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長夜の長兵衛 金盞香(きんせんかさく)

 

小春日こはるび


 幹にくるり、銀兵衛は慣れた手つきでこもを巻き、縄をかける。長兵衛がもう一本縄を結ぶ。金兵衛が縄目を整え、余りを切り落とす。半日ほどすると、街道の松並木には冬支度が整った。
 お疲れさん。あとは旅籠でゆるりとしようではないか。金兵衛が二人にねぎらいの言葉をかけてくれる。
 本日は堅苦しい客人もありませんし、どうぞこちらへ。宿の主人は、十二畳はあろうかという部屋へ三人を通してくれる。湯殿も準備させております、ごゆっくり。

 金兵衛は湯殿へ、長兵衛は饅頭屋へ。
 銀兵衛は床の間の前に座して、みている。
 掛け軸ではなく、描かれた花そのものをみている。
 水仙、またの名を金盞銀台きんせんぎんだい
 大家の金兵衛さんは、素性もわからぬわたしを住まわせて、一番弟子にしてくだされて。そして銀兵衛の名まで。
 金の盃を支えることのできる銀台に、わたしも、なりたい。

 饅頭の包みを片手に長兵衛が襖を開けると、小春日が水仙を包み込んだ。

  

 <了>

pixabay  by  452345


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 水仙の蘊蓄うんちく

 
 
 

 これはうちのベランダの笛吹水仙たち。 
 手前は撫子、ラナンキュロス(昨春、開花ののちに取り除いたつもりの球根から芽がでました)たちと、はからずも寄せ植えに。
 右手は紫蘇。花も可愛かったです。


 こちらからは、ビューワー設定により縦書きでご覧いただけます。
 また、以前に執筆しました二十四節気の物語と、今回の七十二候が順に並んで出てまいります。
 長兵衛をお楽しみいただきやすくなっているかもしれません。

 


お気持ちありがとうございます。お犬に無添加のオヤツを買ってやります。