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こうして私は80日間【犬のインド】を撮った③

割引あり

Photo&text=Akira Hori All rights reserved

2024/08/12更新

これまで見てきたように、インドにはストリートドッグが実に多い。

一体どのくらいの野良犬がいるんだろうか?
ためしにHow many stray dogs  in India? で ググってみると

over 60 milion

と表示される。もちろん推定だが6000万頭を下らないというわけだ。


"パリア"と呼ばれる犬たち

見かける犬の多くは、数万年前にさかのぼる犬の原型とは、ひょっとするとこんな姿をしていたのでは?と思わせる風貌の「パリア犬」の系統の犬たちだ。

インドのパリア犬は、 かつて飼育されていた犬が野生化して生き残り、犬種として固定されたと言われているが、純粋な在来犬ではなく雑種の可能性があるという指摘もある。

パリアとはヒンディー語で「宿無き者」を意味する言葉だ。本来のパリア犬は直立した耳、くさび形の頭、湾曲した尾を持っている。考古学的証拠から少なくとも4500年前にはこの犬がインドの村に生存していたという。

しかし 実際に見かける犬たちは、垂れ耳も少なくなく、ストリートドッグのほとんどは間違いなく雑種だろうと思わせるいでたちだ。

バラナシの犬


下の2枚の写真
は、 ガンガーの沐浴で知られているバラナシで撮影した。
ガンジス川のほとりで 昼寝をするこの子犬たちは、被毛の模様や耳の特徴から、明らかに雑種であり、本来の「パリア犬」とは一線を画している。腹部に赤みがさしているのは、 ホーリー祭でまかれた色粉(画面右上の赤紫色が顕著)の影響である。

ガンジス川のほとりには、 ほかにも単独でくつろいでいる若い犬の姿があった。この写真からは、目がどこにあるのかよくわからない。特徴的な被毛から察するに、 おそらくヨーロッパ系の犬の血が入っている。

 今、改めて写真を眺めると、顔は似ても似つかないが、 この斑模様からは、そこはかとなくイングリッシュ・セターの被毛を連想してしまう。

               
                   

上の写真を撮った数分前のことだ。バラナシの街をガンジスの川べりに向かって歩いていると、10人ほどの男たちが頭上に担架を持ち上げながら歩いてきた。

軒先から出てきた住人たちがその担架に向かって手を合わせている。立ち止まって見てみると、花で覆われたその担架には人間の遺体があるようだった。

担架がたどり着いたのは、火葬場だった。遺体はこの川沿いで焼かれるのだ。火葬場といっても、数本の竹ざおが組んであるだけで吹きさらしだ。 何本もの薪が用意されていた。 やがて火が点けられ、あっという間に骸がメラメラと燃え上がった。遺灰はもちろんこのガンンガーに流される。

その目と鼻の先に、川で足を濡らす数多の人々がいた。 沐浴している人もいる。
ここに犬の姿はない。犬たちは距離をとっているのだ。 神聖なる場所を「穢して」しまうことを恐れるかのように。

恐るべきインドの野生犬


インドの犬を語る上で見逃せないのが、野生の犬だ。
インドにはドール (アカオオカミと呼ばれることもある) という野生犬が生息している。彼らは10頭前後の群れをつくって、移動しながら狩りをする。

インドにとどまらず東南アジアにも広く分布しているが、個体数は限られており 絶滅危惧種に指定されている。南インドではあちこちの野生動物 保護区に姿を見せるというが、他の地域では観察するのはきわめて難しい。

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