見出し画像

リスキリングはスキル持ちの人にしか適用できない話である

どうも、ゑんどうです。

ハンコはなくならないし役所に行けば何かしらの書類は手書きさせられるし、間違った箇所があった場合に「印鑑お持ちですか」と聞かれ「いえ、持ってないです」と回答するのがデフォルトだったりします。

DXだなんだと叫ばれるようになってから久しいですが、Google Trendsで『DX』と打ってみると2022年1月にピークでした。

出典)Google Trends『日本:DX(2018/01/21~)』で検索

それもそのはずで、日本におけるDXは少なくとも2018年に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」を取りまとめたことが契機で、日本の中では割と新しい言葉なのだから仕方がないのかもしれません。

DX先進国と印象づけられているアメリカではどうかというと2015年ぐらいからググッとあがり始めて、2021年10月にピーク化しています。

出典)Google Trends『アメリカ合衆国:Digital Transformation(2004/01/01~)』で検索

ちなみに、日本でDXと検索をかけるとDXは2004年から割と高い関心があることになってしまうのですが、おそらくDX(デラックス)の文脈で使われていたのだろうと考えてます。

出典)Google Trends『日本:DX(2004/01/01~)』で検索

このDXによる社会変革が起こる(いや、起こさなければならないの方が適切かもしれないですね)ことを前提にすると、既存の働き方を変えるぐらいにならなければいけないので、既存の社会人はスキルを身につけ直す必要がある、リスキリングだ!と叫ばれるようになりました

三菱総合研究所の中では2030年に生産職が90万人、事務職が120万人過剰となり、逆に専門職が170万人不足する事態になることを2020年の時点で示してましたが、この世界線はすでに到来していると言えるのかもしれません。

出典)三菱総合研究所「DX成功のカギはデジタル人材の育成」より

ビズリーチの(ビジネスパーソンと呼ばれる感度の高そうな人たちを対象にした)調査によれば、将来的に新たなスキルを身につける必要があると感じている人たちの割合は30代が最も高く、危機感を感じているようですらあります。

出典)ビズリーチ調べ(プレスリリース2021/11/29)より

ただ、ちょっと待って欲しいのです。リスキリングってことは、何かしらのスキルを身につけているからこそのものであって、何も身につけてない人はリスキリングの前に……って話なのではないかと。

今回はそんな話で #ひとり会議 していきます。

■ まずはスキルを身につけて

上で紹介したビズリーチの調査への回答したのはどんな人たちだったのかを見てみると「30代以上のビズリーチ会員」で、ビズリーチをご存じない方のために説明すると、ビズリーチとは『選ばれた人だけのハイクラス転職サイト』です。

ビズリーチのサイト内にある「ビズリーチとは」ページに記載されている内容をご覧になるとわかる通り、名の知れた企業の非公開求人などの案件に向けて直接企業からスカウトをもらったり、ヘッドハンターたちから声をかけられるのを待つといったマッチングサイト。

サイト内で案内されている内容から察せられる通り、すでに実社会で活躍をできている人たちが登録する場所で、スキルも何も持ち合わせていない人が登録してはいけないような場所だとすらいえます。

そこに登録するような人たちは就労人口における一部でしょうし、その一部を全体の傾向として受け取るのも危なっかしいものですから、その点は注意が必要でしょう。

そもそもリスキリングの認知率どのぐらいなのかと調べてみると、調査主体によるのですが認知率は40% にも満たないところもあれば、聞いたことがあるまで含めると60%以上、なんてところもありバラバラ。

調査期間にもよるため一様には述べることができないもののGoogle Trendsの傾向をみると、日本でもそれなりに認知されだし、イシキタカイ系の人たちから順にリスキリングを実施してるっぽいことがわかります。

しかしですね。

『それってリスキリングなんですか』ってことを問いたいのですよ。そもそもスキルすら身につけてなかったのに、流れに便乗して「オレ、リスキリングしてるっす!シャキーン!!」みたいな上っ面な態度になってしまってる可能性がある人が多そうなので釘を刺しておく必要がありそう。

リスキリング はre-skillingですから、スキルの身につけなおしです。すでに身につけているスキルがあるからこそ、身につけ直すことにつながるのであって、何も身につけてないのならスキリングとなるはずなので注意しましょう。

■ 保有してるのは資格であってスキルではないのでは…

別のいい方をします。

あなたが保有しているのは資格であってスキルではない可能性があります。
たとえば、英検3級がスキルなのかというと「資格です」としか回答できませんが、英検3級を保持してどんな仕事におけるプロジェクトを走らせ、成功させたのかによってはスキルの前提条件となることは考えられます。

スキルとは、教養や訓練を通じて獲得したパフォーマンスの前提となるものです。英検3級はスキルを獲得する上での教養や訓練の証明であって、「資格を保有していること=スキルを保有していること」とはなりません。

日商簿記2級を取得したからといって、上場企業の経理担当者として実務をバリバリにこなし、業務過程の見直しや経費削減プロジェクトで主軸を担えるのかといったら(気合と根性でこなしてしまう人はいるでしょうが多くの人の場合は)無理でしょう。

企業が求めるスキルとは事業やプロジェクトを任せるに値する、また、成果に結びつけることができるパフォーマンスのことであって、保有している資格(中には資格が必要な業務もありますが、それ)ではありません。

パフォーマンスとは、主体となる自分が対峙する客体(あらゆる状況や環境といった自分以外の対象)との関係をいかに自分に有利な状況を生み出せるのか、その状況を乗り越える際に発揮するスキルなどの複合的な過程をパフォーマンスとスポーツ科学の中ではいいます。

サッカーではS級ライセンスと呼ばれる指導者資格を保有していなければJリーグの監督や日本代表の監督になることはできません。では、S級を保有している人は皆、優秀な監督なのかというとそうではないでしょう。

スキルと資格の間には「成果」や「結果」への能動的な活動があるかどうかといった大きな隔たりがあるのです。

■ スキルとは明文化できるもの

また、仮にではありますが、すでに身につけているスキルがあるのだとして、それを存分に活かしてきたのか。それを活かしてきたのであれば、どんな成果やプロジェクトを担当してきたのか。そこから得られた知見や見識は何か。これらはすべて記載できるはずです。

つまり、資格のように誰かが規定したものではないものの、これまで自分が担当してきた何かしらの業務実績や事実があるのなら、そこで発揮したパフォーマンスについて記載するだけで立派なスキルとして認めてもらえることになります。

たとえば、人事担当者であれば年間、もしくは数ヵ年に及ぶ採用計画に向けて、自分が果たしてきた役割を列挙していくと自分が何をしてきたのかを箇条書きにすることはできるはずですから、数値として記載できるものを書き足し、その数値を出すための過程を箇条書きで記載していきます。

入子構造で「役割>数値>過程」が書き込めたと思いますが、これだけでも自分が取り組んできた業務を説明することになりますし、これによって何ができるのかが明確に記載できたことになります。

逆を返せば、そうやって記載できないものこそスキルでもなんでもないわけです。さらに、その役割と数値と過程の関係内には、おそらく資格名を記載する隙はないでしょう。なぜなら資格はスキルではないからです。

自分が何をする人間なのか、何ができる人間で、どんな場面で役に立ち、どんな境遇であれば力を発揮できるのか。そんなことにタイトルをつけて記載することこそ、スキルなのです。

おわりに

ツラツラと書いてきたものの、ぼく自身がスキル持ちでなかったことによって非常に苦労をしてきましたし、それ自体が解決されたわけでもありませんので、いまでも苦しみながら必死に身銭を稼ごうとしている次第です。

だからこそ、スキルを身につけていないのにリスキリングも何もないだろうって強く思いますし、何かしらのスキルを身につけているのだとしたら、どんなヘンテコなスキルであっても他へ代替することができるはずですし、代用や応用が可能なはずです。

仮にそれができないのだとしたら、かなりニッチな上に深い業界や職種の話になるのでしょうが、それはそれで希少な価値を保有しているとすらいえますし、その経験は同じように他の業界や職種に何かしらの形で応用することが可能でしょう。

だから、スキルを保有していない自覚がある人は、リスキリングに取り組む前に、まずはスキルを記載できるようになることから始めましょう。

ではでは。

ゑんどう(@ryosuke_endo


#えんどうnote 、マガジンでフォローすると通知が届くのでオススメです!


最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。 お読みいただき、それについてコメントつきで各SNSへ投稿していただけたら即座に反応の上でお礼を申し上げます!