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【ミクロ-19:不動産鑑定士試験のための経済学】 逆選択(アドバース・セレクション) をわかりやすく(ミクロその他)


1. 情報と市場

1.1. 情報が対照的な市場

情報が対照的な市場とは、全ての参加者が同じ情報を持っている市場のことを指します。このような市場では、商品やサービスの質が明確にわかるため、取引は透明性があり、市場効率も高いと言えます。質の違いが明確になっているため、質の良い商品と質の悪い商品は異なる価格で取引されます。
具体的には、質の良い商品はそれに見合った高い価格で、質の悪い商品はそれに見合った低い価格で取引されることが期待されます。質の良い商品と質の悪い商品が異なる価格で取引されることにより、双方の商品が共存することができ、市場の健全性が保たれます。

1.2. 情報が非対称な市場(レモン市場)

市場は、買い手と売り手が商品やサービスに関する情報を共有し、取引を行う場所です。しかし、すべての市場が完全な情報を持っているわけではありません。情報が非対称な市場とは、一方の参加者が他方よりも多くの情報を持っている市場のことを指します。例えば、中古車市場では、売り手が車の状態に関する詳しい情報を持っているのに対し、買い手はその情報を持っていないことがよくあります。
このような非対称情報の市場で問題となるのは、質の良い商品と質の悪い商品が混在している場合です。質の悪い商品を「レモン」と呼ぶことから、このような市場を「レモン市場」とも呼びます。レモン市場では、買い手が商品の真の価値を正確に知ることが難しいため、市場の効率が損なわれることがあります。

2. 逆選択が発生する理由

逆選択は、情報非対称性が原因で発生する経済的な問題の一つです。考え方としては、質の良い商品と質の悪い商品が存在する市場で、買い手が両方の商品の質を区別できない場合、質の良い商品の最低売却価格が、質の悪い商品の最高購入価格よりも高くなる可能性があります。
この場合、買い手は質の良い商品の真の価値を認識できず、適正な価格を提示できないため、質の良い商品は市場から姿を消してしまいます。これが逆選択の発生する原因です。結果として、市場には質の悪い商品(レモン)しか残らず、市場の質全体が低下してしまう可能性があります。

3. 逆選択の解決方法

3.1. シグナリング

シグナリングとは、情報非対称性の下で、質の高い商品やサービスを提供する側が、その質を示すために何らかの信号を発することを指します。この信号は、買い手に対して商品やサービスの高い質を保証するもので、真似の難しい行動やコストを伴うことが多いです。
例えば、中古車市場の場合の、保証サービスはシグナリングの一例です。売り手が商品の質に自信を持っていることを示すために、無償の保証を提供することで、買い手の不安を軽減することができます。

3.2. スクリーニング

スクリーニングとは、質の不明確な商品やサービスを選択する際に、買い手が情報非対称性を解消するための行動をとることを指します。買い手は、自らが情報を収集・確認することで、売り手から提供される情報のみに頼らず、商品やサービスの真の価値を把握します。
例えば、自動車保険会社が新しい顧客を獲得する際、その顧客の過去の事故歴を調査します。保険会社は、高いが補償の手厚いプラン、安いが補償の少ないプランを提示して、顧客にプランを選択させます。自動車保険会社はスクリーニングを行い、各顧客の事故を起こすリスクを正確に評価し、適切な保険プランを提供します。

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