見出し画像

グローバル本社と愉快な仲間たち

香港の支社からスイスの本社に戻ってきて、9ヵ月たちました。
その間、新任の VP (Vice President) であるシネムのアドバイザリーとして、彼女の部下たちの仕事ぶりを観察してきました。

このへんで一度、総括をしてみたいと思います。
 
シネムには、直属の部下 (Director) 3人と、その下にいる Managerたちを合わせて計 27人の部下がいます。
彼らを 5つのタイプに分類しました。
 
1. 数字屋
計数管理などをしている人たちです。
数字に強く、ファイナンスや経理、SAPシステムを使いこなすスキルをもっています。
この人たちは、一日中パソコンの画面に向かって数字と格闘しているように見えます。
長所:エクセル操作スキル。正確さ。忍耐力。
短所:細かすぎる。大局観がない。数字合わせが目的化している。
 
2. 迷走屋
新入りに多いタイプです。結果を出そうと必死に頑張っていますが、その頑張りが空回りしています。
誰よりも長時間労働しているように見えますが、チームに貢献するよりも、迷惑をかけることのほうが多い。いわゆるテンパっている状態です。
長所:鈍感力。やる気はある。
短所:鈍感力。読み書き・数字に弱い。仕事が遅い。ケアレスミスが多い。
 
3. 会議屋
「チームのキーパーソン」と自負している、仕切り屋タイプです。
スケジュールがほぼミーティングで埋まっています。
デキる人、忙しい人、と評価されていたりしますが、余計な仕事を作る習性があります。
「Let’s discuss it」が口癖で、仕事=おしゃべりという労働観をもっているようです。
長所:リーダーシップ。コミュニケーションスキル。タフネス。人脈。
短所:話が長い。いっちょかみ。ワーカホリック。
 
4. 実務屋
自分の仕事をマイペースで粛々と片づけるタイプです。
契約書の作成や価格交渉など独立した業務が多く、会議や社内政治にあまり巻き込まれません。オフィスに来ない WFH (Work From Home) 派が多数。
長所:仕事が速くて確実。他人の仕事に干渉しない。
短所:内向的で非社交的。他人の仕事に関心がない。
 
5. 情報屋
オフィスでいろんな人に「最近どう?」と声をかけて回っている人たち。
彼らの本来の職務が何なのかはよくわかりません。
仕事していないように見えますが、誰が何をしているかを最もよく把握しています。人々から情報を集めて問題を発見するのが彼らの “仕事” なのかもしれません。
長所:フットワークの軽さ。雑談力。
短所:お節介。ポリティカルな性向。
 
番外編として、宴会屋の人を紹介しておきます。
チームにアナスタシア (Anastasia) という社員がいます。
彼女は、おいしいレストランや娯楽施設に精通しており、チームディナーやイベントの幹事役を自らすすんで引き受けます。
彼女の影のタイトルは、CEO (Chief Entertainment Officer)。
日本の会社でいうところの「宴会部長」でしょうか。
 
以上、グローバル企業の本社というところは、どこも似たようなタイプの人員で構成されているのでしょうね。
本社はたいていブルシットジョブのデパートのような場所ですから、そこで働く人々はブルシットジョブ検定(通称クソ検)3級以上の資格を有すると思われます。
物価の高いスイスにそんな社員を 1,000人以上抱え、それでも利益が出せる企業って・・・。いったいどこから搾取してるんだろう。
 
これを読んで、本社要らなくね? と思われたでしょうか。
そう思ったあなたは健全な感覚の持ち主です。
 
この記事を書いていて、あらためて気づいたことがありましてね。
誰にでも長所の一つや二つはある、ということ。
そして、短所がない人などいない、ということ。
 
企業は営利目的の機能集団である、と考えられていますよね。
それは間違っていませんが、同時にコミュニティでもある、と私は考えています。そのおもな特徴は、
✅1日の大半を過ごす居場所である。
✅メンバーが帰属意識をもっている。
✅困っている人がいたら皆で助ける。
 
古臭い価値観だと思われましたか?
たしかに、昭和時代の The 日本株式会社のかほりがしますね。
でも、考えてみてください。
今どきそんな会社ありますか?
 
今どきの会社といえば。
すべての社員がスキルを求められ、成果を評価され、稼げない者は切り捨てられる。いつから会社はそんな場所になってしまったのだろう。
今の時代こそ、会社はコミュニティに回帰してもいいのではないか。
 
この 9ヵ月の間、4年ぶりに味わう本社特有の空気にウンザリしていたことはたしかです。しかし、少しだけ見方を変え、会社を効率的な機能集団というよりは、互助的なコミュニティ=共同体として捉えると、この珍獣だらけのサファリパークのような場所が愛おしく思えてきたりもします。
 
私らしくないな、とも感じていますが。
まあ・・・
“本社病” が感染うつったな、と笑ってください。

この記事が参加している募集

社員紹介