見出し画像

兄弟をまた繋いだのは父が残した一挺のバイオリンだった 【茨の木】

兄弟の心を繋ぎとめたのは
父が残した一挺のバイオリンだった

茨の木_読書記録カード

【本の基本情報】
〇ジャンル:小説・日本文学
〇本の種類:文庫本
〇著者名:さだまさし
〇出版社:幻冬舎文庫

■「茨の木」を読んで

本書は、歌手のさだまさしさんが書いた小説です。
さだまさしさんが書かれた小説を読むのはコレで2冊目です。

さだまさしさんの本は、インスタグラムのフォロワーさんが感想をアップされているのを読んで、読んでみたくなった小説です。
歌手であるさだまさしさんの独特の表現が小説にも見られ、小説の中に現れる背景が綺麗で繊細、そして登場する自分はとても人間的で、読んでいるとその世界に引き込まれてしまいます。

初めて読んだ「眉山」に続き、本作品もさだまさしさんの独特の表現がされている小説で、その世界に引き込まれて読み終えました。

■家族・兄弟の日常と遠い国との繋がり!

家族で揃うと、どうしてもぶつかってしまう父親と兄弟。
素直になれない口下手な関係が、弟を家から離れさせてしまいます。

しかし、これはどこの家族でも見られる光景。
そんな日本の家族の日常、そんな中で兄弟を残して、父親が旅立ってしまいます。

父親に対して素直になれなかった弟は、様々な思いを胸に、一人暮らしていました。
そこに届いた一挺のバイオリン
それは父が弾いていたバイオリンでした。

送り主は実家を継いでいる兄。

弟は、何故かそのバイオリンのルーツを知りたくなります。
そしてそのバイオリンのルーツを探るために、遠い外国へと旅に出ます。

行き着いたその先で、弟は様々な人たちに出会い、その優しさに触れます。
遠い異国の地で経験する人々の言葉、悲しみ、優しさ、温かさ、その生き方に、日本にいる家族、兄のことを思い始めます。

父が残したバイオリンが導いた遠い異国の地で思うのは、日本にいる普通の家族。
異国の地と日本の家族、父が残したバイオリンが魅せる家族の絆とは、そして弟が最後に思うその気持ちに心打たれます。

■「茨の木」を読んで!まとめ

本書は、さだまさしさんらしい表現が素敵な作品です。

背景となる生活感のある家族の風景や、旅先である異国の地の表現、そして何より人間たちの感情やつながり、言葉の表現がとても素晴らしいです。

父が残したバイオリンのルーツを探りながら、人と人のつながりや家族のあたたかさが表現されていく。
驚くようなどんでん返しがある作品というよりも、家族や人間の生き方、つながりなど、人間的な部分を実に深く考えさせてくれる作品です。

心にゆっくりとジンと伝わってくる優しさ、温かさ、読んでいて思わず優しい気持ちになったり、じわっと涙が溢れてきたり
さだまさしさんの歌の歌詞からも分かるように、「人」が持つ優しさの部分がとても伝わる作品でした。

家族の中で、時にはぶつかったり喧嘩したりします。
でも、最後にはその家族の絆を自ら知ることになります。
その絆は幼かったあの頃からずっと変わっていない、ただ忘れていただけ、そんな家族の絆を思い出させてくれたのは、父が残したバイオリン。

父は残した兄弟に何を伝えたかったのか、そのバイオリンを弟に送った兄は何を伝えたかったのか
口下手な男たちが様々な思いですれ違いながら、やがてその本当の思いに気付いていきます。

その思いに気付いたとき、弟の口からこぼれた言葉。
涙がジンとあふれ出す、優しい気持ちに包まれるエンディングでした。

家族のあたたかさ、兄弟の優しさに触れたい時におススメの1冊です。

茨の木_記事TOP


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?