シュートを打つ! 光嶋裕介 青木真兵 『つくる人になるために ー若き建築家と思想家の往復書簡』

この往復書簡に出合ったのは、2023年の夏頃。
大学での勉強や京都の暑さに疲れてしまい、「優しい」文章を求めていたときに、とある書店の告知を目にした。

第一印象は「装丁綺麗!」だった(やっぱり「物」としての本は大切!)。光嶋さんの文章にも、青木さんの文章にも触れたことがなかった自分にとっては、ある意味で「博打」での購入だった(今から振り返ればこの博打は大成功だった)。

期待に胸を膨らませ、往復書簡を1回目に読み終えると、頭の中は「?」でいっぱいになった。文章は優しいものの、話題が豊富なため、論理的な学術論文を読んできた自分には、良くいえば新鮮、悪く言えばあまり読んだことのないタイプの、散り散りな文章だった(すみません)。

少し時間を空け、光嶋さんや青木さんの他の著書やラジオ(オムラヂ)に触れてみた。そして、2回目に往復書簡を読んだ後の印象、「?〇〇〇?〇」。共感箇所は幾つか発見され、お二人の用語法も少し分かるようになってきた。でも、分からないところは分からない。それでもいいような気がしてきた。

そんな中2023年の秋頃、青木さんの自宅兼私設図書館である、ルチャ・リブロを訪問した。2024年2月に近所の古本屋(冒頭の「とある書店」)で青木さんをお招きしてイベントを開催することにしたので、その準備として。奈良県東吉野村は、人口が1600人ほどで、京都や大阪からのアクセスは決して良いとは言えない。しかし、その分、「アジール」としての場所性を大いに秘めているように思われた。

2024年2月12日、宇都宮市の書肆ひるねさんで行われた、光嶋さんと青木さんのトークイベントに参加した。めちゃくちゃ面白かった。オムラヂでお二人の掛け合いは耳にしていたものの、直接お会いし、お話しをさせてもらうと、伝わる情報量の多さに驚かされた。

前半のお二人のトークでは、一問十答が披露された(大谷石資料館に関するローカルトーク、予約したホテルのシングルベッド事件など)。後半の座談会では、参加者から「ベーシックインカム」、「自然」、「予測不可能性」、「仕事とお金」などについて質問が投げかけられ、盛んな議論が展開された。特に印象的だったのは、前後半のほとんど全ての内容が一貫しているような気がしたこと。自然の見方も、仕事と収入の関係も、漠然とした生きにくさも、全てが根底では繋がっているように感じた。

お二人の往復書簡は今なお継続中。第2弾が読者のもとに届く日を心待ちにしている。それまで、第1弾の往復書簡の読者たちは、受け取ったメッセージを糧に、各々自分なりのパスとシュートを繰り返していくことになるだろう。

光嶋裕介 青木真兵『つくる人になるために ー若き建築家と思想家の往復書簡』灯光舎、2023年。



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