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『シン・エヴァンゲリオン』の唯一解釈違いしたところ

まぢ解釈違いツラ……ほとんどめっちゃよかったのに……一箇所だけめっちゃ引っかかっちゃって全然集中できなかった………

ネタバレだから気をつけてスクロールしてね……




惑星大戦争メインテーマ、最後のトランペットのハイトーン音太すぎ……

トランペットの音域

「トランペットの高い音はどこまで出ますか?」という質問は体操選手に「跳び箱何段跳べますか?」と聞くようなもので、“プレイヤーの技量”と“楽器の性能”次第でどこまでも高い音が出ます。練習するにつれて段々と上の音も出せるようになる楽器、と思っていただければ概ね差し支えないです。

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トランペットのハイトーンはとてもカッコ良いのでありとあらゆる音楽で重用され、特に昨今の劇伴音楽の世界では非常に多くの場面で活躍してきました。

しかしながら音が高ければ高いほど良いわけではなく、作曲者の描く音楽性・トランペッターの技量・楽器の性能・それらのバランスによってどのハイトーンが使用されるか決定されるわけです。

①音域:『ウルトラセブンのうた』

トランペットに特別なハイトーンがあるわけでないが、その存在感をしっかりと感じる。金管楽器のアンサンブルとコーラス隊のハーモニーとが美しくシナジーした名曲。トランペットの魅力とはハイトーンだけに在らず、という原理原則を思い出される。

しかしながら人類は探究心という名の原罪を持って生まれているからして、更なる高みを求めてしまう。

②HiB♭:『帰ってきたウルトラマン』

曲の出だし(0:22)からこのハイトーンである。

このHiB♭という音はトランペットの物理的構造上非常に良い音がする。一方で難易度もそれ相応に高く、トランペットを始める者にとって一つの壁でもある。

基本的なフレーズを①音域、決め所で②HiB♭というのがトランペットの基本的な運用法……と言いたいところだが、ある名手が更なるハイトーンを実現してしまった。

③音域:『スタートレックのテーマ』

HiB♭のさらに上1オクターブ以上を駆使してしまう偉大なるトランペッターメイナード・ファーガソン。このハイトーンはやりすぎだと感じる一方で、かっこいいと感じるのも事実。日本においては彼のアレンジ版があらゆるテレビ番組でも使用されることとなった。

当然、彼のようなトランペッターが世界中にいるわけがない。それでもあらゆるトランペッターの努力と技術向上により、②〜③の間にトランペットの最高音が設定されるようになった。(無論、他の楽器の音域や調性との兼ね合いもあっての事だが。)

④音域:『ルパン三世のテーマ‘80』等

この音域が決め所で登場する曲は数多くある。『カリオストロの城』でも有名な『ルパン三世のテーマ‘80』イントロ

『宇宙戦艦ヤマト』アウトロ(2:08)

『ウィーアー』イントロ

数多くのトランペッターの努力、そして楽器メーカーの技術向上業界により、素晴らしいハイトーンが劇伴音楽界に安定供給できるようになった。

しかし、日本の劇伴に於けるトランペットの音域が確立しかけたところで、ある1曲が禁忌を犯してしまう。

⑤HiG:『Decisive Battle』

当時、日本中のトランペット愛好家が気持ち悪いオタクにこれを吹けと言われて喧嘩になったのではなかろうか。

この録音でトランペットを演奏した方はさぞかし大変だった事でしょう……その辛さが音からひしひしと感じ取られる。そしてその辛さが、劇中のシンジ君とシンクロし、ヤシマ作戦を演出している。

なぜトランペットのハイトーンが素晴らしいのか

技術的困難を乗り越え、限界を突破した時の美しさ。それこそがハイトーンの美しさの本質と感じる。

故に劇伴音楽と非常に相性がいい。試練に打ち勝つ者の音楽としてこれほど相応しいサウンドがあろうか。

トランペットのハイトーンとは時代とともに進化してきた。プレイヤーの技術・楽器製造技術、それらが世界の要請に応じて限界を突破してきたからこそ、時代の折々で数々の名曲が生まれてきたのだ。

双方の技術の進歩によって、かつての超難曲が再現されるのは非常に素晴らしいことだ。

しかし最新技術を用いた再現が、当時の限界突破による美しさまでも再現できるとは限らない。その絶妙なズレが、上記動画に「メイナード・ファーガソンの方がうまい」とかしょうもないコメントする人間を生み出している。

『惑星大戦争』アレンジについて考える。

こうして聴き比べてみると、現在と1977年当時の録音技術や演奏技術とではかなりの差がある事がわかる。トランペットの音域は②以下に収まり、音色も荒い。最高音のHiB♭も現代に比べるとか細い音色だが、その細さが前述の美しさを演出している。

『シン・エヴァンゲリオン』ではほぼアレンジすることなく原曲通りに使用されていた。(当時の音源か再録音したかまでは映画館では判断できませんでした。)そして曲のラストをトランペットのHiFで締め括るアレンジ。この音色があまりに太い!太ければ良いってもんじゃないぞ!かつての時代に即した音を出せよ!ムキーーーー!!!

(ちょっとうろ覚えなので確認のためサントラ初日に買ってきます。)

Revival か Rebuild か

音楽とは再現の芸術です。録音技術がない古来の時代から、如く名曲を演奏して過去から未来へと伝えていく、音楽家とは語り部のような存在です。

そこには一つの矛盾が存在します。過去の音楽をそのままに再現するか、現代の技術を持って再構築するべきか。Museへ忠義を尽くすのはどちらの音楽なのか。

前時代の楽器を使用して演奏するオーケストラがあります。アナログレコードやレーザーディスクの収集家がいます。彼らは芸術にRevivalを捧げる者たち、と言えるでしょう。

しかし“新劇“シリーズはRebuildを捧げました。それは『序』でアレンジされたこの曲にてトランペットの音がTV版より逞しくなった事からも、既に分かりきっている事だったのです。

エヴァから卒業してください。

結局、過去に囚われて後ろを見るな、と再度言われた形になりました。お前はなんのために『シン』を初日に観に行ったのかと。自分の浅はかさを猛省します。

と言いたいところですが!AAAヴンダーが方舟ならその役割はRevivalであるべきじゃないんですか!?いやでも種をL5に置いてきた時点でその役割は果たしていたのか…?(終わらない考察)(エヴァ留年決定)



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