毒親の挫折経験

そんなにチェロが好きなんだったら子どもにやらせようとしないでお前がやれば?と思う方もいらっしゃるかもしれない

それは正論😂

私は小学校1年のときに親に頼んでピアノを習わせてもらった。私の親は真性の毒親ゆえ私の幸せなど考えたことなどないので、私は自分のやりたいこととか全部自分で決めなければならない人生だった。このときもピアノが弾けるようになりたいと思ったのは自分の自由意志だったが、なぜそのような欲望が出てきたのかは全く思い出せない

近所にピアノの先生がいたので、レッスンには通わせてもらった。私の実家があるところは田舎で自営業者が多く、父も会社経営をしていて、私がピアノのレッスンに通えることになったのは私のためというよりも自分が近所の人に恩を売って狭い世間の評判をよくするためだった

私はピアノのレッスンには通わせてもらったが、ピアノは買ってもらえなかった。父が粗大ゴミ置き場から昔の「オルガン」を持ってきて、それが私に与えられた。見た目も悪ければ電気のスイッチを入れるとモーモーとモーター音がうるさく、ピアノの音とは程遠いもので、私はとてもがっかりし、こんなもので練習するのかと思うと恥ずかしくもあった

我が家では長男の兄はなんでも新品を買ってもらっていたが、私は親に何かを買ってもらって嬉しかったという記憶がほとんどない。ピアノ(というより「オルガン」)もそうだったけれど、小学校に上がって同級生が自転車を買ってもらっていたときも、自分には粗大ゴミ置き場から持ってきたものを与えられた。父は家族で自分だけが贅沢をするのが当たり前と思っていた人で、母は長男の兄を溺愛しなんでも買い与えた。私はゴミ捨て場にあるようなもので間に合わせてちょうどいい程度の存在であり、毒親には抵抗力のない子どもの自尊心を徹底的に傷つけて憂さ晴らしのために便利な存在であったことは間違いない

それでも私はピアノはけっこうすぐに要領がわかってきて、あっという間に子どものバイエルの上巻を終わらせた。最初のレッスンで「鍵盤ではこれがドです、楽譜ではこれね」と言われたときに、なんか全部わかったような気がし、以降はなんでも一度言われればすぐにわかった。両手で違うことをして弾くということも難しいと思うことなど一度もなかった

そして私は大勘違いをすることになる。私はピアノを弾けるようになったのだと。練習はしなくなり、レッスンでは毎回初見で弾いた。全く練習していないことは先生にはお見通しであっただろう。自分では間違えずに弾けたと思ったから心中でドヤ顔をしていても先生はいつも不満そうだった。先生に誉められないのでレッスンがつまらなくなった

普通の子どもは練習しろと言われなければ練習しないし、つまらないと思ったらさっさとやめたいものだ。それをサポートするのが親だが、私の場合はやめるのも勝手だったのでピアノを始めて1年以内にレッスンに行かなくなり、それっきりになってしまった

20代のときにそういえば私はピアノが弾けたと思い出して弾こうとしたら全然弾けなくなっていた😂

30代半ばで職場の同僚に音楽をやる人がけっこういて楽しそうでかっこいいと思ったので、自分もなにか楽器を弾けるようになりたいと思って再挑戦した。このときは自分なりにかなり練習したが、楽譜を見ればあまり考えなくても弾けるという昔のあの感覚は戻ってこなかった。自分は音楽は得意なほうだ(小学校の音楽では5段階評価の5しかとったことがなかった)と思っていたけれど全然ダメなんだと気づいて、まずは合唱から始めて調子が少し出てきたら次にヴァイオリンを始めた。どうせならなんか難しそうなことを始めようと思った。翌年に借り物のヴィオラを弾いた瞬間にその音に魅了され、その場でヴィオラに転向した

40代初頭で学習児を授かり高齢出産し、自分の音楽活動は学習児が5歳くらいになるまで、全くやる余裕がなかった。学習児には自分の失敗を繰り返してほしくなくて、勝手な期待をかけることとなった

学習児にチェロをやらせる計画は不発に終わっても、ダブルベースでは児童オーケストラには問題なく参加できるくらいに上達した

そんなときに2020年のコロナにより、某国では長期間にわたるロックダウンが施行され、ほとんどの人が自宅勤務、学童は100%オンライン授業、音楽教育はオンラインで繋ぎ止めてはいたが、アンサンブルやオーケストラには多大なる被害を被った

ロックダウン中は必要最小限の買い物とちょっとした散歩でしか外出することができなくて、家の中が煮詰まってきた。そんなときに1/2サイズのチェロを借りられることになった。学習児は興味を示さなかったが、私がやってみようと思ったのだ

ところが、ヴィオラ弾きにはチェロはすんなり弾けない。ヴィオラもチェロも弦はCGDAなのにフィンガリングが違うのだ。私には頭が追いつかず無理で、このときに世界で一番好きな楽器が自分には弾けないことにショックを受けた

今は学習児のダブルベースをサポートするためにヴィオラを一時お休みして自分もダブルベースを学んでいる

追記: 2024年になって学習児はダブルベースをやめてチェロをやることにしました。私はダブルベースを続けています

ダブルベースはチェロと似ているように見えるが全く別の楽器である。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのヴァイオリン族は5度調弦だが、ダブルベースは4度調弦でそもそもヴァイオリン族ですらない。旋律を弾くよりはコード進行を意識してポジション移動をこまめにやるとか、ヴァイオリン族の楽器と比べるとつまびくこと (pizz) が多く、つまびく音も圧倒的に存在感があって音質が味わい深いのはギターに似ている

ヴィオラとは違う楽器として頭の切り替えができやすいので、これはイケると思い、ダブルベースの音に痺れ、これをオーケストラで弾ける学習児は羨ましいとすら思うのであった

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