継続する方法であり、数日から1~2カ月かけて果皮の風味成分と色素のさらなる抽出を行います。


鴨肉とイチジクのパテ・ド・カンパーニュ/Pate de Campagne with duck and figs

主役の鴨肉と鶏レバーをドライイチジクが名脇役となって引き立て、口中で至福の味わいを生み出すコク深く濃厚な一皿です。

通常、パテ・ド・カンパーニュでは網脂を使用しますが、今回はどちらのご家庭でも入手可能な豚ばら薄切り肉を使用しています!

材料

鴨肉          約450g
鶏レバー        約250g
ドライイチジク     3個
塩          8g
胡椒         小さじ1/2
ナツメグ       小さじ1/2
シナモン       小さじ1/3
ジンジャーパウダー  小さじ1/3
ポート酒       30ml
ブランデー      20ml
にんにく        1片
エシャロット      約30g
ピスタチオ       約20g
卵           1個
豚ばら薄切り肉     約200g
タイム         適量
ローリエ        4枚
肉汁         大さじ3
ブルーベリー     20個
赤ワイン       大さじ2
醤油         小さじ1
※分量:3~4人分(長さ18cm×幅10cm×高さ7cmのテリーヌ型1台分)


作り方

①鴨肉は、2〜3cm幅に切る。鶏レバーは、血液と白い筋の部分を取り除く。

②ドライいちじくは、約5mm幅の薄切りにする。

③バットに①②を並べる。Aをすべて加え、まんべんなくもみ込む。

④③にBをすべて加え、再びよくもみ込む。ラップで密閉し、冷蔵庫で約8時間おく。

⑤にんにく・エシャロットは、みじん切りにする。ピスタチオは、半分に割る。

⑥フードプロセッサーに④のマリネした鴨肉を入れ、ペースト状にする。

⑦④のマリネした鶏レバーは、包丁でたたく。 

⑧ボウルに⑥⑦を入れて、粘り気が出るまでよく混ぜ合わせる。④のマリネしたドライイチジク・⑤・溶き卵をすべて加え、まんべんなく混ぜ合わせる。

⑨豚ばら薄切り肉の端が少し重なるように、テリーヌ型に敷き詰める。⑧の肉だねを詰め、豚ばら薄切り肉を肉だねの上に折り返して被せる。しっかり空気を抜き、上にタイム・ローリエを乗せる。

⑩アルミホイルで蓋をする。深めのバットにテリーヌ型を乗せ、バットの深さ半分程度のお湯を注いで160°のオーブンで60~70分焼く(中心に火が通るまで加熱してください)。

⑪⑩のアルミホイルを一度取り外し、肉汁を容器に移しておく。再びアルミホイルを被せ、上に重しを乗せる。粗熱がとれたら、そのまま冷蔵庫で約8時間おく。

⑫フライパンに⑪の肉汁・Cのブルーベリー・赤ワイン・醤油を加え、少しとろみがつくまで弱火で煮詰める。

⑬⑪のパテ・ド・カンパーニュを器に盛り付け、⑫のブルーベリーソースを添えて完成!

「おお!?口当たりはしっとりしてんねんけど、口の中で脂が溶けてむっちゃ濃厚!」

「時間はかかるんだけど、ポート酒とブランデーで一晩マリネすることでコクと風味が増し、さらに完成後に余分な肉汁を流して一晩寝かせることでより濃厚で凝縮した味わいに仕上がるの。」

「このピノ・ノワールを合わせると、鴨と鶏レバーの鉄っぽい風味がさらに引き立つわ!」

「おっ、鋭いね。実は、土壌に酸化鉄が多く含まれるジュヴレ・シャンベルタン村で収穫されたピノ・ノワール(※)から造られているのよ。だから味わいにも鉄分の要素が表れていて、同じく鉄分を多く含む鴨やレバーは特に好相性なの。」

「それにこのブルーベリーソースをたっぷり付けて食べると、赤ワインのイチゴみたいな風味と酸味がマッチして、より一層旨味が増した感じがするな!」

「ブルーベリーソースに少しだけ醤油を入れたんだけど、醤油とピノ・ノワールは相性がいいから和食店でもこのペアリングはよく採用されているわ。」


✅もっと詳しく知りたい方へ

通常、単一の村で収穫されたブドウのみを使用し醸造されたワインはAOC コミュナル/ヴィラージュ(Communales/Village)=つまり、こちらのキュヴェの場合はジュヴレ・シャンベルタン村を名乗ることが可能です。
 しかし、ロンスィヴィを購入した翌年に原産地呼称当局の改定を受け、全10haのうちアルローが所有する5haのみがAOC コミュナル/ヴィラージュから、その下のクラスにあたるAOC レジョナル(Regional)へ変更されました。
 そのため、アルローが造るロンスィヴィはAOC ジュヴレ・シャンベルタンではなく、AOC ブルゴーニュを名乗ることになりました。


✅ワインを合わせるコツ

  • 鴨と鶏レバーの鉄分には、同様に鉄の要素を含む赤ワインを合わせる。

  • カラメル香やバニラ香、酸化熟成由来のスパイス香を備える醤油と、同じく木樽由来のバニラや熟成由来の枯葉のような奥深いアロマを持つピノ・ノワールは相性抜群!


ドメーヌ・アルロー・ペール・エ・フィス

現当主シプリアン・アルロー氏の父、エルヴェ・アルロー氏が1970年代よりブルゴーニュ地方モレ・サン・ドニ村で元詰を開始した由緒あるドメーヌ。1998年よりシプリアン氏が実質的にドメーヌの運営を開始、徐々に畑を買い足し、平均樹齢30~50年のモレ・サン・ドニ村を中心にジュヴレ・シャンベルタン村とシャンボール・ミュジニー村の最良区画にブドウ畑を所有しています。

弟のロマン氏が2004年よりドメーヌに参入、シプリアン氏とともに醸造に携わっており、ステンレスタンクでコールド・マセレーションを行うものの過度の抽出は避けています。新樽の使用率は格付やヴィンテージにより異なり30~60%の割合で樽熟成を行い、またSO2を使用を最小限に抑えることでピノ・ノワールのピュアな果実味をダイレクトに味わうことができます。

同じく妹のヴェルティーユ氏もドメーヌに参入し、馬を用いての耕作を行うなど、リュット・レゾネに加え、現在は大半の所有畑でビオディナミにも取り組んでいます。

実は、ワインの渋味が苦手という方は多くいらっしゃいます。

そのような方はぜひ、今回ご紹介いたしました醸しの時間が短いもの温暖で日照量が多い産地のもの、果皮の薄い品種から造られたものを選んでみてくださいね。


最後までご覧いただき有難うございます!

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