デフレの原因、産業構造

チャンネル桜の経済討論をなんか一つ挙げろと言わると
【新春経済討論】2020 世界経済の行方[桜R2/1/4]
であって、特に冒頭一時間が印象的です。パネリストである武者陵司氏が「デフレの原因は技術革新による供給過多」と論じている訳なのですが、マクロ経済素人の自分からするとてっきり需要不足だと思っていたので頭をガンっとやられた思いがしました。需要不足、言い換えると不景気から生じた給料の減少がデフレを生んでいるのは恐らく間違いないのではありますが、要は、給料を減らしてしまったのは下手くそな経営戦略に原因があると武者氏は言いたいのだろうと思いました。望まれてもいない技術をどんどん高めても、人から見向きもされないし、当然売れないので給料も生まれないという理屈です。技術を市場の飽和と言い換えても話は通じるかもしれません。街に溢れかえるラーメン屋、コンビニ。安いスーパーで惣菜を買って済ませる自分からすると、無駄だと思うので、必要のない店舗間価格競争が生まれていてもなんら不思議ではありません。
武者氏は、雇用の流動化に活路を見出している様ですが、つまりシュンペーターの創造的破壊、絶えずスクラップアンドビルドしていくという発想に通じているのだと思うのですが、保守的な日本人はついて行けないだろうと思います。社会不安を招く考えです。ただ、あれだけ公共事業をやって国が需要を創出しているアメリカにおいてもデフレの危険に怯えているという指摘は初耳でしたし、今後、日本がよりケインズ政策にシフトしたとしても付き纏うであろう重要な示唆だと思いました。
もう一点、武者氏が指摘していたのは日本の産業構造。工業が2割そこそこ、特にサービス業が7割以上で突出している点です。雇用を流動化しても、恐らくサービス業の中でグルグル回転するだけでしょう。そもそも人間は、これ以上の安直なサービス拡充を求めているのでしょうか(家事掃除洗濯ロボットが発明されれば話は別である)。
極論になるかもしれませんが、皆で農業をやる。恐らくそれでは稼げないであろうから政府に相当なお金を工面させたらいかがでしょう。日本は食料自給率が現実に低いのですから安全保障にも貢献する事になります。
問題は、政府が先頭に立って産業構造における抜本的改革が出来るかです。野放しに流動化させるのではなく、農業のアドバンテージを高める(公的資金を投入する)事によって、必然的に農業へ人材が集まるように誘導する。ケインズ的で王道的な公共投資の効果も見込めるでしょう。ただし、輸入農作物に価格で勝たなければならないので、より強固な政治力が求められると思います。海外品の駆逐を意味するのでハレーションにも屈しない断固たる姿勢が必要です。書いてて、なんだか到底無理な気がしましたが僕はそれが良いと思います。

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