見出し画像

想像を超えて壊れているけど思った以上に強い米国-ミニ読書感想「最悪の予感」

マイケル・ルイスさん「最悪の予感」を読んだ。ルイス節と言える圧倒的なストーリーテリング。しかも題材は、目下進行中の米国の新型コロナウイルス対策ときてるので、面白くないはずがない。引き込まれた。


本書の内容には二重に驚かされる。一つは、CDCを筆頭に「優秀」なイメージのある米国の感染症対策が、これほどまでに脆弱で、機能不全で、壊滅的なのだという驚き。にもかかわらず、民間や個人の活躍である程度はリカバリーできてしまうという「強さ」に対する驚きだ。

たとえば、米国でソーシャルディスタンスの有効性を立証したのはある研究者と少女の自由研究的な探究だった。あるいは、迅速にコロナウイルスを発見できる簡易鑑定を生み出したのは非・感染症専門家の学者だった。

そうした技術を州政府、連邦政府が一気に活用するほどアメリカンドリームではない。むしろCDCの前例主義や官僚主義は日本のそれを凌ぐようにも映る。

読み終えた後には、米国を美化するのは違うなと思える。一方で米国にあるような柔軟な個のネットワークは日本ではなかなかないようにも感じて、取り入れたい、真似していきたいと思える。

こうした驚きを、飽きさせることなく語っていくルイス・ノンフィクション。「フラッシュ・ボーイズ」や「マネー・ボール」と同様に、めくり始めたページはなかなか止まらない。

先進的に見える米国の印象がガラリと変わる。しかしながら米国の懐の深さも改めて実感できる。そんな体験が出来る本というのはとても貴重だ。

この記事が参加している募集

読書感想文

万が一いただけたサポートは、本や本屋さんの収益に回るように活用したいと思います。