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3)満州逃避行ー兵隊さんのことばー

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家族の再会

娥々たる山脈 千仭の谷 身も凍る様な思いをしたかと思うとパーッと目も覚める様な花々々 百花が一度機に咲き誇って短い夏を謳歌してゐる 今、自身の前途がどうなるかもわからない危険に直面してゐるのを忘れさせてしまう様な光景でした。

とっぷりと暮れてから、何処かの小学校らしき処に宿る事になりました。
人いきれと南京虫で眠る事は全く不能。子供達はぐっすりと眠ってゐました。満炭のトラックが谷底に落ちた‼ 死者も出ている様子、という〇(※判読できず)令を聞いた時 心臓が止まるかと思いました。他の家族は親子揃ってゐるのに武器(日本刀)を持ってゐるばっかりに<※主人とは>警備と云って別れたままです。

もう明け方近くになって、軍医の手当てを受けた女性が私たちの所に入ってきました。泣くだけで何も分かりません。でも、死者は女の人とわかり、ホッとしました。(本当に死者に対しては悪るいのですけど)でも主人達のトラックは、まだ着いてゐません。朝のおにぎりを食べてゐる時来ました。

無事な主人の顔を見た時、へたへたと坐り込んでしまいました。話すのも出発準備をし乍ら。やっと今日から主人と一緒と思ってゐたのに無情です。又、今日も別隊なのです。トラックに乗せられて小さな部落を通り〇(※判読できず)

山又山すっかり暮れるとトラックの〇(※判読できず)の前をピュンピュンと飛んでいく動物が居ます。〇(※判読できず)猿だと聞いて、身の縮む思いでした。時々すれ違う軍用トラックには満載された軍需品と心配するなよ、と云う兵隊さんに励まされました。
雨が降り出した 薄着ですから体の芯まで凍りつく様な寒さを感じ、膝まで 水の中を部隊の建物にたどり着いた時は、助かったと〇(※判読できず)々思った物です。三才の長男等は肩の辺りまで水につかって歩いたのでヘトヘトで座るなり居眠りを始める始末。主人も来ました。

新たな逃避行・兵隊さんの証言

短夜はすぐ明けます。〇〇(※判読できず)中尉とその夫人子供が再会され手を取り合って居られる風景に一命の温か味 なごやかな気分が全体にみな切った一幕もあります。〇〇〇中尉は満炭社員で〇〇〇(※判読できず)国境の軍の石炭は全部満炭でしたので、大変よくして頂いて充分に食べさせて貰いましたが、昼頃もう出発です。

貨物列車に乗って来た兵隊さんの話では、今までの鉄橋は全部爆破して来たと云って居られました。ソ連軍の進攻をはばむ爲とか。

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