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Sunano Radioの詩。
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2015年8月の記事一覧

冷たい夜の海の底

言葉だけをたくさん
散り散り部屋にバラ撒いて
妙にすっきりした顔の
君が出ていきました

やさしさとは何だったのか
わたしは夜じゅう考えました

言葉には「匂い」があります
そのひと独特の特別な匂い
冷たい風に消滅してしまわぬように
わたしは窓を閉めました

君が居ないことは
それほど怖いことではありません
わたしが恐れるのは
それをわたしが忘れることです
身体を通り抜ける食べ物のよう

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太陽と詩人

詩人はその領域に
指一本も触れられない
森で巨大な熊に出会った武道家が
瞬時にすべてを判断し
座して運命を受け入れようとするのと
同じように
詩人はここを踏み超えることをしない
目の前に在る灼熱の太陽に
触れないのと同じように

もし太陽に触れたならば
詩人の手は無事では済まないし
恐らく存在が消滅してしまうだろう

太陽は常に熱い
詩人は温度や形がぐにゃぐにゃと
変化するからやたらに悩む

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