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TH(トーキングヘッズ叢書)にみる覚悟と信念とアートにみるフェティシズムとディシプリン

アトリエサードが発行する文芸誌「トーキングヘッズ叢書(TH Series)」の最新刊であるTH No.91にて「アートにみるフェティシズムとディシプリン」展の模様が(P.44から4頁にわたって)掲載されています。

トーキングヘッズ叢書(TH Series)TH No.91

関わりのある話題だから宣伝しておこうということではなく、今回は「紙の書籍を出版する」ということについて少し触れようと思います。

ISBNコードを取得し書店流通する本を出版するというのはとてもお金がかかります。書籍を出版するということは非常に覚悟がいります。
売れるかどうかわからないものに対して大きな製造出費をするだけでなく、保管や流通や宣伝まですべて負債として背負うわけで、こんなリスクが大きなものはありません。
出版活動を続けるというのは、そのようなリスクを背負い続けているといえます。

シリーズものになれば想定販売数がわかるので、それに応じて効率化しコントロールはできる…といっても出版時点では大きなマイナスからカウントし始めます。
ミスがあったら大変な事故です、デジタルコンテンツではないですから修正するにも差し替えるにもコストが膨大です。
ですから、入稿データが印刷所に行くまでも行った後もピリピリ感が続くわけです。そんな緊張感の中で生み出されているのが「紙の本」です。

DOCTRINEでは、ZINEですが紙の本で勝負をしているのでこのあたりのピリピリは少なからずあります。
個人の話になりますが、20年近く前に出版業界にいた経験もあり、リアルなピリピリ加減やヒリヒリ具合もよく理解しています。
例えば、商業誌でなくとも同人誌をコンスタントに発行している人などはそのピリピリをつい最近まで感じていたのではないかと思います。(いま8月上旬です)

前置きが長くなりましたが、本が売れない/読まれない時代にそのなかでもけっこうというかだいぶ苦しいジャンルである文芸誌領域でオルタナティブ・カルチャーをフィーチャーし、恐らく30年程は続いているであろう「TH Series」はとてもすごいわけです。
もっとも、昔はインターネットがなくサブカル・アングラの人々は「こういう本」こそが重要な情報源だったので、いまより売上はよかったはずですが万人受けはしないし、この現代でもこうして継続できていることがすごいのです。
極論でいえばこういった本を手にするのは「一部のだいぶおかしなどう考えても感性が斜めなうえにどこかしらに屈折ぐらいは持っているであろう人」です。
でも、その一部のだいぶおかしな人のためだけにこうして出版活動を続けているのは、それは「意味がある」と確信があるからでしょう。
とても難しい理屈があるので割愛しますが、紙の本でなければ伝えられないことというのがあります。
TH Seriesは、まさにそういうことだったのでいまもなおこうして続いているのでしょう。

TH Seriesを手に取ったことがある人ならばわかることですが、情報密度がとてつもないです。224頁ほどあるのですが、小さな活字でびっしり埋め尽くされています。
文芸誌という括りですが、様々なジャンルの話題が詰め込まれていて「なによりも活字が好きな人」のために作られていることがよくわかります。
いい加減なライターのいい加減な内容の売文集ではなく、ちゃんとした実績を持つ人々が執筆し作家の作品が載り綺麗に編纂された一冊です。
様々な気持ちや考えを刻み込むようにコンテンツとして作り上げられ、編纂されたその集合体である「本」は、コンテンツ価値としても重みが凄まじい。(物理的にもなかなか重く硬いので、角で殴れば怪我をします。)
メディアサイトであるとか、このnoteなどにはない、紙の本ならではの情報価値と体験価値があります。

いま、これだけの情報質量を持ちコンスタントに刊行され続ける本がどれほどあるのか知りませんが、TH Seriesのようにこれだけ長く続いたシリーズだからといって次回があるとは限りません。
紙の本は在庫がなくなればそれで終わりでもあります。
そういう意味で、価値あるものに触れられるときに積極的に触れておいた方がよいと思います。
一冊1,528円という価格をどう受けとめるかは人それぞれですが、1,528円で買えるのなら買ったほうがいいとは思います。
ただし、オルタナティブ・カルチャー的なものに関心がない人は、買っても楽しめない気がするので買わないほうがいいかもしれません。

本の内容に触れるのはタブーなので、基本的にここにはなにも書きませんがひとつひとつの記事には高密度の情報価値と重みがあるということだけは触れておきます。

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