昇進し精進するおっさんの話

産後クライシスイマジネーション

奥さんの気遣い、という皮を被って自己保身のために昇進の相談を奥さんにしました。
詳しくは下記。


最初の記事はこちら。

昇進、そして邁進

そして僕は、昇進した。
出産予定日の3か月程前だった。
昇進してまず最初に変わったのは、勤務時間だった。
これまで僕はホテルのいわゆる遅番と呼ばれるシフトで働いてきた。
昼の12時ごろに出社し、定時が21時。定時で帰れることは月に数回で、大体は22時から23時頃に退社、家にたどり着くのは日付が変わる頃。

それが朝9時頃に出勤するようになった。
別に決まっているわけではない。何時に出勤しても良いので、これまで通り12時頃に出勤しても良い。
しかし、出発ゲストのお見送りもするし、金額のトラブルなど、午前中に支配人判断が必要なケースもある。また、早番スタッフとのコミュニケーションも取りにくくなり、組織状態を管理しにくくなる。
支配人になると外部の取引先との話し合いなども発生するので、そういった面からも、多くの支配人が9時前後に出勤するようにしており、僕もそれに倣った。

帰宅の時間も、支配人は自由だ。
極端な話、毎日定時で帰ることも許されている。しかしというか、もちろんというか、そんなことは出来ない。
スタッフ一人一人との面談、売り上げ分析と報告用の資料作成、マーケティングチームとの打ち合わせ。その合間を縫って、自分が考えた戦略を遂行すべく、打ち手の実行を行う。
これだけで大体毎日夜の22時くらいになる。
さらにスタッフの退職が重なり人が足りなくなると、支配人も現場に出て働く。現場管理のためにも、現場に出ることは必要なのだが、日によってはそれだけで8時間取られる日もあり、時間を圧迫する。
仕方ない。人手不足も最終的には支配人の責任だ。

そんな身体がもう一つ欲しいような状況の中、さらに追い込むように突発的に入ってくるものがある。
クレームと取材だ。

支配人の一番大事な仕事は何かと問われれば、僕はクレーム対応だと応える。
智将、野村克也は組織が上手く回っているときは監督は不要、上手く回らなくなっている時こそ監督の力量が試されると言っていた。
クレームとは当に組織が上手く回っていないことが具現化された存在である。
施設に責任を負わなければならない人間として、最終的に支配人がクレームを被ることは当然、極めて重要なのだ。
という綺麗事を自分の中で並べ立てるが、やはり時間も労力も何より精神力をゴリゴリ削られるクレーム対応はキツイ。
落合監督時代の中日のキャンプくらいキツイ。

そして取材。
ありがたいことに、僕が支配人を務めていた宿は、雑誌、テレビの取材をよく申し込まれていた。
だが、この手の取材は突然入ってくるし、現場の負荷も高い。
他のゲストに迷惑がかからないように、先方が撮りたい映とこちらが撮って欲しい映を撮影すべく、綿密なスケジューリングと細心のディレクションが必要になる。
一泊二日の体験型取材の場合は、深夜まで撮影は続き、その片付けをしてから翌日朝食撮影の準備をする。
支配人以外の撮影アテンドスタッフは夜朝交代できるようにするが、最終ディレクションの支配人はぶっ通しで家に帰るどころか寝る暇もない。

子供を迎える準備

そんな猫の手も孫の手も、なんなら犬だろうがサルだろうがどんな手も借りたい状況ではあったが、奥さんの産婦人科には必ず付き添っていた。トツキトオカアプリを見ながら夫婦で「あとどれくらいで産まれる」と話し、赤ちゃん用の肌着やベビーベッドを買いに行った。
パパママ教室にも行き、お風呂に入れるのはパパだと息巻いた。

二人でゆっくりと、でも、着実に子供を迎える準備を進めていた。
仕事も忙しかったし肉体的にキツイこともあったが、まだ定時で上がれるタイミングもあり、振り返れば充実していたと思う。


そんな中で、いよいよ子供を迎える日がやってくるのだった。




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