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日本人が英語を理解できないのは、あなたの話し方が悪いからです

異文化研修もいよいよ 3日目(最終日)となりました。
今回は、日本人のコミュニケーションの特殊性について学びましょう。

日本人はなぜ意思決定に時間がかかるのか?

あなたは日本人の意思決定の遅さにイライラしたことがありませんか?
簡単な質問への返答にどうしてそんなに時間がかかるの?と疑問に感じたことがあるのではないでしょうか。
そこには、ちゃんとした理由があるのです。

日本人の典型的な意思決定フローを見てみましょう。
あなたは Sato-san という担当者にメールで質問を送ったとします。
Sato-san の上司は Suzuki-san(係長)で、その上司は Tanaka-san(課長)です。

あなたのメールを受取った Sato-san は何をすると思いますか?
a) すぐにあなたに返答する
b) まず彼の上司に相談する
c) あなたに逆に質問をする

答えは、c) あなたに逆に質問をする、です。
日本人は、限られた情報から答えを出すことを嫌います。完璧な回答を返すために、誰かに相談するにしても、情報が足りないと相談すらできません。
 
あなたは Sato-san の逆質問に返答しました。

次に、Sato-san は何をするでしょう?
a) 自分の回答をあなたに送る
b) 上司の Suzuki-san に話す
c) トップの拠点長に相談する

答えは、b) 上司の Suzuki-san に話す、です。
自分の一存では何も決められないからです。また、直属の上司を通り越して General Manager や部長等に直接相談するのもルール違反となります。

Sato-san から相談された Suzuki-san はどうするでしょう?
a) 上司のTanaka-san に相談する
b) Sato-san にさらに逆質問する
c) 自分で意思決定して答えを出す

答えは、b) Sato-san にさらに逆質問する、です。
 
そのあとも、同様の「行ったり来たり」が、関係者全員に行き渡るまで繰り返されます。

回答を得られるまで、あなたは Sato-san と 5往復ほどメールをやりとりすることになります。


このような日本人の意思決定スタイルは、悪いことばかりではありません。
意思決定までには長い時間がかかりますが、実行段階に入ると速いのです。なぜなら、それまでに集団のコンセンサスがとれているからです。

一方、個人主義的な社会はその逆です。
意思決定は速いけれど、実行は遅く、何度も決定が覆されたりします。

あなたが日本人の上司をもったときに身につけるべき習慣があります。
それは、上司に指示されなくても自らこまめにコミュニケーションをとることです。日本人はこの行動様式を ”horenso” と呼んでいます。
horenso とは、“hokoku” (report), “renraku” (contact), “sodan” (consult) を合わせた日本のビジネス用語です。
日本人の上司は、あなたに「報告せよ」とは言いません。
言われなくてもするのが horenso なのです。

horenso は、日本語で spinach のこと。それは healthy な習慣なんです。

世界一厳しい日本のお客様にどう対処するか?

あなたが日本とビジネスをする際に、最も悩ましいことの一つはお客様対応でしょう。

私たちは「お客様は “King”」と言ったりしますが、日本ではそのはるか上です。
驚いてはいけませんよ。日本では「お客様は “God”」なのです!

日本人の凄まじい「お客様は “God”」例を見てみましょう。

お店に入ると、あなたは丁重な挨拶とお辞儀で厳かな歓迎を受けます。


交通機関が 1分でも遅れると、あなたは気の毒なほどの謝罪の言葉を浴びます。


約束は何があっても守られなければなりません。
言い訳 (excuses) はいっさい許されません。
日本人が謝罪に使う言葉 “Moushiwake gozaimasen” は、
文字どおり ”there is no excuse” という意味なのです。


実際にあった顧客(日本企業)からのクレームを紹介します。
(クレームの文言は原文のまま)

「マカロンの大きさが一定じゃない!」
「マカロンのクリームの量が少ない!」
「マカロンの形がペッタンコすぎる!」


「ミネラルウォーターの水の高さが一定じゃない!」


「段ボール箱に凹みがある!」
(返品されてきたが、中の衣料品には全くダメージなし)


「ネジの数が仕様書と合ってない!」とクレームがあり、
メーカー側が「何本足りないですか?」と尋ねたところ、
「足りないのではない。3本多めに入ってるんだよ!」


クレーム対応の基本は、一にも二にも謝罪することです。
言い訳しない! 人のせいにしない! 説明はあと! まずは謝ってください!
 
絶対に言ってはいけない禁句:”That’s not my fault”

日本では、謝罪することは非を認めることを意味しません。
謝罪とは、スムースな関係を保つ潤滑油のようなものです。

「謝罪」の意味があなたの国とは全く異なることを理解しましょう。

日本人はなぜあなたの話を理解できないのか?

あなたが電話等で日本人に話しているときに、日本人は “Yes” や “hai” などと適当に相槌を打っていることがありませんか?
そういうとき、日本人はあなたの話をほとんど理解していません。
 
しかし、日本人が理解していないことにあなたは気づきません。なぜなら、日本人はあなたの話を遮らないからです。
理解できていないなら、話を遮って「わからない」と言うべきだ、とあなたは考えるでしょうね。
 
日本では会話の主役は話し手ではなく聞き手です。話の内容を理解する責任は聞き手にあり、理解できない場合は、話し手の説明がヘタだからでなく、聞き手の理解力が低いから、と日本人は考えます。
あなたの話を理解できないとき、日本人は聞き手である自分が悪いと考えるので、「わからない」と言って話を遮ることは恥ずかしくてできないのです。
 
はっきり言います。悪いのはあなたです。
あなたは最初に用件を言いましたか?
ゆっくり話してあげましたか?
自分勝手にダラダラ話していませんか?
そもそも、いきなり電話をかけてくる行動にも問題があります。電話で話す前に、メールで簡単に用件を伝えておくこともできたはずです。
 
日本人と話すときの9つの心得を教えましょう。

1. 考えを整理してから話すこと。(思いつくまま話さない)
2. 最初にトピックを言え。(どのプロジェクトの話か、等)
3. 一文は短く。原則、1センテンスに入れる情報は1つ。
4. yes/no 質問は避ける。(日本人は理解せずに yes と言いがち)
5. 質問は 1度に 1つ。(日本人がyesと答えたら、どれへのyesか不明)
6. 沈黙を恐れるな。(むしろ日本人には沈黙タイムが必要)
7. ゆっくり話すこと。難しい単語や慣用句は使うな。
8. 数字はとくにゆっくり、1個ずつ伝えること。
9. 日本人が正しく理解していなかったら、自分が悪いと思え。

9つめはとくに重要です。
正しく伝わっていない、と感じたら、「私の説明が悪くてごめんなさい」と言うようにしてください。

次に、非日本人が誤解しやすい日本人特有のコトバを6つ覚えましょう。

1. “Yes” (“hai”) は「了解しました」という意味ではありません。
「あなたの話を聴いています」程度の意味だと考えてください。
2. “I understand” も要注意。「言ってる意味はわかります」程度の意味。(納得はしていません)
3. “We will consider it” は、「結構です。全く興味ありません」という “明確な No” です。
4. “Let’s talk about it later” は、「二度と話す気はない」という意味です。
5. “It is a little bit difficult” は、「無理だよ、そんなの」という意味です。
6. 本社やお客様は毎回 “It is urgent” と言うもの。納期を言わせましょう。


最後に、日本人のボディーランゲージを3つ紹介します。

1. 歯と歯の間から息を吸う(男性がよくやる)
⇒ 同意できない。煮え切らない態度を示します。
2. 日本人が「わけもなく笑う」のは、気まずい空気をごまかすときです。
3. 日本人の「脈絡のない微笑み」は危険。ネガティブな感情を抑えようとしています。
相当苛立っているか、屈辱的な気分に耐えているときです。

この 3日間の異文化研修を通して、私がみなさんにお伝えしたいメッセージはもうおわかりだと思います。
異文化を怖がらないでください。異文化を楽しんでください。
あれほど難解だと思っていた日本人も、こうして解読decodeしてみると、理解し合える人たちだとわかったでしょう。
一見不可解な行動様式にも必ず理由があります。歴史もあります。さらに、様式美があるのです。
日本人は愛すべき人たちです。リスペクトすべき人たちです。
日本人と共に働こう! 日本人ともっと話そう!

ゴサンカ、アリガトウ、ゴザイマス。オツカレサマ、デシタ。
 
受講生一同、立ち上がる。
教室が割れんばかりの拍手に包まれた。
講師が教室を去り際、私を見てウィンクしました。 



異文化研修 1日目の記事はこちら☟


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