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15.バランス運動

イヌの再歩行リハビリテーションでは、立てるようになったら、プロプリオセプティブトレーニングを兼ねたバランス運動を行います。さまざまな方向からの圧に対して自分の肢で踏ん張れるようにすることを目的とする運動で、その後、踏ん張れるようになってから、四肢の協調性を伴った本格的な歩行訓練に入ります(協調性の記憶を取り戻す他動的運動は立位保持運動と並行して行います)。

今回はそのバランス運動のお話です。

感覚神経からの信号を受け取ったプロプリオセプター(固有受容感覚器)というセンサーが、自らのカラダの傾きなどを把握し、カラダが倒れないよう運動神経を通じてバランスをとるよう指示させます。この機能をプロプリオセプションといいます。

バランス感覚を失うひとつの原因は、この感覚神経ープロプリオセプターー運動神経といった一連の神経機能が衰えることにあると考えられています。もちろん、筋力低下や脳機能の低下によることもあるでしょうし、腱や靭帯が弾力性を失ったり、三半規管などの平衡機能が衰えたり、といった他の原因によることもあるでしょう。バランス感覚を喪失するのはいろいろな原因が考えられます。

疾病などによるバランス感覚の喪失は運動療法ではなかなか改善しないと思いますが、加齢に伴うものは、筋力を回復させ、軟部組織の柔軟性を回復させ、プロプリオセプション機能を回復させる運動療法で改善する可能性が大いにあると考えています。

イヌの再歩行リハビリテーションで行われるバランス運動では、立位のまま左右に揺らす運動、バランスボードやバランスボールを使ったユラユラ運動から、砂浜歩行や雪道歩行、荒れ地歩行など、さまざまな形で足元不如意な底面を作り出し、自分の力で自分のカラダを支えられるようにします。

WDA(WIZ-DOG ACADEMY)では、老犬のバランス感覚喪失を予防する目的で、散歩中に、土手などを斜めの状態で歩かせたり、木の根がごつごつしたところを歩かせたり、できる場合は砂浜を歩かせたりしつつ、毎晩、立位のまま横に揺らす他動的運動も加えるようにしています。


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