治療開始 楕円球に託す

肺がん発覚から約1週間、検査結果を主治医に聞いた。
凍結標本検査では、肺腺がんであった。EGFR遺伝子変異が見つかり、それに対しては分子標的薬のタグリッソが効果的、という話であった。

私は医師なので、主治医の説明はおそらく一般の方とは異なっていたのだろう。ズバズバと説明してくださる。
いつまでも効くとは言えない、大体一年位で効果が無くなるだろう、色々副作用も無いわけでない。でも、良くなります、飲むしかないですよ、と。主治医の言葉選び、話し方は、失礼ながら”自分好み”と直感した。決意をさせてくれた。うん、飲もう。

「本当は1週間入院して、薬剤の副作用がでないかを確認したいですが、自宅ででの開始でもいいです。何かあったらすぐに連絡下さいね。」と、寛容なお言葉。はい、そうします。

ただ、専門薬なので、調剤薬局どこにでもある訳ではないらしい。勤務先から近くのがん専門の病院の近くの薬局が良いでしょうとアドバイスされ、妻とそちらに向かった。私の勤務先と同じ最寄りの駅だけど、真反対側に位置するので、徒歩で20分くらいかかる。車できていたので、車で向かった。妻が薬局に行ってくれるとのことなので、私は車で待っていた。

夕方になり、日が落ちてきた。晩秋の夕方は、なんだか物悲しい。心細さを抱き始めた。早く薬を飲みたい、そんな思いがどんどん増してくる。

「ちょっとお願い。」と、妻からの電話。薬局の方と電話で話をした。限度額認定の説明を受けた。薬剤が高額なので、限度額認定を受けた方が良い、とのこと。うーん、ややこしそうだ。なら、自分の病院の院内処方でなら、後々申請の手続きが、楽なのかもしれない。

もう一度、自分病院に戻り、主治医にこのことを伝えた。ならば、当院の院内処方にしましょう、と。なんだかスムーズに行かないなぁ。

黄昏から、日の入りに近い時間となり、ようやく処方薬を手にした。僕はもう、喉から手が出るくらい、であった。早く体の中のがん細胞を、やっつけたい、1秒でも早く。焦燥感が爆発していた。

薬は、1日一回服用とのこと。食前とも食後とも書いてない。おそらく24時間毎、なんだろうけど、だからといって、帰宅後の夕食前までも待てない。とにかく一錠手にした。少し大きめの、楕円形な錠剤。速攻で、内服した。

自分の命、しばらくは、この楕円形の薬剤にお預けしよう。

ラグビーボールは楕円球🏉、一度転がると、その形のためどこに転がるかわからない。時に試合結果を左右する出来事を引き起こす、楕円球の神様、がいるのかと思うくらい。でも、でも、それでも諦めず、何度でも全力疾走で追いかける選手の胸元には、神様が微笑んで、スッと転がり混んで入ってくるもの。

僕は今まで必死で生きてきた。そしてこれから必死で生き延びる。だから、この命をかけた試合で、楕円形はコロコロ転がっても、必ず僕の味方となってくれるはず。

何度でも、どこまでも、全力で追いかけよう。

#がん #肺 #スポーツ #治療 #ラグビー

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