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詐欺をテーマにした短編小説集「嘘つきジェンガ」

こんにちは、読書子です。
本日、紹介する本はこちら。
辻村深月著「嘘つきジェンガ」です。

2022年8月に発売された、辻村深月さんの新作小説です。
「詐欺」を題材に3つの話が収録されています。

では、それぞれの話のあらすじを簡単に紹介しましょう。

・2020年ロマンス詐欺
加賀耀太は春から東京の大学へ通うため、山形から上京。
しかし、コロナウイルスの影響で大学の入学式は延期、アルバイトもなかなか決まらず、憂鬱な日々をおくっていた。
ある日、地元の友人・甲斐斗からアルバイトを紹介される。
「メールを送るだけでの簡単なアルバイト」と言われ、始めるが・・

・五年目の受験詐欺
「私たち騙されていたんですよ。」物語は一本の電話から始まる。
数年前、風間多佳子は息子・大貴の成績が思うように伸びず悩んでいた。
そこへ、ママ友から受験生の親向けに開かれる「まさこ塾」を紹介される。まさこ先生の人柄と教育論に感動し、多佳子は塾へ通うように。
大貴の中学受験を控えたある日、多佳子はまさこ先生から100万円で事前受験を受けられるという話を聞き、夫に内緒で100万円払ってしまう。

あの人のサロン詐欺
紡は「有名漫画家谷嵜レオ創作オンラインサロン オフ会」を主宰している。始めは非公式のファンとの交流会であったが、彼らの熱い声に耳を傾けるうち、質問や創作講座を開催するようになる。
ただ、実は紬は漫画家・谷嵜レオではない。
谷嵜が覆面作家であるのを利用して、親やサロンの参加者を騙しているのだ。

どの話も面白く、あっという間に読破。
騙す側と騙される側。
自分もちょっとした出来心で、どちら側にもなる可能性があるなと思いました。

特に印象に残ったのが「2020年ロマンス詐欺」
主人公の加賀耀太は真面目な大学生です。
最初は軽い気持ちで引き受けたアルバイトでしたが、仕事を続けるうちに詐欺に加担していると気づきます。

その時の耀太の焦りや困惑した気持ちが上手く表現されていて、こちらもドキドキさせられました。

何とか仕事を辞めたいけど、怖いお兄さんに脅されてできない。
追い詰められ、揺れる心はまるでジェンガのよう。
そして、嘘に嘘を重ね続けた結果、ついに一線を越えてしまいます。

客観的にみると、引き返せる場面はいつでもありました。
でも、自分が彼の立場ならどうだろう?
冷静に判断できるだろうか?
もしかしたら、私も彼と同じ行動を取るかもしれない。

たまたま彼だっただけで、誰にでも起こりうる話だと思いました。
ただ、バッドエンドかと思いきや、予想外なラストを迎えます。
この結末には私もビックリ!
気になる方はご自身の目で確かめてください。

また、他の話も面白く、心理描写が丁寧に書かれているので、登場人物の気持ちに深く共感できます。
読書の秋にぜひ、読んでみてくださいね☆





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