トランス女性に対しての呼び方

 実は先日「夫が女性になりました ~家族のカタチを求めて~」Vol.45と言うNHKの記事を読み記者がトランス女性である「マコさん」に対し「夫」と書き続けている事の無知から来る配慮のなさに愕然としました。
私は怒りの余り、NHKでディレクターをしている姉にすぐさま「ちょっと、これトランス女性に対して完全アウトなんだけど!どこに文句言えばいいの?!」と電話をしたところ、姉自身も「はて?ええ記事やん。何が問題?」と全く気にならない様子。私もLGBTQに関して全く無知だった時はきっと同じ反応をしていたかもしれません。
でも私は(元々は夫だった)妻が子供の学校の先生から「◯◯君のお父さん!」と呼び止められたり、私に対して「おたくのご主人が〜」と言われたり、私と一緒にいる時に「旦那さんは〇〇ですか?」と言われたりする度に落ち込むのを見ているので、到底そんな言い方は平気でできません。
想像していただきたいのですが、貴方がもしいつも「男性」に間違えられる事にコンプレックスがある女性だったとして、知らない方から「男みたいだね」とか、いきなり「お父さん!」なんて言われたらどうでしょう?落ち込みませんか?もちろんわざと男らしくしていたり、そんな事全く気にならない女性もいらっしゃるでしょう。しかし多くのトランス女性にとっては「外見で『男性』と判断される」事は大きな悩みなのです。なのに世間一般に「男性」としての意味を持つ「夫」や「お父さん」など言う言葉を投げかけられたらどうでしょう?悲しくなり「完璧」ではない自分の容姿を責める方も多いはずです。

ここに出てくる「マコさん」も事前にこの記事を確認されていると思いますし、この記事でOKを出されているのだと思います。でも本心は「妻」とか「お母さん」とか呼ばれたいはずです。記者の方は全く悪気なく書いてくださったからこそ「マコさん」は本心を言い出せなかったのではないかと察します。奥さんに対しても「理解ある妻」に対してそこまで言い出せないのかもしれません。でも当事者が目をつぶってくれたからといって「配慮をしなくていい」と言うのは間違っています。記者ならば尚更です。「男性」や「女性」があやふやになった今、当たり前に世間での役割が限定される呼び方を使うのは大変危険だと言う事を私はここで皆様にお伝えしたい。

では今回の場合なんと書けば良かったのかと言うと、例えば題目は
『夫』が女性になりました ~家族のカタチを求めて~」(※この場合の「夫」とは「夫」としての役割を指し「男性」と言う意味は含みません。)などと「」で括って注釈を入れたりすると良いかもしれません。あるいはカタカナで「『オット』が女性になりました ~家族のカタチを求めて~」と書いても良いかもしれません。
中の記事で「香織さんと夫のマコさんがどんな思いで〜」と言う文章も「香織さんと元夫で現在妻であるマコさんがどんな思いで〜」とか「香織さんと夫として結婚したマコさんがどんな思いで〜」などと書くべきで決して端折ってはいけません。

「変わりゆく夫をなかなか受け入れられない自分自身に当時がっかりしたといいます。」この文章も夫という文字に「」をつけるだけでだいぶ印象が違います。
変わりゆく『夫』をなかなか受け入れられない自分自身に当時がっかりしたといいます。

「また自分たちの子どもにとっては かけがえのないお父さんでもあるからです。」こちらの文章も同じく
また自分たちの子どもにとっては かけがえのない『お父さん』でもあるからです。」とか、「また自分たちの子どもにとっては かけがえのないオトウサンでもあるからです。」などと強調したりするなどして配慮をすべきでした。

とても些細な事かもしれませんがトランスジェンダーの方は今まで散々傷付いてきて、もうこう言う些細な事に対して声を上げる気力さえもなくひっそりと傷付いている方がほとんどです。だからこそ私達周りのマジョリティーが些細な事にも配慮すべきだと思うのです。

補足しますと、性別移行前の写真を見せたり、性別移行前の名前(デッドネーム)で呼んだりする事もトランスジェンダーの方を傷付ける事があるので(もちろん中には平気な方もいらっしゃいますが、人それぞれなので)こちらも配慮しましょう。

#良きトランスアライになろう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?