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『映画 すみっコぐらし』ハンカチと65分とやさしくも切ない世界

なんだあれ。ほとんど喋らないほのぼの絵本なんだよ、なんであんなに泣けるの。知ってます? 『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』っていうんですけど。

え、知らない? だめ、それはいけない。ちょっと観てくるべき。たった65分でもうなんか止まらん涙流れてくるから。アマプラで観られるから。


正直、子ども向け映画だと思って馬鹿にしていました。すみっコぐらしのキャラクターはかわいいし、みんなちょっと後ろ向きなところを抱えていて好きだけど、映画を観るほどでは…という感じ。絵本みたいな絵柄だし、まあ子ども向けでしょ、と。

いや~~~~~わたしが間違っていました。心が洗われたね。子ども向け映画恐るべし。


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ストーリーとしては、のんびり暮らしているすみっコたち(キャラクターの説明も丁寧にしてくれるので初見でも全然いける)が不思議な絵本に吸い込まれ、そこで出会ったひよこの家を探しながら物語の世界を冒険していく…といったようなもの。

キャラクターたちにセリフはなけれど、たまにテロップで喋ります。
絵本に入る前の喫茶店で「オムライス♪」と注文するねこにほっこりしたり、ひよこ初登場時には「ひよこ…」「ひよこ…」「ひよこ…」とざわざわしたり、これがまためちゃくちゃ和む。日頃のストレス消える。

音とテロップと、キャラクターたちの表情。それから、ナレーションのイノッチ(井ノ原快彦)・本上まなみさんの声によって物語は進んでいきます。
桃太郎、マッチ売りの少女、人魚姫、アラビアンナイト、赤ずきんちゃん…すみっコたちとひよこは、いろんな絵本の中を冒険します。

個人的には、赤ずきんちゃんのとんかつ・エビフライのしっぽコンビ、アラビアンナイトのぺんぎん?推し。やたらかわいい。事あるごとに爪とぎしちゃう恥ずかしがり屋のねこも好き。


ひとりぼっちで、家や仲間を探して旅をしていたひよこ。でも、いつの間にかたくさんのすみっコたちという仲間ができていました。

そして終盤。ひとりぼっちだったひよこの、”ひみつ”が明かされていきます。ここでナレーションは引き下がり、物語はクライマックスへ……なんですが、ここからハンカチ握りしめてないと最後まで観られなかった。


すみっコたちもひよこも、絵本の登場キャラたちもみんなやさしくて、そして純粋でした。普段は後ろ向きで主役にはなりたくなくて、隅っこが好きなすみっコたちですが、誰かのために一生懸命になる姿に心を打たれます。

その想いの純粋さは、セリフなんかなくても、むしろセリフがないからこそ、どストレートに伝わってきました。無垢な気持ちだからこそ刺さる。やさしい世界ってのはこういうことを言うんだよ。


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孤独や生きづらさをテーマに込めたキャラクター。
ご都合主義ではなく、ただかわいくて癒されてよかったよかった、で終わらせないストーリー。
ほのぼのした絵本のようなアニメだからと油断していると、本気でぼろぼろ泣きます。ハンカチ必須。

ただ、それが気持ちいい。
ひと通りずびずび泣いて、あ~なんかやさしい気持ちになれたな、と思える映画でした。いい絵本の読み聞かせをしてもらった子どもの気分。

この映画には悪が存在しません。全てがやさしさで出来ています。
「泣いてやろう」という気持ちで観ることもおすすめしません。やっぱりあくまで「すみっコぐらし」の映画であって、微笑ましく眺めるのが前提だから。

が、ちょっと純粋無垢でやさしい気持ちを味わいたい方になら全力でおすすめします。

ほんの65分。アマプラで観られますので、ぜひどうぞ。ハンカチは忘れないでね。

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