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2018年 小学生部門 最優秀賞『のっぽのサラ』

受賞者
盛永 維さん(小5)

読んだ本
『のっぽのサラ』パトリシア・マクラクラン作 金原瑞人訳 徳間書店

作品
「家族をつなぐ色」
 盛永 維

 この本は「のっぽのサラ」という本だ。大草原に住む、パパ、ママ、アンナの家族に弟のケイレブが生まれる。しかし、ケイレブが生まれた時にママは死んでしまう。ママが死んで何年かたった時、パパは新しいママになってくれる人を新聞の広告で募集した。そこで海のあるメイン州からやってきたサラは、歌を歌うことが好きで、シチューを作るのが得意だ。灰色のアザラシちゃんというネコも連れてきたが、故郷の海がこいしくてたまらない。だが、みんなのことが大好きになっていき、やがてパパと結婚してみんなは家族になる。
 この物語は、まだ自動車よりも馬車が多く走るような昔の話で、私には白黒の世界しかイメージできなかった。でも、読み進めていくと色や手ざわり、音やにおい、味を感じることができた。
 たとえば、サラが初めてアンナ達のところへやってくる場面だ。手紙のやりとりはしたが、アンナ達は自分のママになるかもしれない人がどんな人か気になって、本当にママになってくれるか不安に思っていた。そしていよいよ遠くから馬車に乗ってやってきた、サラの頭には黄色い帽子。サラのこの帽子の黄色は周りを明るくしてくれるサラらしい色。待っていたアンナやケイレブにとってはたまらなくうれしく、安心する色だったと思う。アザラシちゃんの灰色は、冬の海のような灰色で、なんでも見のがさないすきとおった目も黄色。アンナ達がアザラシちゃんをすぐに好きになったのもよく分かる。
 サラはアンナ達にお土産を持ってきた。それは、小さな貝がらと毎日海に洗われた白いつるつるした石だ。貝に耳をあてるとアンナやケイレブには波の音が聞こえ、すきとおったきれいな海が見えてくるようだ。サラはその音を聞くと安心するし、少しさみしくもなる。つるつるした白い石を見ているとザブーンという海の音が聞こえてくるよう。サラに帰ってきてもいいんだよとサラをアンナ達から引きはなそうとしているようにも思える。
 嵐の場面では暗く、冷たい。しかし、みんなでねむる干し草のベッドは少しチクチクしているが、フカフカしていてあたたかく感じる。
 サラが家にやってくると、草原はあたたかく家族を包みこみ、みんなを安心させる。初めて食べるサラのシチューは、アンナがママに作ってもらった、そして今までアンナがていねいに作っていたママのやさしい味とは違っていた。でも、やさしいにおいがしてて元気の出る味で、モクモクと何杯でも食べてしまいそう。
 サラが町から色えん筆を買ってきてくれる場面では、アンナとケイレブはサラが海をこいしくなって帰ってしまったのではないかと不安になる。サラが海の灰色、緑、青を買ってきたのは、きっとサラがいろいろな見方で海を見ていたからだと思う。灰色は、暗くさみしい冬の海の色。緑は、深い緑でみんなを包みこんでくれる海の色。青は、きらきらかがやくすきとおった海の色。青だけではなくいろいろな海の色をさがすことのできるサラの心は、広くきれいなのだろうと思う。サラはきっと、アンナとケイレブに一方的な見方ではなく、いろいろな物の見方のできる心の広くきれいな子に育ってほしいと思っているのだろう。アンナとケイレブもその思いがとどいてサラのことがさらに好きになり、ママになってほしいと感じて家族になったのだと思う。
 普段のように書いてあることだけを読むだけではなく、色や手ざわり、音やにおい、味をあらわす言葉から想像をふくらませていくと、本に書いてある登場人物の感情だけではなく、他の感情を感じることができ、登場人物のとった行動につなげることもできた。これからも、このような本の楽しみ方で外国の本をたくさん読んで新しい世界を感じたい。

受賞のことば
 今回の受賞は、昨年の授賞式で選考委員の先生方や他の受賞者とふれあう機会があって、他の人の本の楽しみ方を知ることができたからだと思います。この作文で五感を使って、本には書かれていない登場人物の感情を感じることができたことが私の新しい本の楽しみ方です。これからも、いろいろな本の楽しみ方を見つけ、想像をふくらませながら外国の本を読んでいきたいです。本当にありがとうございました。

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(注:応募者の作文は原則としてそのまま掲載していますが、表記ミスと思われるものを一部修正している場合があります。――読書探偵作文コンクール事務局)

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