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【書評/音声コンテンツstand.fm】子育て×読書 第11回 SINGLE TASK ブライアン・トレーシー著

暑い日が続いておりますが、みなさま如何お過ごしでしょうか?コロナウィルスに合わせて熱中症にも気をつけたい時期ですね。

今回もstandfmの第11回で収録しました、SINGLE TASKの音声コンテンツの内容+様々な書籍を日々乱読しておりますので、肉付けをして記事を書いて行こうと思います。

【standfm/第11回収録内容はこちら↓】

◯TASKとは?

TASKU(タスク)・・・マルチタスクで日々忙しいビジネス・パーソンも多い事と思います。一方で今回のタイトルはSINGLE TASKです。シングルです。マルチタスクとシングルタスクの間にはどんな関係性があるのでしょうか?非常に興味深い事が分かってきました。

副題に一点集中主義と書いてあります。。。一点に集中?シングルタスクの原則ですべての成果が最大になる・・・とも書いてあり、たしかに一つの事にリソースを投下した方が成果を最大化することも可能なのかもしれませんが、多忙な?ビジネス・パーソンにとってタスクが1点のみという事は考えにくいですよね。

恐らくほとんどの方がマルチタスクの中で何とか立ち振舞っているのだと思います。私もシングルではないんですが、この書籍を読んで、スティーブ・ジョブズの考え方を改めて実践しようと思います。

「何をやるのかを考える事と、何をやらないかを決める事は同じくらい重要だ」

という考え方ですね。これは読書でも日々実践しているのですが、何を読むのかと同じくらい、何を読まないかを考える事が重要だと思っています。

スタンスをはっきり決めてから、ファクトを丁寧に洗い出すイメージです。

東大読書の西岡壱成さんの東大読書で語られている仮説読み、記者読みは大変有効な読書のお作法です。個人的には本を購入してからすぐに読まずに、書棚に並べて眺めて見たり、隣の本との関係性を想像したり、装丁に書いてあることから、「この書籍の中には何が書かれているのか?」或いは「この書籍は私に何を言おうとしているのか?」などの問を立てて読むようにしています。

◯シングルタスクの原則

この書籍の特徴でもありますが、章ごとに神話と現実が書かれています。当然、神話ですから、人々にそうだと信じられて来られたパラダイムという事になりますし、一方で現実は神話を破壊するような内容、アンコンシャス・バイアスを外すような考え方、フレームだったりを我々に教えてくれています。

ジャック・ウェルチの言葉ですが、「シンプルかつ明確であることは想像以上にむずかしい。人は単純に思われるのを嫌がるものだが、シンプルを貫く人こそ本物である」という言葉を添えてますね。

このシンプルという状態は何をやるべきで、同時に何をやらないかを自身で線引き出来ている状態です。また、スティーブ・ジョブズも同様の事を語っておりますし、スタンスを決める事は大切ですね。

つまりやらないと決めた事は捨象しているということで、やるべき事のみが残っている状態だと個人的には考えております。捨象は非常に重要な概念だと思います。

選択と集中という言葉は有名ですが、選択したものに集中するのは当たり前なんですね。そうでは無くて、選択と捨象をする事で、本当に取り組むべきことにコミットする事になるので、捨象をすることは一つ、自分のやるべき事を明確化する意味でも大切です。

ただ捨象によって大事な部分も削ぎ落とされる可能性も高いのでよくよくファクト認識しておくことも忘れない様にしたいですよね。

◯マルチタスクを封印せよ?

マルチタスクを封印する・・・どういうことでしょうか?タスクを放棄するということでしょうか?


エピクテトスの言葉ですが、「自律できぬ者に自由なし」

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エピクテトスとは・・・古代ギリシャのストア派の哲学者です。この人はもと奴隷ですが・・・ローマ皇帝ネロの解放奴隷のエパプロディートスに売られたようですが・・・哲学を学ぶことを許されたエピクテトスは当時有名な哲学者であった、ムソニウス・ルーフスの元でお勉強をしたんだそうです・・・エピクテトスが開いた哲学の学校には皇帝ハドリアヌス帝も訪れたほどの有名校だったみたいですね・・・

苦難の中でも平静を保つことや、人類の平等を説いたとされておりますが、その教えは・・・皇帝マルクス・アウレリウスにも思想が引き継がれてそうです・・・偉大な哲学者なんですね・・・


マルチタスクについては神話でも当然の様に、できるという文脈で語られていますが、一方で本書のスタンスはマルチタスクを封印し、同時進行を止めよと書かれています。神経学的にも不可能だということが科学的に分かってきているようです。

ただ、ここでアンチテーゼを投げ込んで置こうと思いますが、私も日々、様々な書籍を乱読しており気になるイシューでもあるのですが・・・

なぜ・・・科学的に正しいとされていることが正とされるのか?とい問いが浮かぶ訳です。そもそも正しいとはどんな態度なのか?

ここは非常に抽象度の高い問いでもあるので、ノンバイナリーな問いのセグメントに入ると思いますが、しかしながらテーゼに対してのアンチテーゼを考えておくことで更に、自分自身の解釈としてのジンテーゼを持って置くこともこれからのVUCA時代では・・・一人称で言い切るという場面がどんどん多くなってくるので、必要な思考でもあると思っております。

◯脳は一度に複数のことに注意を向けられない

マルチタスクは状況を改善するどころか、問題を悪化させるということが語られております。それは脳の機能として複数のことに注意を向けられないということなんですね・・・

理由は、マルチタスクは情報の流れを遮断する⇒短期記憶へ分断され⇒短期記憶に取り込まれなかったデータは長期記憶として保存されずに、記憶から抜け落ちていく・・・というのがロジックのようです。

保存されずに、記憶から抜け落ちる!!さらにマルチタスクを試みれば試みるほど・・・能率が落ちるということが分かっています。

これは結構問題ですよね。さらに能率が悪くなり自制心まで失う。それでも我々はマルチタスクをしているような「ふり」をしている。

著者は何度もマルチタスクは見せかけだと主張していますね。結局、自分でそう思い込んでいる(バイアス)だけで本当のところはどうなのでしょうか。

個人的なビジネスの文脈に当てはめても確かに、いくつかのタスクを同時進行で進めて行かなければなりませんが、優先順位を重要度や緊急度などの軸で考えると結局は1つ2つ程度にタスクが絞れたりするんですよね。この場合のタスクは本当に今の自分のリソースを最大限割くべきタスクという意味です。

◯エネルギー×集中力とは?

1点集中のシングルタスクを続けるとゾーンの状態に入るということです。

ゾーンとは・・・集中力が極限まで高まって、他の思考や感情、周囲の風景や音などが意識から消えて、感覚が研ぎすまされ、活動に完璧に没頭している特殊な意識状態の事を指すそうです。

強いエネルギー×鋭い集中力=充実感/高い生産性/確実な成果

シングルタスクだとリソースを一挙に集中できるというメリットがありますね。他に分散しない分、熱量が半端じゃないというか。もうゾーンという言葉も出て来るくらい・・・チクセントミハイのフローも同様の状態だと思いますが、没入・・・没頭・・・我を忘れる・・・という状態。

そしてこの様に没入するポイントが1つ書かれていました。それは・・・

「過去の出来事についてくよくよと後悔するな!」という事です。

これは安宅和人さんも仰ってますが・・・考えると悩むの違いなのかと思います。。。

・考えるとは?
答えがある事を前提に建設的な議論をしていく、ポジティブなマインドセット(しなやかマインドセット)

・悩むとは?
答えがない事を前提にただ苦悩する行為またはネガティブなマインドセット(硬直マインドセット)

マインドセットについては先日、standfmで収録しましたので、ぜひ、ご視聴下さい。

【standfm/マインドセット やれば出来るの研究】

もう科学的にしなやかマインドセットの方の方がパフォーマンスが高くなってくることが証明されているんですね・・・

ただ、個人的には必ず、次の問には向き合うようにしています。

科学的に正しい事がなぜ、正しいと言えるのか?です。

この問に向き合うことで、少し脳内に余白は作り出せると思います。正しいという状態はそもそもどんな状態なんだ?とか正しいことが何故、良いことだとされているのか?などなど。

◯ユングが表現した「神の平和」とは?

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ユング・・・って誰っ?て方もいらっしゃると思いますので・・・

・カール・グスタフ・ユング(1875-1961年)、分析心理学で有名ですよね。善と悪、神と人間の思索にずっと耽っておられたお方です。フロイトとの親交もあります。ユングは神話研究に没頭していき、フロイトとは徐々に同じ言語ゲームを共有できない仲になり、離れていきます。

ただフロイトから離れた後は幻覚を見るようになったということで精神を病んでしまったんですね。ご興味ある方はお調べ頂ければと思いますが、フロイト以外にもアドラーについても言及するなど、改めて歴史や人類史勉強していると、そこに介在している人間がいるので、人間の不合理性を理解する為に心理学やさらに人間が人間を深く考えるための哲学も出てくるし、当然ですが、神の存在もちらちら出て来るので宗教も勉強する。という事で一つの領域が複数の領域と関係があるため、領域越境型の知見が必要になってくるんですね。

※この領域横断の考え方については、前回のnote↓に書きましたので、ご興味あれば御一読ください(人間横断/分野横断/地理横断/時間横断)。

【standfm/102回/103回収録/21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由↓】


またバウンダリー・スパナーという言葉もありますね。境界の連結者とか越境人材の事を指す訳ですが・・・異なるコミュニティ間、組織間、プロジェクト間の結節点にいる人のことを言う希少人材ですよね。

【note/第8回~第10回 独学の技法↓】

話がそれていきましたが・・・このユングさんが興味深い事を書籍の中で書いています。

1925年にアフリカを訪れた時に下記の様に記しているんですね・・・

(同行者の私は)アフリカなる世界を経験する幸運に恵まれた。我々のキャンプの生活は、私の生涯もっとも素晴らしい時の一つとなった。私はなお原始時代にある国の「神の平和」を享受した・・・

ここに神の平和という言葉が出てきます。さらに、さらに・・・

私と、すべての悪魔の母であるヨーロッパとの間には、幾千マイルもの距たりがあった。悪魔はここにいる私にまで手を伸ばすことができないのであって、電報も電話も、手紙も訪問客もなかった。私の開放された精神力は喜び勇んで原始世界の広がりへと逆流した・・・」

どうでしょうかこの文章・・・非常に刺さります。多忙なユングの精神は解放されたんですね。我々はテクノロジーの恩恵を常に受けておりますが、一歩でスマホに代表されるでデバイスの奴隷でもあると言えます。

改のてこの様な文章を読むと、チャールズ・ダーウィンもそうですが、ガラパゴス諸島に旅に出ていましたが・・・旅が人を変えるということを深く感じますね。パラダイムが旅から帰ったあとで大きく変化している偉人もたくさんいますしね。

そして大事なのは自分のデバイスをコントロール化に置くことよりも、セルフ・コントロールにリソースを割いて考えるべきだと思います。

どのように集中するのか?何をして、何をしないのか?など。

◯マルチタスクに陥ると脳機能が落ちる!?

ここはしっかり書いておいた方が良いと思いますが、マルチタスクをこなしていると、仕事やってる感はたしかにあります。これは自己欺瞞の様な気も致しますが、実はマルチタスクを試みていると情報処理能力(脳の)が低下してコルチゾール(ストレスホルモン)が分泌されるという事が脳内で起きているんですね・・・

マルチタスク状態(優先順位がつけることができない複数の要求)・・・競い合うように押し寄せる多数の刺激に身をさらしていると、脳が縮む!!

脳が萎縮するなんてことがあるんですね。我々、脳に乗っ取られている側面がありますが、司令塔である脳が萎縮するなんとことは緊急事態宣言な訳ですよね。自分自身で危ない状態へ落ちて行っている感覚が何となくありますね。

脳みその画像を付けておきましたが、この赤い部分・・・前頭前野は過剰なストレスに常にさらされると、縮んでしまう。扁桃体も萎縮し、恐怖、攻撃、不安といったネガティブな感情が脳に氾濫する⇒脳の灰白質が縮み認知機能がうまく働かなくなる・・・

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これ読んで頂いただけで・・・かなりやばいことが分かりますよね。ストレスが生じると脳のニューロン(神経細胞)が萎縮して問題を解決させたり、感情を調整したり、逆境に負けずに立ち上がったり、衝動をコントロールする能力が低下する。。。

では・・・この状態にならないようにするにはどうしたら良いのでしょうか?

◯フロー状態に入るとは?

フロー状態という言葉を聞いた事があるかもしれませんが・・・心理学者のチクセントミハイ↓が提唱した概念です。没入、没頭することである作業に完全に集中状態に入り、その結果シングルタスクとなり、脳が萎縮するどころかむしろ楽しんで作業をしている事を言います。集中することで普段よりずっと生産性の高いパフォーマンスを発揮するんだそうです。

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【フロー状態から得られる果実】
・エネルギーが増して、幸福になり、安心感を覚える
・積極的になって、良質なユーモアを発揮出来るようになる
・充実感、達成感を味わえる

まさに、しなやかマインドセットに共通するような・・・悟りの境地と言いますか・・・すごい効果があることが分かりますよね。

【standfm/第104回 マインドセット収録】
ご興味あれば、マインドセットについて語っておりますので、是非、ご視聴下さい。

◯スマートフォンを分離せよ!

これは私も刺さる内容でしたが・・四六時中スマホを手から離せないなんて人も多いのではないでしょうか!?情報の洪水の中でフィルターバブルの様な問題も起きていますが、情報を自分自身の判断軸や尺度で取捨選択出来ていますか?という問いは常に持ち続けています。

著者はスマホを物理的に話すこと、就寝前には当然、スマホは使わない、スマホからの距離が遠ければ遠いほど良いと。デフォルト・モード・ネットワークの様に脳は常に消耗する訳ですから、何となくスマホを手に取るなどの行為は極力避けています。明確な目的があれば手にとるようにしています。

これを著者は邪魔者の侵入を防ぐフェンスというメタフェーで書いています。誘惑との距離を取れば取るほど、我々の意思の力を保つことが出来るということですね。

◯聴くと聞くとは?

唐突ですが。。。聴くと聞くの違いをうまく説明できる方・・・ってどれくらいいらっしゃるのでしょうか??

・聴く:相手への敬意があり、信頼関係を気づこうとする意志がある
※本気で相手の話を聴くのであれば、エネルギーが必要であり、真摯さが必要不可欠です。

・聞く:相手の話に耳を傾けて内容を聞き取ろうとする行為
※そこには相手への敬意が含まれる場合とそうではない場合がありケース・バイ・ケースでもある。

この違いは大きいと思います。やはり相手を一人の人間としてありのまま聴く・・・箱に入った状態では決して相手と心が通じている状態にはなりませんよね。相手へ思いを馳せること、相手への想像力を働かせる・・・難しいと思うし、すぐには出来ないスキルだと思いますが、スキルである以上、努力次第で習得が可能だと思われます。

◯自分を疲弊させる事で、安心感を得ているとは?

興味深い内容が出てまいりました・・・これは一体どういうことなのでしょうか?我々は一定の時間内でそれほど多くの作業をこなせるはずがない・・・にも関わらず、ついあれこれ手を出してしまっている・・・

現代文化にはより多くのものごとをこなすことを重視する風潮がある。
奇妙にも人は自分を疲弊させて、すり減らすことで、自分は重要な人物である!という認識を持とうとしている。

多忙であることと、自分は重要な人物であるという認識は、強い相関関係にあるとは、作家のローラ・ヴァンダーカムの指摘ではありますが、非常に鋭い洞察だと言えます。

これはつまり、多忙であることを周囲にアピールするある種の不幸自慢の様なネガティブな思考であり、他者より多忙で大変な状態にあるという1点のみで他社より上に立とうとする、優劣コンプレックではないでしょうか?個人的にはそんな所にリソースを割いても無駄だと思いますので、自身が出来る貢献は何なのか?に思考のリソースを割くべきだと感じます。

◯バイタル・フューの法則とは?

何やら聞き慣れない法則名が出てきました。下記がバイタル・フューの説明ですが。。。

「バイタル・フュー」とは「Juran's Quality Handbook」の著者であるジョゼフ・ジェランが提唱した「バイタル・フューの法則」からきています。 「質の高い仕事をする鍵は、「些末な多数」(トリビアル・メニ―)と「ごくわずかな重要なもの」(バイタル・フュー)を区別することにある。」 というものらしいです。

ジョセフ・ジュランはバタイユ・フューの法則として重要なものは何一つないと説明していますね。

ビジネスの文脈に置き換えるなら、重要なタスクとそうでないタスクを自身の判断軸や尺度で区別出来るかが鍵だと思います。

ここまで長々とお付き合いありがとうございました。最後に余白のお話です。余白を意図的にあけることで、自身の心に余裕が生まれることは間違いないですね。この余裕の部分に何をやって、何をやらないか?を事前に決めておいても良いのかもしれませんね。

また、日々、様々な書籍を乱読しているので分かるのですが、チクセントミハイは様々な書籍でフローという概念の提唱者として紹介されております。ここから何が言えるのかというと・・・古典・原典にあらためて当たるべきだと感じます。これは読書術になるので、詳しくは下記の「読書の効用」を御一読頂ければと思いますが・・・

【note/読書の効用】

古典・原典にあたることで、著者と同じ思考を回すことに繋がりを感じることも出来ますし、いきなり古典・原典が厳しいよ?っと書いてありますが。。。もう少し休んだら出発致します~

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