そんなことをして何の意味があるの？

フォローさせて頂いているnoteに書かれていたセンテンスに目が止まった。
そのまま目を閉じると、30年も前の記憶が鮮やかに蘇った。
「そんなの練習して何の意味があるの？」
ギターで練習していたジ・エンターテイナーを、ちょっと気になっていた娘のまえで爪弾いたときに、その娘に突きつけられた科白。
え？意味？？？……、固まった身体でギターを抱えたまま、何故かあふれる涙が落ちぬよう堪えながら叫んでいた（心のなかで）。
何の意味がある、ってぇ、オノレにうっとりしてもらうためって意味に決まってるだろうがぁ～。ジ・エンドテイナーだ。

「そんなことをして何の“意味”があるの？」というときの意味とは、こういうことかもしれない。
つまり、この時のギターを弾く“意味”は、ギターを弾く以外のところにあった。
好きな娘を、うっとりさせる、が“意味”だったのだ。
ところがそれは、ギターを弾くの向こうにあることなのだ。
既に「ギターを弾く」とは関係ないのだ。
もう「ギターを弾く」でなくてもいいのだ。

30年後のいまもギターを弾いている。
誰かをうっとりさせるどころか、聴かせることもなく、いつか聴かせようということもない。
そう、“意味”はなく、「ただギターを弾く」をしている。
ギターを弾く、ただそのことを楽しんでいる。

何かの向こうにある“意味”ってのは、いろいろある。
金を儲ける、名声を得る、評価を得るとかね。“意味”とは他者絡みである。
「いいね」とか「スキ」とか「フォロー」を求めるのも“意味”なんだろう。
本質の向こうのことである。
よくスポーツ選手が言う、「全力プレイをみせて、みんなに元気になってもらいたい」なんていうのも“意味”である。
そうした台詞をきくたびに、なんだか白けた気持ちにさせられてしまう。
「結果として他者の元気に繋がるのはいいんだけど、その“意味”が先にあるのはどうなの？そのスポーツが好きでどうしてもやりたいから、やる」じゃ駄目なの？ってさ。
なぜ“意味”を言わなきゃ駄目なの？
なんだか“意味”を見出さなきゃ、やっちゃ駄目みたいじゃない。
なんの負い目を感じることなく、世間とは関係なくやればいいじゃないか。
まあプロの選手の場合は、スポーツといえども仕事であるから、世間の評価という“意味”が必要なのかもしれないな。
そういえば、大坂なおみもテニスだけやっていては駄目だと言われたんだなぁ。
テニスだけやっていて、周囲は勝手に観て楽しめばいいと思うのだが……
とはいえワタシでも、仕事では、そのものの向こうには“意味”がある。
仕方がない、生活費を稼がなければならないしね。
仕事だけを純粋に意味を求めずやっていて、それで生活できるとはならないのが現実だし。
でもさ、それにしても、プロじゃなくてもやたら“意味”に毒されてないか？
社会的な意味を見いだせないことをやるのは社会人として駄目なのだ、という無言に圧力があるのだろう。
社会人は癖のように問う、「それにはどんな“意味”（理由）がありますか？」ってね。
誰もが“意味”を求める。
誰もが聞かれなくても“意味”を見出そうとしてしまう。

もういいよ、“意味”なんていらない。
むしろ「“意味”のない」ことだけをやっていたい。
ただ「ギターを弾く」をやっていたい。
ただ「蝶を追う」、ただ「写真を撮る」をやっていたい。
そのむこうの意味を求めるのではなく、“意味”なくやっていたい。
楽しいからそれをする。“意味”はない、でいたい。
え？なんだって？「傾聴」は社会的意味があるだって？
冗談じゃない、勝手に意味を見出すなよ。
「傾聴」をしたいから、“意味”もなくただやっているのだ。
楽しいからやっている。“意味”などない。
“意味”などなくとも、それをやらずにはいられないから、やっているのだ。
ただ、やらずにいられないのだ。そのものがやめられないのだ。

ギター、写真、蝶、傾聴、……これはワタシのことだけど、
誰ものすべてのことの先にあるのは、生きること、だろう。
必ず問われる。
生きることの“意味”、である。
生きることの“意味”とは、よく言われるのは夢や希望か、、、
“意味”のない人生とは、夢も希望もない、となるのか？
ただ「ギターを弾く」がごとく、
ただ「生きる」をする。では拙いのか？
夢も希望などの「生きる」の向こうにある“意味”を求めるのではなく、
ただ、「生きる」ことを生きる、で何がいけないのだ。
夢や希望をもってない人生など“意味”はない、“意味”がないのはイケない、という同調圧力に苦しまなくてもいいではないか。

「生きる」そのものを“意味”などなく、ただ生きるを追求する。
評価も価値も関係なく、ただ「生きる」をそのまま生きるでいい。
人生に“意味”などないのだ。
人生に“意味”があると勘違いして、勝手に人生に絶望やら失望などして自殺する必要などないのだ。