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作品「こんな夢を見た」の解説

タイトルは「こんな夢を見た」。
映画が好きな人にとっては黒澤明の晩年のオムニバス大作「夢」が元ネタだろうと気付くかも知れません。
この作品では「夢」をテーマに制作しました。
夢といっても色々ありますが、これは寝ているときに見る夢です。
ある女性が大晦日に見た夢を描いています。

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概要

主人公となる女性はいわゆるパーティーピープルで、世界がパンデミックに陥っていなければいつも通りパーティーを愉しんでいたはずです。
それもパーティーの中心人物として注目を浴びて輝いていたでしょう。
でも、先行き不透明な自粛の日々が続きフラストレーションは限界値を超えていたようです。
そんな中で2020年の年末を迎えるのですが、楽しい年明けなど期待できないことから大掃除もギリギリまで手をつけていませんでした。
ようやく掃除に手をつけてはみたものの、キッチンで見つけたお酒を口にしてそのまま寝てしまいます。

彼女の夢は「毎日がパーティーだったらいいのに」。

気付くと彼女は「永遠に終わらない宴」を主催する姫となっていました。
この世界では宴と姫は一体で、ひとたび参加すればゲストは「宴」に取り込まれてずっと宴を盛り上げるための燃料として狂喜乱舞し続けることになり姫の糧にされてしまいます。
ゲストがいなくなれば宴はかたちをとどめることが出来なくなり必然的に姫も滅びる定めがあります。

宴はいつも通り続いているはずなのにゲストが見当たりません。
それでも姫はひとり虚無の中で宴を続け、ゲストを喪った宴の崩壊が始まります。それは姫の内面の崩壊をも意味していました。

驚いて目を覚ました彼女は、まだ年が明けていないことにホッとします。
再び掃除を再開するのでした。

本編の写真集はいずれ発行するZINEにてご覧ください
こちらで案内しています。

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解説

本作では、2020年~2021年と続いていくパンデミックによって主にエンタメの側面で「喪ったもの」が深層のテーマになります。
不特定多数のリアルな人の交流で成り立つ多くのパーティーやイベントなどは次々と開催が自粛されていき、結果としては「発散の場としての楽しみ」が喪失した世界を実体験したのではないでしょうか。
特にパーティー・イベント関係者、その主催者が負ったダメージははかりしれません。路頭に迷うという言葉通りでしょう。
これに対して誰も助けの手を差し伸べる手立てがなかったのも事実です。

今回のモデルであるASUKAさんは実際に大きなパーティーのスタッフを務めています。
イギリス発祥で世界中にフランチャイズする30年超の歴史を持つ巨大アンダーグラウンドパーティー「TORTURE GARDEN」の日本版のメンバーとしてこれまで運営を支えてきた一員です。
このアンダーグラウンドシーンで活躍する人達にとっての恐怖を悪夢をモチーフに具象化し触れてみたいという考えから企画に至りました。

ただ、この悪夢は事実ではあるものの、現実世界でのパーティーピープル…特に主催者達の心は強靱です。
かならず2020年以前のようなパーティーが愉しめる環境を取り戻してやるという気持ちを喪っていません。それは全世界的に共通です。
だからいまはアンダーグラウンドのアンダーグラウンドに身を潜めその機を窺っているはずです。
再び華やかで心躍る時間を提供できる日を目指して。
各地でイベントが再開したら、またかつてのように足を運んでもらえれば幸いです。

この制作に携わった方の紹介

モデル:ASUKA( @jeudipenguining )さん
ヘア&メイク:日野千秋( @c_chiaki_ )さん

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