見出し画像

失われた55年間 - 親泣かせの原理運動(1967年7月7日 朝日新聞 夕刊)

1967年9月29日公開 この若き信徒たち~原理研究会問題(中日新聞社)

失われた45年間(1)失われた45年間(2)で1977年4月に衆議院の法務委員会で二度にわたり統一教会や原理研究会について真剣な討議が行われたことを紹介しましたが、さらに遡ること10年、銃撃事件が発生した7月8日から55年と1日前の1967年(昭和42年)7月7日付の朝日新聞(夕刊)に『親泣かせの「原理運動」』と題した記事が掲載されました。マスメディアが初めて統一教会と原理研究会を取り上げた記事のようですが、これ以降、他の新聞や雑誌も報道するようになり、統一教会と原理研究会の実態が知られるようになったそうです。(1984年以前の朝日新聞の記事はテキストとしてデータ化されていないので、縮刷版から文字起こしした全文を下記に引用します。)当時入会した社会人や大学生や高校生(宗教1世)の多くは既に鬼籍に入られたかもしれませんが、統一教会と原理研究会の活動様式は55年前から全く変わっていないようです。

尚、記事に登場する久保木修己氏(初代会長)は立正佼成会の庭野日敬会長の秘書を務めていました(両親ともに立正佼成会の信者でした)が、会長の指示で統一教会の教えを学んでいた青年部50名ほどが1962年に立正佼成会から統一教会に転じたそうです。久保木修己初代会長に伝道した小宮山嘉一氏(原理研究会の初代会長)も立正佼成会から転じましたが、1983年に富山県の立山に登ると言って消息が途絶えたそうです。1963年に入会した梶栗玄太郎氏(第12代会長)の長男は昨年9月12日に開催された旧統一教会関連団体のイベントで基調講演(ビデオ・メッセージ)を行うよう安倍晋三元首相に依頼した梶栗正義氏です。

統一教会に入信した子どもの救出を訴えデモ行進する原理運動被害者父母の会メンバー(渋谷、1967年9月)
廃品回収をする大山高誉(曹又億万)氏(左)と久保木修己氏(右)
李相軒氏(統一思想研究院院長)、文鮮明氏、 岸信介元首相、韓鶴子氏、金栄輝氏(元韓国統一教会会長)、 久保木修己氏(1973年11月23日 於 日本統一教会本部)

朝日新聞(夕刊)10頁  昭和42年(1967年)7月7日 金曜日

親泣かせの「原理運動」 学生間にひろがる学業放棄や家出


「原理運動」とよばれる宗教的な活動が全国の大学や高校に広がりだし、そのため家庭を破壊されたという父母からの訴えが、学校や警察へ相次いでいる。親たちの訴えによると、このグループにはいった若い男女は性格が変ってしまい「理想社会をつくるためーー」といって家出同然、学校には通わなくなり、活動資金をせびるため、関東では父母が”被害者同盟”を結成するまでになった。

「原理運動」を広めているのは全国大学原理研究会(本部=東京都渋谷区南平台四五、小宮山嘉一会長)で、バックには宗教法人キリスト教統一神霊教会(渋谷区松涛町一ノ一ノ二=最近は「統一協会」という)がある。「既存のあらゆる宗教の統一をめざし、宇宙の根本原理(神)と人間との生命関係を解き明かす」というこの宗教活動は、韓国人文鮮明氏(四十七歳といわれる)が創始した。

文氏は信者から”再臨のキリスト”と仰がれ、教団の象徴的存在だ。日本では昭和三十五年ごろから布教活動が始り、大学生を重点に共鳴者をふやし三人一組の街頭布教、廃品回収による資金かせぎは人目をひき、五月末には東大の安田講堂に約二千人を集めて関東原研大会を開くまでになった。

東京では早大での活動がとくにめだつが、その組織は全国七十の大学におよび、会員は約千人、ほかに高校生約千人、社会人の青年約三百人の組織だという(全国青年原理研究会、梶栗玄太郎統一局委員長の話)。大学や高校での学習生活に興味を失い、左翼的な活動にも反発を感ずるような学生がほとんどだ。

学生会員と家族とのトラブルが表面化してきたのは三十八年ごろだが、昨年十一月には早大、法大生の父母十二人が全大原研に押しかけ ①学業放棄を扇動しないように ②親の承諾なしに宿舎に泊りっきりの子女を即日帰してほしい ③子供を”人質”にして、親の弱みにつけこむような寄付金集めはやめるべきだ、などを申入れた。

昨年夏からは、修練道場建設寄金活動(目標三千万円)が始り、それまで本部に寄宿して大学にも家庭にも顔を見せなかった男女学生がいっせいに帰宅し、親に寄付金を要求するようになった。十二人の父母でつくられた”被害者”の会代表、埼玉県大宮市宮原町二ノ一〇八五、大宮市監査委員高橋一博さんの話によるとーー

家庭で”神の子”であるとのあかしをせよという教えにしたがって、親に対して赤ん坊にさとすような口ぶりで説教をするうえ、寄付金を断られると、いきなり親を「サタン(悪魔)」とののしり、断食をしてテコずらせたり、「金を出さないと殺される」とおどしたりする。

さらに「寄金を出さないのなら親子の縁を切ってくれ」「遺産の前渡しを要求しているだけだ」「嫁にはいかないから支度金を出してほしい」など、各家庭で親をおびやかす文句が共通しているので、父母たちは「指導者の暗示または指示に基づく行動だろう」といっている。

寄金さわぎが一段落したこの六月中旬、文鮮明氏が韓国から東京に乗込んでくると、それまで一時家庭に落着いていた大学生たちはまた家を飛出し、都内各所の「合宿ホーム」に泊り続けるようになっている。

父母の訴えは全国にわたっており、前橋市などの父母三人が群馬県知事あてに「未成年の女子がそろって洗脳されてしまい、東京の本部へ家出したまま帰って来ない。何とかしてほしい」と訴えているほか、東京、大阪、京都、福岡、長崎、広島などの都府県宗教法人係、教育委員会、警察本部などに二十件ほどの問題が持込まれている。

誤解とくため検討

全国大学原理研究会小宮山会長の話

運動の基礎をつくるまでは激しい方法もとったが、これからは家庭とのトラブルも少なくする方向にもってゆく。「原理」への求めが熱烈になると、学習会に来るなといっても泊りがけで来てしまう。いまではできるだけ学校へも通わせるようにしているし、活動資金の一部をいつまでも家庭にオンブしていることも好ましくない。一部の者が家庭で起したトラブルから、運動全体が誤解されてはまずいので、よく考えてみる。

平和な家庭を破壊

”被害者”父母の会代表高橋一博さんの話

理想社会の建設をとなえながら、することは平和な家庭の破壊ばかりだ。どの被害者の子もまじめすぎるほどまじめで、学校の成績もよかった。あんな新興宗教のとりこになるなんて、一種の集団的自己催眠ではないか。

大学の授業料などはみな原研へもっていってしまい、ほかにかなりの大金を巻上げられた親が多数いるのに、世間体をはばかって泣寝入りしている人が多い。

朝日新聞(夕刊)10頁  昭和42年(1967年)7月7日 金曜日


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?