シード投資|ミライのゲンバ:製造業向けAI電子帳票プラットフォーム
この度DNX Ventures(以下、DNX)は、製造業向けAI電子帳票「ミライのゲンバ」を運営する、株式会社ミライのゲンバ(以下、ミライのゲンバ)の総額1.7億円のシードラウンドにて、リード投資家として新規投資させていただきました。
製造業の課題とは
日本の製造業では、人口減少や少子高齢化による労働力不足が大きな課題の一つであり、労働生産性を上げるためのDXが急務となっています。
特に、製造現場における帳票に関しては、約70%の企業が未だに紙で管理しており、日々大量の紙の印刷から始まり、現場への配布、作業員が記録した紙フォームのエクセル転記やスキャン、数年間現物を段ボールで保管するなど、帳票そのものが生産現場の業務負荷や非効率につながっています。
ミライのゲンバとは
このような帳票に関わる非効率なマニュアル業務に対し、ミライのゲンバは、現場で使われる加工作業記録書(製造日誌)や製造原価報告書、検査実績報告書などの様々な帳票を、現場のオペレーションを変えることなくデジタル化するソリューションを提供しています。また、AIを活用した機能提供により、業務生産性の改善だけでなく、品質改善や生産計画の最適化など、生産管理の改善にもデータの活用が可能となります。
投資の背景
弊社が今回、投資に至った理由は大きく以下の 3 点です。
1) データポテンシャル
国内製造業におけるITの投資額は5.4兆円と大きなマーケットを形成している一方で、製造業界における電子帳票の導入率は22.2万社のうち3.3%に過ぎないとされており、ポテンシャルが高い領域と考えております。
製造現場のアナログ帳票に眠っているデータから得られるべきインサイトは大きく、様々なユースケースの可能性を秘めています。「ミライのゲンバ」がデータのポテンシャルを引き出す事で社会に与えるインパクトは計り知れないものと考えております。
2) ユニークなソリューション思想
世の中のペインをソフトウェアで解決しようとする時に、単にユーザーに提供すれば使ってもらえるほど甘くありません。今回の投資に際して、複数のユーザーに「ミライのゲンバ」に関するヒアリングを実施、現場にも訪問させて頂き、特に印象的だったのは徹底的に「現場を変えない」アプローチでした。紙がタブレットになった以外は現場のオペレーションは何も変わらず、緊張感のある製造現場で貢献されている皆さんが安心導入、運用出来るようにユーザー体験の強い拘りがあることを前向きに捉え、同社が現場のお客様に真摯に向き合っている様子を覗えました。
3) インサイダー × アウトサイダー
業界課題に対峙するチームを組成する際に、どのような経験や能力が望ましいのでしょうか。業界の知見を有し、業界言語を操り、コミュニティの中にいる "インサイダー" としての存在感と、業界の常識に対して穿った問いを持ち、外から解決を持ち込める "アウトサイダー" の視点、の両方が求められると考えます。代表の佐藤さんは、大手鉄鋼会社の現場経験で目の当たりにされた製造現場での大きなペインを解決したいという熱い想いと、AIによる新規事業立ち上げ実績を併せ持ち、この課題に取り組むのにふさわしいファウンダーフィットを示しています。
「可能性を、高めつづけるひと。」
DNXが大事にしている「アントレプレナーに求めるもの」の中でも、佐藤哲太さんから特に感じるのは「可能性を、高めつづけるひと。」です。鉄鋼会社からAI事業を経て起業に至るご経歴も最初はユニークに感じられましたが、この言葉の補助線を引くことで、必然的にDNXとのご縁に繋がった気がしています。今回の投資実行に向けて、佐藤哲太さんとは繰り返しコミュニケーションしてきましたが、どんな場面でも決して驕ることなく、議論で出てきた一つ一つの言葉を咀嚼して、次に会った時にはご自身なりの血肉とされている姿に、経営者としての大きなポテンシャルも垣間見ました。
ミライのゲンバ佐藤CEOからのコメント
シード期を通じて、より一層現場と向き合い、ユニークなプロダクトを磨いていけるように、DNXは力強く支援をして参ります。
(文:中野智裕)