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長夜の長兵衛 竹笋生 (たけのこしょうず)

常盤木落葉ときわぎおちば


 遠くから仰ぎ見れば高き山も、
 分け入れば林また林にて、
 木立、大地、うごめくいきものたちの有様で。

 足裏に届く土の震え。
 頬を鎮める風の匂い。
 木漏れ日の声。

 さんざめくいのちの波の揺れ。
 時にあたたかく、時に冷んやりと群れゆく、定めなき雲の白さ。
 息を吸うて、心の臓が踊って、瞼の裏は渦にのまれて。
 
 巡り、たゆたい、流れ、
 止まり、抱え、うずくまり、
 それでも心も技も体もあるべきところへあろうとして。

 己のみで知り得たわけではなく、
 友が伝えてくれたことだけではなく、
 師より教わるばかりではなく。
 
 日々は日々のままにあると、山が語りかけてくる。
 秋には黄や紅の賑やかな葉を揺らす木があり。
 初夏には緑のまま、素知らぬかおで葉を入れかえる木あり。
 さまざまな営みのあと、葉を落としてゆく。
 それをかき分けてたけのこが空に向かう。

 長兵衛は全霊、について考えている。

 
 
 

<了>


photo AC by アマチュア写真家RYOさん



 本年の竹笋生は5月15日~5月20日頃。
 どどん遅れ! 続きます!

 5月19日、文学フリマ東京ではありがとうございました。「ウミネコ製作委員会」にてお目にかかれた全ての皆様に感謝申し上げます。
 特に文フリレポートをしたためることはいたしませんが、あの日の思い、みたいなものを長兵衛に語らせてみました。
 そのような光景を連れてきてくれたのはやはり、noterさんの、会場を埋め尽くす創作者の「気」なのかなあ、なんて考えたりしています。
 畏れたりリスペクトしたり、何に対してもそういう気持ちのあることがいいなあ、なんて、ね。


 こちらからは、ビューワー設定により縦書きでご覧いただけます。
 また、以前に執筆しました二十四節気の物語と、今回の七十二候が順に並んで出てまいります。
 長兵衛をお楽しみいただきやすくなっているかもしれません。



お気持ちありがとうございます。お犬に無添加のオヤツを買ってやります。