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ある事件がきっかけで琥珀に封じ込めた思い出が溢れだす「琥珀の夏」

こんにちは、読書子です。
本日、紹介する本はこちら。
辻村深月作「琥珀の夏」

前々から気になっていた1冊。
読み始めたら夢中になってページをめくっていました。
では、あらすじを簡単に紹介します。

『カルト団体「ミライの学校」の敷地内から、子供の白骨遺体が発見された。
弁護士の法子は遺体が発見されたというニュースを見て、自身が子供時代に知り合った少女のものではないかと胸騒ぎを覚える。

小学4年生の頃に参加した「ミライの学校」の夏合宿。
法子はそこで子供の自主性を育てるため、親と離れて暮らすミカと出会い、友達になる。
法子はその後も合宿に参加し、ミカと交流を続けるが小学6年生の時、彼女は姿を見せなかった。

発見された白骨遺体がミカでなければいい。
そう思う法子だが、一方でミカである可能性も捨てきれない。
そんな時に「発見された子供の白骨遺体が、自分の孫かもしれないから調査してほしい」という依頼が法子の元に舞い込む。

物語は「子供の白骨遺体について調べてほしい」という依頼を受けた法子が、「ミライの学校」事務局の田中と向き合っているところから始まります。

ミライの学校・・。
自然豊かな「学び舎」、森の中にある「工場」、先生たちとの「問答」、そして森の奥に佇む「泉」。
子供の白骨遺体が発見されたニュースをきっかけに、法子は小学生の頃に参加した夏合宿を思い出していきます。

小学生4年のノリコ(法子)は、クラスでも「地味なタイプ」に分類されており、友達も少ない子でした。
夏休みが迫ったある日、クラスで人気の女子から「ミライの学校」主催の夏合宿に行こうと誘われます。

合宿先では、各地からやって来た子どもや先生たちと1週間共同生活を送りますが、ノリコはなかなか馴染めず友達ができるか不安に思っていました。
そんな時に声をかけてくれたのが「ミカ」です。

ミカは小さい頃から両親と離れ、「ミライの学校」の施設で暮らしていました。
ノリコと同じ小学4年生なのに、しっかり者で明るいミカにノリコは少しずつ心を開いていき、2人は友達になります。
ただ、明るい性格のミカも実は複雑な思いを抱えていました。

物語は子供時代のノリコやミカ、現在の法子の視点で進んでいきます。
ミカの視点では、本当は親と離れて暮らすのが寂しい、だけど、それを表に出せないといった複雑な気持ちを抱えている様子が細やかに描かれていました。

この作品を読んでまず思ったのは、子供の感情や揺らぎを細かく、明確に描く辻村先生が本当に凄いということです。
自分にも嫌な記憶や孤独、寂しさ、憎らしさといった負の感情を持っていた子供時代があったなと思い出しました。
もしかしたら、誰にでも封じ込めた思い出ってあるのかもしれません。
奥深く、子供と大人について色々と考えさせられる作品でした。

ちなみに、物語は途中から予想外な方向へ話が進んでいきます。
白骨遺体は誰なのか、法子やミカはどのような結末を迎えるのか。
気になる人は「琥珀の夏」を読んでみてください。






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