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コーヒーブレイク21回目:国家公務員(キャリア官僚)のお仕事Part8(経産省の紹介)

長らく時間が経ってしまいました。
本シリーズは、以下の18回目から順に、外務省→総務省→財務省→経産省→警察庁の順で、霞ヶ関の5大省庁の紹介をしています。

今回は、経産産業省です。長いので、経産省と略します。

「経産省、事件」と検索すると、

●「性的暴行など7件 経産省の元職員に懲役10年の判決 東京地裁」
●「コロナ給付金詐欺 経産省元職員2人に 実刑と執行猶予付き判決」
●「経産省20代キャリア官僚「覚せい剤密輸」」

という結果が出てきます。

他方、経産省といえば、
●PayPayのキャッシュレスポイント
●原発再稼働
●熊本県のTSMC、北海道のラピダスなどの半導体工場設立

でも有名です。

霞が関にて、良い意味でも悪い意味でも世の中を騒がせている省庁の実態を記載したいと思います。

経産省の組織と機構

経産省は、本省と3つの庁からなります。3つの庁は、特許庁、資源エネルギー庁、中小企業庁です。

合計約8,000人の職員がいます。

経産省本省には4,559人がいます。特許庁には2,796人資源エネルギー庁には448人中小企業庁には198人います。

特許庁が、全職員8,000人の3分の1を占める巨大組織だとわかります。

以下が、経産省のHPに掲載されている組織図です。

本省には、大臣官房(724人)のほか6つの局があります。

主に国内担当の4つの局(経済産業政策局:207人、産業技術環境局:285人、製造産業局:308人、商務情報政策局:425人)

海外担当の2つの局(通商政策局:206人、貿易経済協力局:321人)があります。

通商政策局は海外を見ていて、経済産業政策局の中にある地域経済産業グループ(北海道経済産業局~沖縄総合事務所まで国内9つの地方局を所管していて、地域Gと呼ばれます)が、国内を見ています。

非常にわかりにくいですが、通商政策局以外の残りの5つの局は、すべて機能を有しています。

経産次官の経歴をみると、各局の格付け(ランキング)がわかりにくいことが、わかります。

飯田事務次官(現職)=資源エネルギー庁次長→大臣官房長→経済産業政策局長→次官

多田次官(1つ前)=製造産業局長→内閣府政策統括官→大臣官房長→次官

安藤次官(2つ前)=商務情報政策局長中小企業庁長官→次官

時代によって、重要な産業・政策が異なるため、次官といえど、どの局の局長を経験した後、次官になったという法則がないことがわかります。


6つの局と3つの庁

どの局や庁にどのようなツールがあるのか解説します。
※官僚の3大ツールは、法律、予算、税制

産業政策局=「官僚たちの夏」という小説の中でも、経済産業省の歴史は、国内統制派vs自由貿易派の闘いであったことがわかります。その、国内統制派の代表格が、産業政策局です。毎年、改正する産業競争力強化法や、法人税の改正など、産業政策ツールが多岐にわたります。法律、予算、税制をすべてに持ち合わせているオール・ラウンダーです。

●産業技術環境局=地球環境問題対策を担っています。環境省との対面になり、バチバチ火花を散らしています。排出権取引、COPといった国際会議の出席や、脱プラスチックなど、注目されるグリーンのテーマばかりです。環境のことを考える=いかにエネルギーを消費を削減するか、省エネをするかを考えることでもあるため、資源エネルギー庁と業務内容が似てきます。

製造産業局=国内製造業との付き合いがあります。自動車課、航空機武器宇宙産業課、金属課、産業機械課など、日本の製造業をすべて所管しています。各課の課長は、各メーカーの社長・副社長レベルと日々打合せをしています。

●商務情報政策局=国内のIT産業や半導体産業やサービス産業との付き合いがあります。クールジャパンも担当しています。PayPayのキャッシュレスポイントや熊本県のTSMC、北海道のラピダスなどの半導体工場設立など、最近は日本経済にインパクトを与える政策を実施しています。

貿易経済協力局=最近はやりの経済安全保障(経済安保)の政策を立案しています。今年中に「貿易経済安全保障局」に名前が変更になります。もともと、貿易管理部という部が、「外国為替及び外国貿易法(外為法)」を所管していて、直接投資や貿易の規制権限を有していました。名前の変更により、「経済安全保障」が前面に出ることになります。

通商政策局=経産省のなかの外務省的な存在です。全世界にあるJETROや、大使館(経済産業省から出向している経産アタッシェ:METI Attaché)と日々情報のやり取りをしています。
米州課、欧州課、アジア大洋州課など、全世界を地域別に見ている課が存在します。2国間FTAやTPPのような新しい貿易枠組み、最近ですとIPEF(Indo-Pacific Economic Framework)なんていう新しい枠組みも、この局から産まれました。歴史を振り返れば、APECを作ったのも、この局です。全世界を巻き込む、新しい枠組みを作ることに使命感を感じているのは、「官僚たちの夏」という小説の中の、国内統制派vs自由貿易派の闘いでいう、自由貿易派だからです。

3つの庁

3つの庁は、特許庁(2,796人)>資源エネルギー庁(448人)>中小企業庁(198人)で、規模が全く異なることがわかります。

特許庁=大量の特許審査官を要する最強の布陣。特許庁は、採用も独自でしているため、特許庁に採用されてから、経産省の一部であることに気づく人もいるらしいです。特許庁で、プロになり、定年退職後は、弁理士事務所に雇われて、特許出願の側のアドバイザーとして勤務が可能であり、経産省のなかでは、最もスペシャリストとして仕事をしています。

資源エネルギー庁=原発再稼働や、再エネ、省エネ、新エネ、水素など、電力の関する政策を一手に担っています。第一次エネルギーショック後の1973年に設立され、エネルギー政策により、東京電力、関西電力などの電力会社の経営方針が決まるといっても過言ではないです。

中小企業庁=日本の全企業の99%以上の中小企業の政策を担っている。IT導入補助金、生産性向上促進補助金など大量の補助金の政策立案をおこなっています。コロナ禍の時の、持続化給付金も中小企業庁によるものであり、経産省に赤い銀行から中途で入省した2人のキャリア官僚の不正受給(1500万円以上を詐取)で有名になりました!

最近の経産省の事情

雑誌の週間ダイヤモンド2023年11月25日号に、経産省の記事があったので、引用します。

 日本の産業政策を牛耳り、半導体産業の復活のために数兆円規模の補助金をばらまくなど、政府内での存在感を高めている経済産業省は、霞ヶ関の”花形”省庁だ。
 経産官僚は従来、財務省や外務省に劣らないほど優秀とされてきた。だが、近年、異変が起きている。「若手は他省庁より”山っ気”があるため、頑張っても報われない役所に見切りを付け、コンサルに転職するケースが多い」(経産省関係者)のだ。

(中略)

 若者の公務員離れが進む中で、経産省は人材を確保するため、早ければ入省5~6年目で課長補佐に抜てきしたり、他省庁より報酬(超過勤務手当や出世が早いことによる役職手当など)を支払ったりしているが、人材の流出を止めるに至っていない。

できる人に仕事集中 残業時間は財務省の1.9倍

 経産省の仕事のやり方を一口で言えば、「できる人には権限を与え、目いっぱい働いてもらう」(別の経産省関係者)というものだ。
 実際、職員は残業に明け暮れている。経産省の残業時間は月平均61時間と、財務省の1.9倍に上る。
 ノンキャリアを含めた職員の残業時間が平均61時間に上ることを踏まえれば、仕事が集中する優秀なキャリア官僚がどれだけ働いているかは推して知るべしである。
 管理職に抜てきされるのが早いことも経産省の特徴だ。以下図の通り、室長になるのは他省より5~6年早く、出世レースのトップを走るエース級が課長に昇格する年次は他省より2~4年早い

 年収は、課長で1200万円~1400万年、部長で1600万円超に上るというが、大企業の部課長と比べて決して恵まれているとはいえない。
 政府は国家公務員の初任給を1万円増やすことなどを決めたが、この程度の賃上げでは焼け石に水である。
 さらなる待遇改善はもとより、やりがいを感じられるような働き方改革が不可欠だ。無理な要求をする国会議員への対応などで深夜まで働く”ブラック職場”を変えられなければ、若手が民間に転職する流れは止まらないだろう。
 国家公務員の仕事のモチベーションという観点では、60代についても不安要素がある。
 今年度から国家公務員の定年が段階的に60歳から65歳に延長されることに伴い、役職定年制が導入された。基本給は60歳になってから最初に迎える4月1日以降、3割減る。管理職や役職から外れる
 この基本給の減少率は企業と大きくは変わらない。だが、仕事のやりがいはポジションによって大きな格差が出てきそうだ。専門知識を生かして活躍するシニア官僚がいる一方、「分析官」などといった立派そうな肩書を与えられているものの、任されている仕事や権限が少なく、組織の”お荷物”になっている人も少なくないのだ。
 なお、事務次官や局長ら幹部は役職定年して職員を続けるのではなく、従来通り企業や団体に”天下り”するとみられる。
 政策立案能力を省庁に頼ってきた自民党は当然、経産省をはじめとした省庁からの人材流出に危機感を募らせている。同党は6月、国家公務員の給与体系の見直しや、国会議員へのレクを対面からウェブ会議に移行することを求める提言書を岸田文雄首相に手渡した。

以上のとおり、最近の経産省は、人材流出が相次いでいます。

もともと、経産省に入省する人は、霞が関の国家公務員志望というよりは、コンサルや総合商社と迷って、まずは経産省で働き始めたという人が多いようです。そのため、策を講じないと、人材流出が相次ぐのは、自然の流れという気がします。

以上、簡単ですが、経産省の紹介でした♪

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